渋谷区予算編成にあたって、日本共産党渋谷区議団は、10月28日、長谷部区長に対して予算要望書を提出しました。
要望書は、「くらし・区政のアンケート」や様々な団体との懇談の中でお寄せいただいた願いをもとにまとめたもので、1051項目にわたります。(「重点要求」30項目、各部局への要求778項目、地域要求243項目)
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2017 予算要望書(重点要求)【PDF277KB】
安倍政権は、憲法改定を主張するとともに安保法制・戦争法を発動し、南スーダンに新たに派遣する自衛隊の武器使用任務を拡大することで、戦後初めて、自衛隊員が海外で「殺し殺される」危険が迫っています。また、医療・介護・年金など社会保障制度の大改悪、公約違反のTPPの国会審議、原発再稼働、沖縄の米軍基地建設などの悪政をいっそう強行しようとしています。
加えて、アベノミクスによって、実質賃金が下がっているうえに、8%の消費税増税以来、国民のくらしはいっそう困難になり、格差と貧困はますます拡大する事態となっています。
こうした悪政のもとで、渋谷区では、昨年1年間の中小企業の倒産が157件、その失業者は771人、生活保護は2,909世帯、3,280人となり、国民健康保険料の滞納世帯も33.62%と増え続けています。
また、10月1日現在の認可保育園の待機児は451人と深刻な事態であり、特別養護老人ホームの10月現在の待機者は、586人になり、「何年待っても入れない」状況が続いています。
日本共産党渋谷区議団が毎年とりくんでいる、くらしと区政についてのアンケートには、今年は「収入が少ないため、高額な医療費や固定資産税などの負担で、貯金の切り崩しの生活がいつまでも続くのか。老後は医療費が多くなるので不安だ」、「子どもを預けるところがないので働き続けられない」など、胸の痛くなる訴えが相次いで寄せられています。
区民生活が困難な時だからこそ、区民の声に耳を傾け、くらしを応援し、福祉を優先する自治体本来の役割の発揮が求められています。ところが長谷部区政は、区民不在で、福祉切り捨てと大企業応援の区政を進めています。
国保料は12年連続の値上げが押し付けられ、生活保護世帯のくらしを支えていた冬の見舞金を廃止し、障がい者の通院や外出に欠かせない福祉タクシー券を削減、介護の必要な要支援者に実施している緩和サービスでは、生活を援助する訪問ヘルパーを無資格者でもできるようにし、介護報酬を大幅に削減しました。
その一方で、区庁舎建て替え計画では三井不動産に区役所の土地を貸し出し、超高層マンションを建てさせる見返りに区役所と公会堂を建てさせ、同じく三井不動産に宮下公園用地を貸し出し、公園整備と引き換えに巨大商業施設やホテルを建設し大儲けをさせようとしています。また東急など大企業のための渋谷駅周辺再開発事業では、駅周辺に超高層ビルを林立させる巨大再開発事業に90億円もの区民の血税を投入しようとしています。都が土壌汚染のある豊洲東京ガス公場跡地に築地市場を移転する計画に都民の批判や不安が広がっている中で、幡ヶ谷2丁目防災公園整備計画では、地下水モニタリング結果から再汚染が懸念されているにもかかわらず、モニタリングの最中なのに保育園や高齢者住宅の建設を進めることは認められません。
日本共産党区議団は、大企業奉仕の事業や不要不急の事業を見直し、税金の使い方を、区民が主人公でくらし福祉最優先の区政に転換することを求めます。そのため、貯め込んだ736億円の基金は、区民生活を守るために使うべきです。
国民健康保険料を引き下げ、削減した福祉タクシー券を元に戻すこと、75歳以上の住民税非課税世帯と高校生までの医療費の無料化、小中学校の給食費無償化などを実施することを強く求めます。また、区立認可保育園の増設を中心に保育所整備を進め待機児をゼロにすること、特別養護老人ホームの増設を直ちにすすめるなど、区民生活応援を最優先にした予算編成にするよう強く求めて、2017年度予算に対する要望書を提出します。
1.保育園の待機児対策は、区立保育園の計画的整備を軸にして、認可園の増設を中心に進めること。私立保育園の保育を区立認可園並みに改善し、認可外保育室などの職員の処遇を改善するために助成を拡大すること。
