日本共産党渋谷区議団は、10月31日、長谷部区長に対して、「2019年度渋谷区予算編成に関する要望書」を提出しました。
「要望書」は、区民のみなさん約700人からお寄せいただいた「くらし・区政アンケート2019」に記された願いや、党区議団として来年度予算で実現することが求められる要望を1,061件(重点要求26項目、部局への要求789項目、地域の要求246項目)にまとめたものです。
はじめに
日本共産党渋谷区議団が毎年区民の皆さんにお願いしている「区政と暮らしのアンケート2018」には、691人の方から回答があり、暮らしが「悪くなった」「悪いままで変わらない」が昨年の62%から73%に増え、40代の男性からは「会社が3000人のリストラを発表しこれからも会社に残れるか心配です」70代の方からは、「今は家賃のために無理して働いていますがこの先、生活できるか心配でなりません」など切実な声がよせられました。
実際渋谷区では、昨年1年間の中小企業の倒産件数は113件、それによる失業者は767人、生活保護利用者は2909世帯3238人、就学援助は中学生の3人に1人が利用、国民健康保険料の滞納世帯は26%に達しています。また今年10月現在の認可保育園の待機児は、267人、特別養護老人ホームの待機者は442人と深刻な事態となっています。
ところが、安倍内閣は史上最高の425兆円もの内部留保を蓄えている大企業や株で大儲けをしている富裕層には多額の減税を行う一方、国民に対しては、医療、介護、年金などの社会保障費の自然増分だけで1兆6千億円もの大幅削減を行いました。さらに、来年10月から消費税を10%に引き上げることを閣議決定し、ますます格差と貧困を拡大する政策を進めようとしています。さらに秋の臨時国会には憲法九条を変えるために自民党改憲案を提起すると発言し、平和憲法を破壊しようとしています。
また渋谷区上空を低空飛行する羽田新飛行ルートの問題や、横田基地へのCV22オスプレイの配備など区民の安全がおびやかされる状況の改善を求める声が広がっています。また、東京都が広尾病院をふくむ都立病院の独法化をすすめようとしていることに、誰でもお金の心配なく利用できる都立病院をなくさないでと運動が広がっています。
こうしたくらしと安全をおびやかす悪政から区民の暮らしと福祉を守ることが渋谷区政に求められています。ところが渋谷区は、今年4月から14年連続となる国民健康保険料の値上をはじめ、介護保険料、後期高齢者医療保険料のそれぞれを値上げするなど、区民に多額の負担増を求めました。さらに、渋谷区の優れた介護サービスであった区型介護サービスの大幅削減や障害者の福祉タクシー券のきりすて、生活保護世帯の夏冬の見舞金の廃止など福祉切り捨てが行われてきました。こうした負担増と福祉を切り捨てながら922億円も基金に積み立てています。
また、渋谷駅周辺再開発事業には160億円の税金投入をはじめ、区役所の土地を70年以上貸し出すと共に、宮下公園用地は異常な安値で34年以上貸し出すなど大企業の儲けのために区民の共有財産を提供しています。
さらに渋谷駅周辺だけでなく甲州街道と水道どおり沿道の笹塚、幡ヶ谷、初台地域まで企業の儲けの対象とするために、社団法人しぶや未来デザインの設立に区の職員の派遣と税金投入を行っています。こうしたやり方は、地方自治法にさだめられた住民の福祉の向上を目的とする区の役割を放棄するもので許されません。
日本共産党渋谷区議団は、区民が主人公、くらし、福祉、子育て最優先の自治体本来の役割を果たすよう求めて、2019年度予算に対する要望書を提出します。
【重点要求】
1.高すぎる国保料を「協会けんぽ」並みにするため、国と都に対し負担金の増額を求めること。また、区としても一般会計からの繰入れを増額し、保険料を引き下げること。
区として子どもの均等割軽減を実施するとともに、低所得者に対する申請減免の基準を生活保護基準の1.15倍から引き上げること。
保険料の徴収にあたっては、生活を破壊する強引な取り立てはやめること。
2.介護保険料の区独自の軽減策は、基準額の引き上げと預貯金額の制限を撤廃し、拡充すること。低所得者の利用料負担額助成は住民税非課税者にまで拡大するとともに、預貯金額の制限を撤廃すること
利用者と介護事業者・従事者に犠牲を強いる総合事業の緩和サービスAはやめて、国と同じ介護報酬にすること。区が上乗せしてきた区型介護サービスの値上げを元に戻し、介護区分限度額による制限をやめること。
待機者ゼロをめざし、特別養護老人ホーム、グループホームを増設すること。
