私は、日本共産党渋谷区議団を代表して、ただいま議題になりました「区庁舎耐震化の計画に区民参加を要望する請願」の採択に賛成の立場から討論を行います。
この請願の趣旨は、区民の共有財産であり防災上の拠点施設である区庁舎をどうするかは、区民の生活や区の将来にまでかかわる問題であるとして、早急に区民参加のもとで区民の意見をくみ上げ、民主的な進め方を求める立場に立って、区庁舎の耐震化計画を区民参加で決定することを求めるものです。
区庁舎の耐震化の必要性が明らかになって以降、区の耐震化の計画は、区民に一切知らせないまま進められてきたことは大問題です。まず、区民に耐震化にかかわる情報を区民の前に明らかにすべきです。
昨年、区が行った耐震診断の結果、区庁舎の耐震化の必要性が明らかになりました。11月20日の区議会全員協議会では、耐震診断の結果とともに耐震補強工事の5案が提示され、中間階免震工法が総合評価で他の案よりも優れると報告されました。さらに昨年末には「耐震補強に加えて総合庁舎建替えを選択肢とする」として総合庁舎及び公会堂の建替えについて事業者からの事業手法等に関する提案募集が行われ、2月末には5事業者から案が示されました。しかし、区民には、耐震診断の結果も、耐震補強工事の手法と評価についても、建て替え案の内容についても、いっさい明らかにされていません。
区長は、総合庁舎の耐震補強案と建替え案を比較してどちらを選択するかを決めると言い、区議会の意見も聞くとしてきました。しかし、実際には、耐震補強工事の具体化はいっさい行われず、この問題を審議するために設けられた区議会庁舎問題特別委員会にさえ、建替えの提案を行った5社の企業名も、提出された建て替えの配置図も、総事業費と庁舎の建設費も、定期借地するとした部分の面積もそこで行われる事業の概要なども明らかにしていません。
特別委員会では耐震補強と建替えを行った4自治体の視察を行い、現庁舎活用案と建替え案についての検討状況の報告を受けただけで、耐震補強と建替えを求める二つの決議案が示され、採決が強行されました。わが党は、耐震補強案も建替え案も、判断に必要な資料がなんら示されていない中では、採決すべきではないとして採決に反対し、採決には加わりませんでした。半数の委員が採決に反対したにもかかわらず、特別委員会は多数で建替え案を決議し、9月10日の本会議で決議があげられました。区長は区議会の建替え決議が行われたことを理由に建て替えを推進するとしていますが、区民参加が一切ないまま、建て替えが進められることは断じて認められません。区は庁舎の耐震化について、まず区民に庁舎の現状や耐震化の必要性、耐震化のすすめかたなどについて区民に明らかにすべきです。
次に耐震化の進めるにあたっては、区民の意見を聞き、計画に反映させるべきです。
区庁舎は区民の大切な共有財産であり、区民サービスや防災の拠点施設です。区庁舎をどのようにしていくのかは、区民の生活や区の将来にもかかわる重要問題であり、住民参加で検討しながら進めていくのが当然のあり方です。耐震化を進めるにあたって各自治体の取り組み方は、たとえば北区では2009年に改修案と建替え案を比較して示し、区民に意見を求めるパブリックコメントを実施しています。また、青梅市では市民意見を基本構想に反映するために新庁舎建設について市民の意見を聴く会を複数回開催することから建替え計画を始めています。町田市では、旧本庁舎の耐震補強工事を実施したのち、市民代表、学識経験者などで構成する「庁舎問題検討員会」で議論を進めるとともに5000人規模のアンケートを実施するなど、住民の意見を聞きながら、建替えの場所を含めて住民の意見を聞きながら進めてきました。耐震補強を行った江東区では、「庁舎の建て替えにつきましては、将来の展望を持って区議会をはじめ、区民との協働により進めていくべきもの」という考え方を示しています。当区でもただちに区庁舎の耐震化にかかわる資料を区民の前に明らかにするとともに、区民の意見を聞き、区民参加で耐震化の計画を練り上げるべきです。
以上、指摘したように、渋谷区の区庁舎耐震化の進め方は、これまで全く住民に知らされず、意見も聞かずにすすめられてきました。本来の区庁舎の耐震化の進め方は、耐震補強か建替えかの選択、事業手法や事業者の選択、設計や工事など、どの段階でも、区民参加を基本において進めていくのが、自治体として当然のあり方だと考えます。当区でも、区民参加の庁舎のあり方を検討する委員会などを立ち上げるなど、区民参加のもとで区民の意見をくみ上げ、民主的な方法で計画を進めるべきです。
区民に知らせること、区民の意見を聞くことこそ、区民の共有財産である庁舎耐震化を進める上で最も大切であることを重ねて強調し、請願に賛成する討論とします。