10月1日現在、認可保育園を待機している子どもは451人と一層深刻になっている。日経DUALの調査では9割が認可保育園を第一希望にしている。大多数の保護者は、保育士が10割配置され、十分な広さを確保し、所得に応じた保育料の仕組みを持つ認可保育園を求めている。区が、認可保育園を中心にして、公的責任で保育の質を守りながら待機児対策を進めることが求められている。
区が、この間、区立保育園を次々廃園にし、保育園の増設を民間任せにしてきたために、保育の質や保育士の処遇の公私格差を広げ、近隣トラブルの原因の一つにもなっている。このやり方は、保育の量とともに質を確保し、子どもの豊かな発達を保障したいと願う保護者や保育関係者の願いにも、地域の環境を守りながら保育所の整備を求める住民の願いにも背くものである。
民間まかせの保育施設整備の姿勢を改めて、区が責任を持ち、区立保育園の計画的整備を軸に、認可保育園を中心に解消すべきである。その際、代々木2、3丁目の国家公務員宿舎跡地や幡ヶ谷2丁目の都営住宅跡地はじめとした国、都有地や民間の土地を活用して認可園を増設すること。
また、保育の質の向上のため、私立保育園の職員の配置基準や待遇を区立認可園並みに引き上げるよう助成を拡大し、改善すること。認可外保育室などについては、配置する保育士は全員有資格者とし、処遇改善を行えるよう助成を拡大すること。
保育料については、低所得者の無料制度を維持すること。
2.だれもが必要な介護サービスが受けられるよう、区として介護サービスを維持・拡充すること。特別養護老人ホームの増設で待機者を解消すること。「地域包括ケア」の構築にあたっては、医療と介護の連携や質の確保された切れ目のない介護サービスが提供できるよう区が責任を持つこと。
4月からの総合事業の実施にともない、要支援者の生活援助の訪問介護と通所介護に、緩和サービスが導入され、事業所に支払われる報酬は約7割に削減された。介護事業所は、これまで通り資格のあるヘルパーで対応せざるを得ないため事業の継続が困難になったり、新規の要支援者を受け入れられない事態となっている。要支援者の生活援助は重度化を防ぎ、介護費用の増大を抑制する効果もある。緩和サービスは抜本的に見直し、要支援者の訪問介護、通所介護については介護専門職による介護サービスが継続できるよう介護報酬も元に戻し、区が責任を持つこと。軽度者へのサービス提供は、介護認定を原則とし、チェックリストは希望者に限ること。
地域包括ケアの構築にあたっては、小規模多機能や特養などの施設の確保、医療と介護の連携や質の確保された切れ目のない介護サービスが提供できるよう、区が責任を持つこと。また、そのための財源を国に求めること。地域包括ケアの中核となる地域包括支援センターは、見守りや医療・介護を必要とする高齢者全体に目が届くきめ細やかなサービスを提供するために、地域の医療・福祉関係者、介護事業者、NPO、ボランティア団体などのコーディネートが求められる。11の地域包括支援センターのすべてを地域包括ケアの拠点にふさわしく体制と機能を強化すること。
必要なすべての人が入所できるよう特別養護老人ホーム、グループホームを増設すること。また、低所得者のための多床室を確保すること。国や都に対して、活用可能な国有地・都有地の情報提供と無償提供や貸付料の大幅軽減を求めること。特養老人ホームの入所対象から要介護1、2の人が排除されないよう、ケアマネや窓口に周知徹底するとともに、申請書に「特別理由」の記入を求めないこと。
区独自の保険料・利用料の負担軽減策について、預貯金や資産要件を撤廃し、非課税世帯にまで拡大すること。利用料の2割負担や補足給付の切り捨てで利用料が2割になった人や補足給付が切り捨てられた人に対する負担軽減措置をとること。
3.安心して住み続けられるよう切り捨てた区独自の高齢者福祉施策を復活・充実させること。
区は、住民の声に応えて全国的にも先進的な高齢者福祉を実現してきたことで、高齢者の自立した生活を支え、重度化を防いできた。ところが、昨年度から、高齢者福祉を次々と削減している。この間、金婚祝い品を廃止し、高齢者マッサージサービスは400円値上げして1回1200円に、寝具の乾燥は要介護認定を受けた人に制限し有料にした。区型介護サービスでは、時間延長サービス、回数追加、生活援助、高齢者世帯援助、外出介助で1時間以上について60円から300円の値上げ、訪問入浴介護サービスは、要支援者を対象から外し、緊急派遣型ホームヘルプサービスや勤労者世帯支援外出介助ホームヘルプサービスは廃止した。こうした福祉切り捨ては、いつまでも元気で暮らしたいとの区民の願いに逆行するだけでなく、医療・介護の重度化と介護保険や医療保険財政の悪化も招くことになる。
