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日本共産党渋谷区議会議員団

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いがらし千代子議員がおこなった新年度予算に反対する討論

 私は、日本共産党渋谷区議団を代表して、2015年度渋谷区一般会計予算に反対する立場から討論をおこないます。

 昨年4月に実施された消費税8%増税と円安による物価高は、自営業者の売り上げを大きく減少させるとともに、受け取る年金を減らされた高齢者はもとより、サラリーマン世帯の実質賃金が、19ヵ月連続マイナスになったことに示されたように、区民全体の暮らしを一層困難にしています。

その結果、昨年一年間の区内中小企業の倒産件数は、144件にのぼるとともに、13年度決算では、小中学校に通う児童・生徒の就学援助受給者は、中学生が37・2%に上っています。 

しかし、安倍内閣は新年度から3年間で、大企業に対しては、1兆6000億円の減税を実施する一方で、国民に対しては、1年半後に、消費税を10%に引き上げることを明言するとともに、新年度予算では、医療・介護・年金・生活保護費などの社会保障費を1700億円も削減し、国民に大幅な負担増を押しつけようとしています。  

こうした中、渋谷区に求められているのは、区民の暮らしと、福祉、教育を守り、中小企業を応援する予算です。

桑原区長の予算案のうち、緊急対策としての待機児解消のための区立保育室などの増設による490人の定数拡大の実現や、我が党がこの間予算修正案で提案してきた65才以上の区民に対するインフルインザ予防ワクチン接種費用の無料化予算については評価します。また、「憲法に定める個人の尊重及び法の下の平等の理念に基づき、性別、人種、年齢や障害の有無などにより差別されることなく、誰もが能力を活かしていきいきと生きることができる差別のない社会を実現することは、区民共通の願いである。」として、「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」を制定し、男女平等はもとより、性的少数者に対する、差別をなくす取り組みを進めることは、世界の性的少数者に対する人権尊重の流れに沿う大きな一歩を踏み出すものと評価するものです。ただし、真に差別の無い社会を築く為には、上からの強制ではなく、様々な機会を捉えて区民、事業者、関係者の理解と協力を経る過程を丁寧に行うことで実現することを強く求めるものです。

しかし、区長提案の予算案全体としては、区民のくらし・福祉・教育を切り捨て大企業奉仕の逆立ちした予算であり、認めることはできません。

 

反対理由の第一は、区民に負担増を求めるとともに、区民の福祉削減の予算になっていることです。

新年度から区民の負担増となる国民健康保険料は、給与収入の3人世帯の場合、26万8137円で1ヶ月の給料分がまるまるなくなる金額で、区長が保険料を据え置いた2004年に比べ、15万7905円もの値上げとなっています。さらに介護保険料も基準額が年間6万7560円に値上げされ、受け取る年金が減らされる中、ほぼ1ヶ月分の国民年金が介護保険料で消えてしまい、区民からは、これ以上何を削れと言うのか、と言う怒りの声が寄せられています。

区民に負担を求める一方で、区長は、2012年5月まで行っていた食事を用意することが困難な高齢者に対して食事を提供し、合わせて安否を確認するなど重要な高齢者福祉施策として実施していた配食サービスを廃止し、補助金も大幅に削減した食事券事業に統合してしまいました。配色サービスを実施していた2011年度は、予算額8543万円、年間約20万食を提供していたのに、新年度の食事券事業予算は、6343万円で13万1千食しか見込んでいません。また、食事券事業で、店舗を利用している割合はわずか5%程度で、ほとんどの利用者は外出が困難な配食サービス利用者です。介護が必要な高齢者の実態に合った配食サービスを復活し、補助額も増額すべきです。

 4月から介護報酬が大幅に削減され、特別養護老人ホームは基本報酬6%が削減されます。特養ホームけやきの苑西原は、介護報酬で1455万円の削減に加え指定管理で運営しているため2012年度には、3547万円あった指定管理料が、2016年度はゼロになってしまいます。今でさえ介護職員の人手不足が大問題になっている中、正規職員の雇用ができなくなれば、1人1人の入所者に対応する手厚い介護サービスは不可能となります。指定管理料の削減をやめるとともに直営に戻すべきです。また国に対して介護報酬の削減中止を求めるべきです。

 新年度から、旧本町東小学校跡地に百床の特養ホームとグループホーム、ショートスティなど複合施設の建設が進められますが、特養ホームの待機者は、683人に上っており、ケアコミュニティ原宿の丘への地域密着型特養ホーム増設計画を復活するとともに、待機者ゼロをめざし特養ホームの増設計画を立てるべきです。