高齢者寝具乾燥サービスなど、切り捨てた高齢者福祉施策を復活させること。
地域包括ケアの構築については、医療と介護の連携や質の確保された切れ目のないサービスが提供できるよう、地域包括支援センターの体制を強化し、区が責任を持って進めること。
3.75歳以上の高齢者の医療費窓口負担の2割への引き上げに反対し、区として住民税非課税世帯の医療費を無料にすること。また、後期高齢者医療保険料の低所得者の軽減策を継続するよう、東京都後期高齢者医療広域連合と国に求めること。
4.国に対し、生活保護基準の引き下げをやめ、高齢者加算の復活、住宅扶助費の削減の撤回を求めること。
区の夏冬の見舞金と特別対策給付金を復活するとともに、住宅扶助の特例基準を適用すること。
福祉事務所は、高齢者ケアセンター跡地複合施設への移設はやめて、本庁舎内に整備すること。
5.障がい者が人間らしく生活するために必要なサービスは原則無償にするよう国に求めること。障がいのある人が地域で安心してくらし続けられるよう障がい者施策を拡充し、グループホーム・ケアホームを増設すること。
障がい者の就労支援施設に対する報酬単価の引下げを元に戻すよう国に求めるとともに区の助成を増やし、民間施設の運営の安定化を図ること。
心身障害者福祉手当の対象を精神障害者にも拡大し、難病患者の福祉手当を復活すること。
削減した福祉タクシー券の助成額を元に戻すこと。また、常時車椅子利用者が外出時にいつでも介護タクシーを利用できるよう、区が事業者と契約し、利用者には介護タクシー券を支給すること。
移動支援については、直ちに必要なすべての人が利用できるよう通学・通所へと拡大すること。
駅での転落事故防止のために、ホームドアの設置を急ぐとともに、未設置のホームについては、駅員を増員するよう、国、都、鉄道事業者に求めること。
6.「住宅は福祉」との位置づけで区営住宅や高齢者住宅を増設すること。
若者向けの家賃補助については、募集を復活すること。また、福祉型家賃補助の限度額を3万円に戻し、更新料補助を復活すること。都営住宅から移管された住宅については、東京都の家賃減免を引き継ぐ軽減策を実施すること。
7.保育園の待機児対策は、区立保育園の計画的整備を軸にして、認可園の増設による待機児童ゼロを早期に実現するため、国・都有地、民有地の活用を行い、国、都に対しては、用地取得費の取得費などの補助を求めること。
私立保育園の保育を区立認可園並みに改善し、認可外保育室などに、全員有資格の職員を配置するため運営費を増額するとともに、職員の処遇を改善するために助成を拡大すること。
保育料については値上げせず、低所得者の無料制度など軽減対策を継続すること。
8.学校給食を無償化すること。また、渋谷区の奨学資金貸付制度に給付制を導入するとともに、収入が少なく返済が困難な年度については返済免除にすること。
就学援助は、区独自で生活保護基準の1.5倍に基準額を引き上げるとともに、PTA活動費についても給付すること。
子ども医療費の無料化を高校生まで拡大すること。
9.小中学校の全学年の35人以下学級を早急に実現すること。
学校間に競争と格差を持ち込む学校選択制と特色ある学校づくりはやめること。
教師の多忙化を解消するために教員の人数を増やすこと。そのために区として教職員の勤務実態調査を実施すること。
放課後の子どもの生活の場を保障するために、保育を必要とする児童に対して学童保育を実施すること。
10.渋谷区の貴重な教育施設である校外学園を存続させること。山中高原学園は土地賃借を更新し建替えること。富山臨海学園はリニューアルして、子どもと区民のニーズにこたえること。
学校の体育館の冷房化を2019年度中に実施するとともに、冷房化するまでの間の対策を講じること。また、老朽化した施設や備品の改修と更新、トイレの洋式化を早急に進めること。
11.従来の想定を超える自然災害が多発する中で、地域防災計画を、いのちを守ることを最優先にした予防重視の対策となるよう、抜本的に見直すこと。
震災対策は、震度7の揺れも想定し、首都直下型地震等に対して、被害を最小限に食い止める計画にすること。
木造住宅の耐震補強工事費助成制度の委任払いや補助額の引き上げ、助成要件の緩和など制度を拡充すること。分譲マンション等の耐震化をすすめるため、助成制度の拡充をはかること。また、危険なブロック塀の撤去や生垣化への助成をおこなうこと。
帰宅困難者対策については、国や都、事業者と連携するとともに、区独自にも強化すること。