区民が安心して住み続けられるよう、切り捨てた高齢者福祉を復活し、充実すること。
4.高すぎる国民健康保険料を引き下げ、低所得者の保険料の軽減を図ること。保険証のとりあげをやめ、負担増と給付抑制につながる都道府県化(広域化)は中止するよう国に求めること。
今年度の国保料は12年連続で値上げされ、4人家族で年収4百万円の世帯では1万6485円の大幅な値上げである。年間保険料は39万1704円と1カ月分以上の給料に相当するほど高額になっているため、滞納世帯は33.6%に及んでいる。国と都に対し、負担金の増額を求めること。区として保険料を引き下げ、低所得者の保険料の軽減を拡大するとともに、生活保護基準の1.15倍の低所得者が申請すれば国保料の減免を受けられることを、加入者にわかりやすく周知すること。また、資格証明書が48世帯、短期証が666世帯に発行されているが、受診抑制につながるのでやめること。
国がすすめている都道府県単位化(広域化)は、給付抑制を都道府県ごとに競わせ、区市町村の繰入金をなくし保険料を一層引き上げることになるので中止を求めること。
5.区民が安心して医療にかかれるよう、区として75歳以上の住民税非課税世帯の医療費を無料にし、子ども医療費の無料化を高校生まで拡大すること。70歳から74歳の窓口負担を1割に戻すとともに、後期高齢者医療制度を廃止するよう国に求めること。
高齢者のくらしは、物価高や年金削減と税や保険料の負担増などでますます深刻になっており、受診抑制も広がっている。区として当面、75歳以上の住民税非課税世帯の医療費を無料にすること。また、国に対して、70歳から74歳の窓口負担を2割から1割に戻すとともに、75歳以上の高齢者を差別する後期高齢者医療制度を廃止し、高齢者の医療費を無料にするよう求めること。
安心して子どもを育てられるよう、子ども医療費の無料化を高校生まで拡大すること。
6.子どもの貧困が深刻になる中、教育予算を増額し、学校給食の無償化を実施すること。早急に小中学校の全学年の35人学級を実現するとともに、30人学級に踏み出すこと。学校間に競争と格差を持ち込む学校選択制はやめること。
家庭の経済力に関係なく、すべての子どもに豊かな育ちと教育の機会を保障することが求められている。この間、小中学校運営費が削減されてきたため、子どもたちが楽しみにしていた行事の廃止や、学校で支給していた習字用の半紙を持参させるなど、保護者負担の増大と教育環境の悪化を招いている。一人ひとりの子どもたちを大切にする教育を実現するために、学校予算を抜本的に増額すること。義務教育は、学校給食は子どもに食育にとつて重要な役割を果たしており、無償の原則に立ち、直ちに公会計にして、無償にすること。渋谷区の奨学資金貸付制度に低所得者向け給付制を導入すること。一人ひとりの子どもに目が届き、育ちに寄り添えるよう小中学校全学年の35人学級を、直ちに実施し、30人学級に踏み出すこと。また、教師の多忙を解消するためにも、教員、栄養士などの増員を国と都に求めるとともに、区としても独自に配置すること。
子どもを貧困から救うために、小中学生と18歳以下の子どもを持つすべての家庭に実態調査を行うこと。専門家を交えた全庁的な対策会議と専門部署を設置すること。ボランティアで行っている「子ども食堂」などの活動に、場所の提供や食事代の支援を行うこと。
学校選択制は、地域の子育てのネットワークづくりを困難にし、地域のコミュニティや防災の拠点としての学校の果たす役割を弱めるもので、やめること。
7.就学援助の受給世帯の所得基準を生活保護の1.5倍まで拡大すること。
中学校の保護者負担は、制服代などで年間12万円から20万円もかかるといわれている。低賃金と消費税増税や物価高などで、子育て世帯の生活実態はますます悪化しており、教育費が大きな家計負担になっている。渋谷区の就学援助の受給者は、中学生では37.4%にも達しており、格差と貧困は深刻である。
就学援助は、区独自で生活保護基準の1.5倍まで基準額を引き上げること。また、他の自治体では給付されているPTA活動費についても給付すること。入学準備学用品費は、入学前に支給すること。