又、旧本町東小学校跡地の複合施設については、運営を指定管理にして指定管理料をゼロとしていますが、直営で運営すべきです。

 障害者福祉について、渋谷区の移動支援事業は、余暇活動参加や突発的な通院などに限られており、通所や通学には利用できません。介護する親の高齢化や共働き家庭など移動支援事業の改善を求める要求は切実です。新宿区や練馬区の移動支援は、通所・通学などにも利用でき障害者の社会参加を保障し、家族の負担を軽減しています。区として移動支援事業を通学・通所にも利用できるよう直ちに改善すべきです。

 また、2014年8月から特定疾病患者福祉手当を心身障害者福祉手当に統廃合するとともに、年齢制限・所得制限の導入で1100人を対象外としました。難病で苦しむ人たちの命綱となっていた特定疾病患者福祉手当を復活すべきです。さらに心身障害者福祉手当の対象外になっている精神障害者にも福祉手当を支給すべきです。

 区民の死因の第一位はがんであり、早期発見・早期治療が求められています。がん検診の啓発活動を行うとともに、受診率を上げる為に区内の医療機関でも大腸ガン、胃ガンなどの検診をできるよう改善すること。また、二次検診の無料化を復活させ、前立腺がんも区民検診に加えるべきです。

 

反対する第二の理由は、未来を担う1人1人の子どもたちに行き届いた保育、教育予算がつけられていないからです。

今年4月の認可保育園入所希望者は1464人で昨年比186人も増えています。そのうちゼロ歳児の入所希望者が515人に対し、入所可能数は317人で198人も認可保育園に入所できませんでした。全体では一次募集締切り時点で632人が入所できない深刻な事態で23区で五番目に待機児の多い区となっています。区が実施したニーズ調査でも56%の保護者が認可保育園を希望しているように、保護者の願いは認可保育園です。しかし、この間渋谷区は、認可保育園増設の保護者の願いに背を向けて、桜丘、西原、神宮前、上原の4つの区立認可保育園を廃園にして、200人以上の定数を削減したことは許されません。さらに、区立本町第2保育園を廃園にしようとしていることは認められません。 保育の必要なすべての子どもに良好な保育を保障するために、国・都有地の活用とともに都の制度も活用して民有地の借上げを行うなど、認可保育園の増設で待機児ゼロをめざすべきです。

 子ども医療費助成は、子育て支援の重要施策の一つとして、年間約6千万円で実現できる高校生までの無料化を実施すべきです。

 いじめや不登校など、子どもの困難が広がっているなか、教育予算の増額が求められています。教師の多忙化が問題になっている中で、ひとり一人の子どもたちの学習と生活を一体として寄り添える少人数学級は、重要であり早急に求められています。ただちに35人学級に踏み出すべきです。

 英語教育重点校の松濤中学校に1900万円余の予算が本町学園は1425万円つけられ、これは中学校1校当たりの17倍と13倍の突出した予算です。すべての学校の教育を公平に充実させる予算にすべきです。 子どもの貧困や給食費が払えない家庭が社会問題となる中で、学校給食費は、小学校高学年で一人年間5万880円、中学校で5万9892円と家計に重くのしかかっています。本来、公教育は無償が原則です。子どもの健康を保持し、食育を支える学校給食費は、無料にすべきです。

 

反対理由の第三は、予防重視の防災対策が不十分な予算だからです。

 避難所の食糧備蓄は3日分を確保したとしていますが、避難所には依然として帰宅困難者に対する備蓄は一切用意していません。災害発生時には様々な混乱が予測されるだけに、帰宅困難者の備蓄もすすめるべきです。

また、建築物の耐震促進補助事業費は11億9539万1千円計上されていますが、そのうち、甲州街道などの特定緊急輸送道路沿道建築物に対する助成が10億3499万1千円で、木造住宅耐震改修助成費は、わずか4010万円にすぎません。

 旧耐震の木造住宅を燃えない、倒れない安全な住まいに改修することは区民の命を守ることです。遅れている木造住宅の耐震化を促進するために予算を大幅に増額して補助額を

引き上げるとともに、補助対象も拡大するなど抜本的に改めるべきです。

 さらに耐震補強工事が未実施の千駄ヶ谷区民館、千駄ヶ谷出張所、本町区民館などの耐震補強工事を計画的に進めるべきです。

 