水害対策の想定基準を75㎜以上に引き上げ、浸水予想区域とともに、地下街などの浸水も想定した対策へと充実をはかること。
夏季の猛暑対策として、低所得者のクーラー設置費と電気代への助成を行うこと。
12.区の責任で、障がい者などの福祉避難所を地域ごとに整備すること。災害時要援護者対策をさらに進めること。耐震補強の必要な民間福祉施設に対して、区の責任で早急に耐震補強工事を行い、備蓄品の配備や情報伝達手段を確保すること。
13.小規模企業振興基本法に基づいて、地域経済を支える商店街、中小企業への支援を抜本的に強めるため、中小企業振興基本条例を制定すること。
商店街の街路灯電気代は全額補助するとともに、住宅簡易改修支援制度(住宅リフォーム助成制度)の拡充を図ること。
公契約条例の実効性を高めるため、支払った賃金の報告を求め、労働報酬審議会に報告するとともに、対象となる工事契約額を5000万円まで拡大すること。
14.男女平等、多様性を尊重する社会の実現のために、すべての差別をなくす立場で、区民と区内事業者への啓発を行うとともに、参加できる事業を実施すること。また、LGBTと女性差別の相談事業の充実をはかること。
15.渋谷駅周辺整備事業として、北側自由通路や東急プラザの建替え、桜丘口再開発、南口北側自由通路などに160億円もの多額の税金投入が予定されている。東急グループをはじめ、大企業のための渋谷駅周辺再開発への税金投入はやめること。
区立宮下公園整備のために三井不動産と結んだ定期借地契約は、党区議団が行った鑑定評価よりも190億円も安く、区民の利益を損ねるものである。定期借地料の再鑑定を行い、区民に説明すること。
区立宮下公園を三井不動産の儲けのために差し出す整備手法はやめ、区民、専門家、関係者の参加を保障し、最初から検討しなおすこと。
16.渋谷未来デザインは大企業の儲けのための組織であり、税金投入と職員の派遣を中止すること。また、年末カウントダウンの際に行った基本構想のPR事業など、不要不急のイベント等への支出はやめること。
17.伊豆・河津町の第二保養所は、運営・維持費に年間約1億円以上もかかる上、今後の設備の改修や大規模修繕費用などで多額の税金を投入することは必至であり、区民から「遠くて、交通費も高い」「税金の浪費だ」という批判もだされており、廃止すること。
18.東京都に対し、広尾病院をはじめ、都立病院の地方独立行政法人化の検討をやめるよう申し入れること。また、地域医療構想による病床削減を撤回し、区民の医療要望にこたえる医療提供体制を確立するよう求めること。
19.国に対して、9条改憲を中止するよう申し入れること。朝鮮半島の平和の激動を前に進めるために、9条を生かした平和外交を進めるよう求めること。
立憲主義と民主主義を否定した戦争法(安保法)、特定秘密保護法、共謀罪法の廃止を国に求めること。
20.来年10月からの消費税の10%増税を中止し、庶民増税に頼らない社会保障、教育、子育て予算の確保を国に求めること。社会保障の予算は、空前の大儲けをしている大企業の優遇税制を改めるとともに大資産家に応分の負担を求めること。
21.渋谷区上空を低空で飛行し、騒音や落下物、墜落など、区民のいのちと健康を危険にさらす羽田空港の新飛行ルート案は、白紙撤回するよう国に求めること。
22.唯一の被爆国である日本政府として、昨年国連で採択された「核兵器禁止条約」を一刻も早く批准し、核兵器廃絶の世界の運動の先頭に立つよう求めること。
23.福島原発事故によりいまだに4万人以上の人たちが避難生活を余儀なくされている。原発再稼働に多くの国民が反対している。原発ゼロ、再稼働の中止と自然・再生可能エネルギーへの転換を国に求めること。
区として、給食食材の放射能測定を復活させること。
24.墜落事故を繰り返しているCV-22オスプレイの横田基地への配備中止をアメリカに申し入れるよう国に求めること。沖縄県民の総意にそむく名護市辺野古への新基地建設を断念し、普天間基地の無条件撤去、沖縄東村高江の米軍オスプレイヘリパットの使用中止を求めること。
25.税と社会保険料の徴収強化と社会保障給付抑制のためのマイナンバー制度(税・社会保障番号制度)は、国民にとって利益は無く、逆に情報漏えいを防ぐ完全なセキュリティは不可能であり、個人情報の漏えいが拡大している。政府に中止を求めるとともに、区として活用の拡大をしないこと。
26.過労死を拡大し、残業代ゼロ、裁量労働制の拡大などの労働法制の改悪に反対し、ブラック企業規制法やブラックバイト規制法を制定するなど、人間らしく働ける労働法制の確立を国に求めること。