8.障がいのある人が人間らしく生活するために必要なサービスは原則無償にするよう国に求めること。障がいのある人が地域で安心してくらし続けられるよう障がい者施策を拡充し、グループホーム・ケアホームを増設すること。削減した難病患者福祉手当を復活し、福祉タクシー券助成制度は元に戻すこと。
障害者権利条約の基本理念に基づいて、障がいのある人にとって必要なサービスは原則無償とするよう国に求めること。障がい者のグループホームや重度重複肢体障がい者の入所できる施設を増設すること。移動支援については、直ちに必要なすべての人が利用できるよう通学・通所へと拡大すること。駅での転落事故防止のために、ホームドアの設置と合わせて駅員を増員するよう、国、都、鉄道事業者に求めること。
障害者福祉手当は障がい者や難病患者にとっては命綱とも言うべき手当である。廃止した難病患者福祉手当は直ちに復活するとともに、所得制限や年齢制限を撤廃し、精神障がい者に対しても福祉手当を支給すること。福祉タクシー券助成制度は元に戻すこと。
9.国に対し、生活保護基準の引き下げと生活保護法の改悪をやめるよう求めること。また、区の冬の見舞金と特別対策給付金を復活すること。
生活保護は、憲法25条の国民の生存権を保障する制度で、国民に最低限の生活を保障するものである。にもかかわらず、国は3年間で生活保護の扶助費を平均6、5%引き下げるとともに、住宅扶助費についても削減した。こうした改悪は、国民の生存権を侵害し、貧困を拡大するもので認められない。国に対して撤回を求めること。また、家賃が高く生活保護の住宅扶助基準が低いため区内に住み続けることが困難である。区として住宅扶助の特例基準を適用すること。
また、生活保護基準は住民税や年金の非課税、就学援助支給世帯の基準額になっており、生活保護を引き下げることは、これらの制度を利用している世帯にも重大な影響を与えることから、国に中止を求めること。
猛暑による熱中症の犠牲者が発生している。生活保護世帯では電気代が心配で、クーラーを使わないで過ごしている。国と東京都にクーラー設置費用の助成を求めるとともに、区独自に支給していた特別対策給付金と冬の見舞金を復活すること。
10.放課後の子どもの生活の場を保障するために学童保育を実施すること。
子ども子育て支援新制度では、放課後保育を必要とする子どもに対して、「放課後子ども教室事業」(全児童対策)と区別して、子どもの生活の場を保障するための学童保育を求めている。しかし、渋谷区では、学童保育事業は行われておらず、これに代わる事業として放課後クラブが設置されている。放課後クラブ室と区別した専用室や静養室の確保や専用室の基準面積の確保、専任の指導員を区として配置するなど、放課後に保育を必要とする児童に対して、学童保育を実施すること。
11.「住宅は福祉」との位置づけで区営住宅や高齢者住宅を増設すること。また、家賃補助制度の拡充を図ること。
「住宅は福祉」であり、地域で高齢者が安心して住み続けるため、区営住宅や高齢者住宅を計画的に増設すること。そのために、幡ヶ谷社教館隣地の都営住宅跡地や代々木地域の公務員住宅跡地などの公有地を取得し活用すること。
若者向けの家賃補助については、単身者、居住継続型を復活すること。また、福祉型家賃補助の限度額を3万円に戻し、更新料補助を復活すること。都営住宅から移管された住宅については、東京都の家賃減免を引き継ぐ軽減策を実施すること。
12.障がい者などの福祉避難所を地域ごとに整備すること。災害時要援護者対策をさらに進め、民間施設の備蓄品の配備、情報伝達手段の確保などの支援を強化すること。
災害弱者の災害時の支援については、渋谷区地域防災計画に位置付け、障がい当事者の声を十分反映させること。地域ごとに必要な福祉避難所を整備するとともに、耐震補強の必要な民間福祉施設に対して、区の責任で早急に耐震補強工事を行い、備蓄品の配備や情報伝達手段を確保すること。
13.地域防災計画は首都直下型地震に対して、被害を最小限に食い止めるため予防を重視した計画に改めること。また、帰宅困難者対策については、国や都、事業者と連携するとともに、区独自にも強化すること。水害対策の充実をはかること。