反対理由の第4は不要不急の事業に多額の税金を投入していることと大企業への便宜供与を行っている問題です。

 河津区民保養施設は、取得経過も不透明なまま、老朽化した競売物件の旅館を1億1千万円で取得し、昨年秋に改修費と運営費合わせて1億3千万円の税金投入して開設しました。しかし、開設して1ヶ月後に、耐震診断の結果、築50年の東館と大浴場が地震で崩壊する危険が高いと診断され、使用できなくなったにもかかわらず、区長は建替え費用として2億6千万円の補正予算を計上し、14年度だけで5億円を超える税金投入を行い、5月からは大浴場等の建設工事に着工しようとしています。さらに新年度予算には、運営費として1億5092万1千円が計上されています。利用した区民からは「遠くて不便、時間がかかりすぎる」などの声がだされ、新たに大浴場を建替えることについても税金のムダ使いだという批判が出されています。耐震強度不足で危険な施設を閉鎖せず、区民の安全を軽視して運営していることは許されず、ただちに廃止すべきです。

 幡ヶ谷2丁目複合施設(仮称)整備事業費で実施設計費と工事請負費で4億1033万円が計上され、高齢者向け住宅、保育園を設置するとしています。しかし、この用地は土壌汚染が明らかとなり建物の解体工事と土壌対策工事が行われることが住民に知らされ、住民からは不安の声が上がっています。しかし桑原区長は議会に説明も報告もせず土地の売買契約を二月に行い、三月に渋谷区の土地として登記されていることが明らかになりました。そもそも解体工事も土壌汚染の対策も終わっていない土地をなぜ急いで買わなければならないのか区民にも議会にもまったく説明もせず、取得を強行したことは許されません。また、この土地に保育園、住宅を建設するとしていますが、ふさわしくありません。代替地として幡ヶ谷社会教育館に隣接する都有地を取得し整備すべきです。

 

 反対理由の第五は庁舎の建て替えをはじめとして大企業に多額の税金を投入する大企業優先の予算だからです。

 住民の声を無視して区民の財産である区庁舎の土地を70年間も三井不動産に差し出し、120メートルの超高層マンションを建てさせ、その見返りに区役所庁舎と公会堂を建替えさせる計画について、新年度予算では、新総合庁舎等整備事業に2940万1千円、仮庁舎整備事業に15億7679万円、仮設第2庁舎の借地料として2億3369万3千円の18億3988万円が計上されています。

 桑原区長は初めて開いた住民説明会でも多くの区民から出された質問に答えず、反対意見は見解の相違といって切り捨てました。特に三井不動産の建てるマンションについては、事業者のやることで、区は関与しないと、説明をまったくしていません。しかし、区の土地、区役所の前に立てるマンションの高さや規模がどういうものか区民に説明する義務があります。区民の意見を聞くと言いながら正確な高さも、戸数も、建設費用も何も知らせず秘密にすることは許せません。また、昨年議決した三井不動産との基本協定の変更と定期借地権の設定を154億円から211億円に変更する提案がされていますが、三井不動産が多くの利益を上げることができるように、変更することが提案されていますが、区民の貴重な財産である区庁舎の敷地を70年間にわたって三井不動産に差し出しもうけさせる遣り方は、やめるべきです。庁舎の建替えは白紙に戻し、区民参加で練り上げるべきです。

 また、今議会には、区民と来街者の憩いの場である宮下公園を三井不動産に30年間の借地権で差し出し、2階の公園部分の1万㎡に商業施設と17階のホテルを建てさせる計画が突然提案され、都市計画変更業務委託費として583万2千円の予算が計上されています。しかし都市計画法では公園内の建物について「地上2階以下」と定めていること、借地権の設定額についても鑑定士の鑑定もなく、三井不動産のいうがままの額であり認められません。

 この計画は、地元住民をはじめ、区議会にもいっさい説明がなく、いきなり提示されたもので、区議会には地元の商店会長連名の陳情と計画に反対の意思表明の要望が出されており、区民の憩いの場であり、区民の貴重な土地を三井不動産のもうけに提供することは絶対に認められません。

 さらに新年度予算には、渋谷駅周辺整備事業として、渋谷駅街区北側自由通路整備費や駅中心地区まちづくり調整委託費などの1億9821万1千円に加え、東急不動産が主体の渋谷駅桜丘口地区の再開発に5億7600万円の予算が計上されました。

 渋谷駅南口北側自由通路実施設計は3786万2千円の繰越明許費で進められていますが、この南口自由通路は、東急電鉄の線路跡地にできるホテルを主体とした高層ビルと桜丘口にできる高層ビルを結ぶ通路で本来、再開発事業者がおこなうべき事業です。東急グループ中心の渋谷駅前周辺地区の再開発に莫大な税金投入は認めることはできません。

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