渋谷区地域防災計画については、首都直下型地震などの災害から区民の命を守るために、区の役割を明確にした予防第一の計画にすること。また、木造住宅の耐震補強工事を早急に進めるため耐震補強工事費助成額を引き上げるとともに、避難者予測に見合った避難所を増設すること。東日本大震災の教訓である福祉のまちづくりを計画的、系統的にすすめること。帰宅困難者対策については、事業者任せにするのではなく、国や都と連携して食料備蓄を増やすなどの対策を強化すること。また、区民の避難所にも来街者用食料品を備蓄するとともに中小業者に対する備蓄助成を実施すること。避難所には、災害弱者に対応できる場所と備蓄品を確保すること。
集中豪雨による被害があいついで発生している。水害から区民の命と財産を守るために緊急対応窓口は一本化すること。被害状況をふまえて洪水ハザードマップを改訂し、区民に周知すること。貯留槽、排水ポンプなどを増設し、水防対策を抜本的に強化すること。
14.小規模企業振興基本法に基づいて、地域経済を支える商店街、中小企業への支援を抜本的に強めるため、中小企業振興基本条例を制定すること。商店街の街路灯電気代は全額補助するとともに、住宅簡易改修支援制度(住宅リフォーム助成制度)の拡充を図ること。公契約条例は、直ちに労働報酬審議会を開催するとともに、中小業者とそこで働く者のくらしを守るために改善すること。
一昨年制定された小規模企業振興基本法は、小規模事業者は、地域の経済やコミュニティを支える重要な存在と位置づけている。区内の中小企業と商店街の経営はいっそう困難になっていることから、区として商店街、中小企業への支援を抜本的に強めるため、中小企業振興基本条例を制定すること。また、商店街の街路灯電気代を全額補助すること。
公契約条例は、制定後も公契約工事で労働報酬下限額を下回る事例がある。しかし、年2回開催することになっている労働報酬審議会が、昨年は1回しか開かれていない。条例の目的を実現するために、労働者の賃金を掌握し、公共事業の質を良好に保つためにも、直ちに労働報酬審議会を開くべきである。労働報酬下限額を下回る賃金で働かせることのないように、支払った賃金の報告を求めるとともに、現場労働者の賃金調査に立ち会うなど、区としても実態を把握すること。また、対象となる工事契約額を5000万円まで拡大すること。
住宅簡易改修支援制度(住宅リフォーム助成制度)を2項道路沿道の住宅や商店、中小業者も対象とするよう要件を緩和するとともに、区内のすべての小規模施工業者に対象を広げること。中小業者の設備投資への助成制度を実現すること。また、助成上限額を引き上げ、低所得者への補助率を引き上げること。限度額内であれば、何度でも助成が受けられるようにすること。
15.渋谷区基本構想は、自治体本来の役割である住民福祉の向上と区の責任を明確にすることが求められる。長期基本計画などは、十分に区民の声を反映させること。
区は、「区がどんな20年後を目指したいかをあらためて語りなおす」として、渋谷区基本構想を策定しようとしている。党区議団は、区の基本的なあり方を規定する基本構想は、憲法と地方自治法に則り、住民福祉としての自治体の役割と責任を明確にすべきものであり、地方自治の本旨に従い、住民の声をしっかり反映したものにすべきと考える。
しかし、区民の声を反映させる十分な機会は確保されないまま区議会で評決した。20年前に策定された基本構想に明記されていた住民自治の機関としての役割は消え、区民福祉の向上についての区の責任も明確にされていない。
長期基本計画と実施計画の策定に当たっては、主人公である区民などの意見を十分に聞き、反映すること。
16.男女平等、多様性を尊重する社会の実現のために、すべての差別をなくす立場で、区民に理解を広げることを基本に進めること。
「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」は、憲法の個人の尊厳及び法の下の平等の理念に基づき、性別、人種、年齢、障害の有無などにより差別されることのない社会を実現することが目的となっている。条例の理念を実現するために、区民、事業者への理解を広げる努力を強めるとともに、区民や事業者の参加を広く確保して推進すること。また、区の施策は、男女平等と多様性を尊重する社会をつくるために、あらゆる差別をなくすという意識を区民に広げ、様々な偏見や誤解を取り除くための情報発信や区民との意見交換の場を確保すること。
17.渋谷区役所・公会堂の建替え計画については、三井不動産に区役所の土地を70年間貸し付け、見返りに区役所と公会堂を建てさせるやり方は白紙に戻し、住民、専門家、関係者が参加する検討会を設置して抜本的に見直すこと。
三井不動産レジデンシャルなどは、庁舎の土地の一部で、容積率の緩和制限を最大限活用して、高さ136メートル、39階507戸もの分譲マンションを建設し、大きな利益を上げようとしている。新庁舎・公会堂と分譲マンションは一体計画であるにもかかわらず、区民には、区が計画全体についても、アスベストや土壌汚染対策の詳細や費用負担など明らかにせず、どのような庁舎が必要なのかについても区民や職員の意見さえ聞いていない。庁舎建設という区民の共有財産であり区民サービスの拠点の整備を、民間事業者丸投げで行うことは、区民福祉に責任を負う自治体のとるべき手法ではない。現在の区役所・公会堂の建替え計画は白紙に戻し、住民、専門家、職員などの関係者も参加する検討会を設置して検討し直すこと。
18.大企業のための渋谷駅周辺再開発への税金投入はやめること。
渋谷駅周辺地域は、財界戦略に沿って国の再開発特別地区やアジアヘッドクォーター特区に指定され、外国企業を誘致するための税制優遇や容積率の規制緩和が行われる中で、東急グループが超高層ホテルを建設するなどの大企業奉仕の再開発が進められ、住民や小規模業者が立ち退きを余儀なくされている。
渋谷区は、この間、渋谷駅北側通路には総額20億円の税金投入計画をすすめている。また、本来、東急グループやJRなど開発事業者が負担すべき渋谷駅南口北側自由通路整備に20億円。さらに、東急不動産が主体となって進めている桜丘口再開発事業に40億円など、総額90億円もの血税の投入となる。大企業のための渋谷駅周辺再開発事業に膨大な税金の投入は中止すること。
19.区民の憩いの場であり、防災空間である宮下公園を三井不動産の儲けのために差し出す整備計画はやめ、区民、専門家、関係者が参加する検討会を設置すること。
区は、渋谷駅周辺の開発と連動させて、区立宮下公園を三井不動産に定期借地させ大規模商業施設の設置とホテル建設で大もうけさせようとしている。駅周辺の住民と来街者のかけがえのない防災空間であり、区民の憩いの場である宮下公園を営利企業の儲けのために差し出すことは許されない。この間、公園用地を変更して17階建てのホテルを建設させ、1階に駐車場を整備する当初計画を、駐車場の1階部分をなくし商業施設を拡大する計画に変更するなど、三井不動産の儲けを最大にするよう計画を変更している。しかも、計画を実現させるために、区民の声も聞かずに都市計画決定を変更し便宜をはかろうとしている。
区民の財産である宮下公園を三井不動産に貸し出し莫大な利益をあげさせる計画はやめ、区民、専門家、関係者の参加する検討会を設け、区民参加で練り直すこと。
20、大企業の儲けのための再開発事業に奉仕する区道の廃止、付け替えはやめること。
区は、東急ヒカリエ建設や道玄坂1丁目駅前地区再開発事業、パルコの再開発事業、東急建設のための神宮前6丁目地区再開発事業など、大企業の儲けのたに次々と区道を廃止し、付け替えるなどの便宜を図っている。さらに外苑ハウスの建て替えについても、区道を拡幅するなど、大企業のための再開発事業に便宜をはかることは、区民福祉の機関としてやるべきでない。
21、土壌汚染が明らかとなった幡ヶ谷2丁目の防災公園整備計画は、地下水モニタリング期間が終了し、安全性が確認できるまで工事を中止すること。整備計画については、土地の取得経過や土壌汚染対策の詳細について、区民に説明し区民や専門家の意見を聞いて見直すこと。
区は、土壌汚染があることが分かっていながら、幡ヶ谷2丁目の防災公園用地を鑑定価格より高い約32億円もの税金を投入して取得した。なぜ土壌汚染があるのに取得したのかなど取得の経過も土壌汚染対策の詳細も、区議会にも住民にもまったく知らせず意見も聞いていない。しかも土壌汚染対策は売り主の責任が原則なのに、取得前の土壌汚染調査費も取得後のモニタリング調査も区民の税金で負担している。
いま、豊洲新市場移転計画で、都は、地下水モニタリング期間終了まで移転の延期を決定しており、都民は、取得の経過、土壌汚染対策を変更した経過と責任、市場建設についての官製談合疑惑など徹底した調査を求めている。
区も、幡ヶ谷2丁目防災公園整備計画を、地下水モニタリング期間が終了するまで凍結すべきである。そして、土地の取得経過や土壌汚染対策の詳細についての全情報を開示し、区民と専門家の意見を聞いて、抜本的な見直しを行うこと。
22.伊豆・河津町の第二保養所は廃止すること。
伊豆・河津町の第二保養所は、改修費と運営費を総額8億円の多額の税金を使ってる。しかし、取得経過も、競売にかけられた旅館であったことも区民に明らかにせず、不透明なままである。さらに、今後の設備の改修や大規模修繕費用などで多額の税金を投入することは必至であり、運営・維持費に年間約1億円以上もかかる。区民から「遠くて、交通費も高い」「税金の浪費だ」という批判もだされている。昨年度の利用率は34%で1億円以上の赤字である。第2保養所は廃止すること。
23.議員の海外視察は税金のムダづかいでやめること。
新庁舎の議場の設計に資するためとして、一昨年区議会議員がイギリス、ベルギー、ドイツなどを視察したことに対し、区民からは、「視察に名を借りた海外旅行」と厳しい批判の声が上がっていたにもかかわらず、本年度は、2020年開催のオリンピック・パラリンピックを名目にして、リオデジャネイロとロンドンに議員の海外視察を強行した。税金を使って議員が海外視察をすることは、困難な生活を強いられている区民の納得は到底得られるものではない。「財政が厳しい」と区民に負担増とサービス削減をしている中で、区議会議員の海外視察は税金の浪費であり行わないこと。
24.渋谷区上空を低空で飛行し、騒音や落下物、墜落など、区民のいのちと健康を危険にさらす羽田空港の新飛行ルート案は、白紙撤回するよう国に求めること。
国土交通省は、2020オリンピック・パラリンピックによる来街者の増加とビジネスチャンスの拡大を理由に、羽田空港を増便させるため、渋谷区上空を飛行する新飛行ルートを計画している。
計画では、南風時(15時~19時)の4時間の間に使用され、西側ルートは、上空約600mから900mを1時間に13便(約5分に1便)、東側コースでは、1時間に31便(約2分に1便)通過する。
自動車以上の騒音や氷の塊などの落下物に加え、墜落の危険も皆無ではない。そもそも、羽田空港は、都民の命を守り安全を確保するため、人口密集地域の上空を飛行ルートから除外していた。新飛行ルートは、区民のいのちと安全、健康を脅かすもので認められない。国に対して、新飛行ルートは撤回するよう求めること。
25.立憲主義と民主主義を否定した戦争法(安保法)の廃止、集団的自衛権の行使容認の閣議決定の撤回、南スーダンPKOからの自衛隊の撤退を国に申しれること。
安倍政権は、憲法と国民多数の反対の声を踏みつけにして戦争法(安保法制)を強行した。この法律の強行によって、国の存立の土台である立憲主義、民主主義、法の支配を根底から覆された異常な事態が続いている。一方、戦争法廃止と立憲主義回復を求める世論と運動はさらに大きく広がっている。
安倍政権は、いま戦争法を発動して、南スーダンPKOに派遣する自衛隊に、武器使用を拡大した新任務を付与しようとしている。内戦が深刻化する南スーダンは、PKO参加5原則が成り立たないことは明らかである。新任務を付与した自衛隊派遣を強行すれば、戦後初めて海外の戦場で、自衛隊員が「殺し殺される」危険に直面することになる。戦争法は直ちに廃止し集団的自衛権の行使容認の閣議決定の撤退を政府に求めること。また、南スーダンPKOへの戦争法の発動は止め、自衛隊は直ちに撤退させ、憲法9条を生かした文民による支援に切り替えるよう政府に求めること。
26.原発ゼロ、再稼働の中止と自然・再生可能エネルギーへの転換を国に求めること。
安倍政権は、国民の原発再稼働に反対する声を無視して、九州電力川内原発などの再稼動を行い、さらに日本全国の原発を再稼働させようとしている。一方、国民の多数は、原発再稼働に反対しており、鹿児島県知事選挙に続いて、新潟県知事選挙でも原発の再稼働に反対する知事が誕生した。司法の場でも、原発稼働中止の決定がなされている。猛暑の夏も、原発ゼロで過ごした。政府に対し、再稼働中止、原発ゼロと自然・再生可能エネルギーへの転換を要請すること。
27.税と社会保険料の徴収強化と社会保障給付抑制のためのマイナンバー制度(税・社会保障番号制)は、国民にとって利益は無く、逆に個人情報の漏えいの危険が拡大する。政府に中止を求めるとともに、区として活用の拡大をしないこと。
政府は、税や社会保険料の徴収強化とともに「社会保障個人会計」を実施して社会保障給付の抑制を狙っている。また、マイナンバーに様々な機能を持たせる「ワンカード化」を進めることで、大企業はビジネスチャンスを拡大しようとしている。
情報漏えいを防ぐ完全なセキュリティは不可能であり、世論調査でも8割が不安と答えている。アメリカでは、年間900万件を超えるなりすまし犯罪が起こり、制度を廃止するなど、G8参加国で導入している国は他にない。
政府に中止を求めるとともに、区としての活用の拡大はしないこと。
28.労働法制の改悪に反対し、ブラック企業規制法やブラックバイト規制法を制定するなど、人間らしく働ける労働者保護の労働法制の確立を国に求めること。
安倍政権は、労働者派遣法の改悪を強行採決し、さらに「不払い残業」を合法化する「ホワイトカラーエグゼンプション」、金さえ出せば使用者の都合で解雇できる解雇自由の労働法制の大改悪を進めようとしている。これは、すべての労働者に低賃金、長時間労働を一層蔓延させ、使い捨て雇用を拡大し、格差と貧困を拡大するものである。
いま必要なのは、派遣労働を原則禁止し、長時間労働を規制し、最低賃金を大幅に引き上げるなど、人間らしく働ける雇用のルールを確立し、若者を使い捨てにするブラック企業やブラックバイト規制法を制定することである。
労働法制の改悪に反対するとともに、労働基準法を改正して残業時間の上限を年間360時間以内とし法律で厳しく規制すること。また次の労働時間までの間に一定時間の休息時間を設ける「インターバル規制」導入するとともに、ブラック企業規制法、ブラックバイト規制法の制定を国に求めること。区として、常設の相談窓口を設置すること。
29.環太平洋連携協定(TPP)は、農林水産業に壊滅的な打撃を与え、食料の自給と安全をはじめ、区民の暮らしに重大な影響をもたらすものである。ただちに撤退するよう国に求めること。
安倍政権は、国会にも国民にも交渉過程を一切明らかにしないままTPPの批准を強行しようとしている。政府は国会決議で「守る」と約束した「主要5品目」のコメや小麦などの輸入枠を大幅に拡大し、牛肉・豚肉などの関税を大幅に切り下げるなど、国会決議を踏みにじっている。さらに、野菜・果物は軒並み関税を撤廃するなど、これまで関税を撤廃したことのない農林水産物834品目の半分以上の関税を撤廃する。まさに日本の農業に壊滅的打撃を与える譲歩を繰り返したことが明らかになった。しかも、政府のTPPによる影響試算が、裏金である「輸入調整金」(SBS)により不当に引き下げられてきた輸入米の価格をもとに行われていたことが発覚しているのに再調査もしないなど、国会も国民も二重三重に欺いて強行しようとしている。
また、TPPは、食品安全の規制緩和、公共工事のアメリカ企業への大幅な開放、アメリカの保険会社のために国民皆保険制度を破壊する混合診療の大幅拡大など、「食と農」ばかりか医療の分野などにその影響がおよび、地域経済・雇用・内需は大打撃を受け日本経済を破壊するものである。国に対し、TPP交渉の全過程を明らかにするとともに、批准を行わないよう求めること。
30.沖縄県名護市辺野古への新基地建設を断念し、普天間基地の無条件撤去、沖縄東村高江の米軍オスプレイヘリパットの建設強行の中止を求めること。また、沖縄などへのオスプレイ配備は撤回し、横田基地などへの配備もやめるよう国に求めること。
安倍政権が進めてきた沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設に反対する知事が誕生し、沖縄選出のすべての国会議員が新基地反対の議員となるなど、沖縄県民の意思は明確に示されている。沖縄県民の声を踏みにじって新基地建設を強行することは民主主議の国では許されない。辺野古への新基地建設に反対し、世界一危険な米軍普天間基地の無条件返還を国に求めること。また、わずかな北部訓練場の返還と引き換えに、その何倍もの地域を爆音被害と墜落の危険にさらす米軍オスプレイパッドの建設を、住民の反対や法も無視して強行していることは許されない。政府に建設の中止を求めること。
米軍は沖縄・普天間基地に欠陥輸送機オスプレイを配備するとともに、日本全土で訓練できるようにしており、日本全土が危険な状態におかれることになる。オスプレイの訓練では、既に厚木基地も使用されており、横田基地への配備も行われようとしている。オスプレイの墜落の危険性への不安はますます高まっている。
沖縄や横田など米軍基地へのオスプレイ配備は撤回するよう国に求めること。