私は日本共産党渋谷区議団を代表して、ただいま議題になりました議案第36条 渋谷区情報公開条例の一部を改正する条例に反対の立場からから討論します。
今回の条例改正案は、当区の情報公開制度が、文書を特定しないで一括して大量請求するなど、制度の趣旨にそぐわない請求によって、円滑な運営が妨げられているなどとして、情報公開請求が条例の目的を逸脱し、権利の濫用と認められる場合には、実施機関が公開請求を却下するという規定をあらたに盛り込むとともに、これまで実費として徴収していたコピー代を手数料化し、1枚10円から20円に引き上げをはかるもので、区民の立場からは到底認められるものではありません。
反対理由の第一は、今回の改定によって区民の「知る権利」がおびやかされるからです。2009年に国が制定した「情報公開法」は、国民主権の理念に立って国民の知る権利を保障するという考え方に立った法律で、一般市民が行政機関が保有する情報を請求し、これらの情報を自由に、また最小限の費用で得る権利があることが明文化されています。基本的に行政機関には、率先して情報を開示し公開を促進する義務が課されています。この法律の中には、請求された情報公開を制限する規定は一切ありません。そして第25条では地方自治体に対して法の趣旨にのっとってその保有する情報の公開に必要な施策を策定し実施することを求めています。当区の条例でも、第一条で、区民の知る権利を保障するとともに、区が区政に関し区民に説明する責務を全うし、公正で開かれた区政の進展を図るという目的を定めていますが、今回の改定で却下規定を盛り込むことが、条例の目的に逆行し、区民の知る権利を侵害することは明らかです。
第二の反対理由は、権利の濫用にあたるかの判断が、実施機関にゆだねられていることは、区民の権利を不当に侵害するもので認められません。情報公開法の趣旨からいえば、区民の「知る権利」は、情報公開の請求者が誰であっても、また、実施機関が公開したい情報か否かを問わずに公開が行われてこそ、公正で開かれた区政の進展が保障されます。ところが審議の中では、却下の対象とするのは「制度の趣旨にそぐわないもの」「制度の円滑な運営を妨げるもの」というだけで、具体的な内容は示されず、権利の濫用についても、「請求者の態度を見て」「繰り返しの大量請求」などで判断するとしていることは大問題です。区は「適用の基準は審議会答申を受けてマニュアルを作成する」としていますが、どのような情報公開請求が濫用にあたるのかの判断を実施機関が行うことは、行政の都合によって恣意的な却下の判断がされかねず認められません。
第三の反対理由として、手数料の値上げは区民の経済力によって知る権利を不当に制限するものであり認められません。情報公開法が、請求者の費用負担について「できる限り利用しやすい額とするよう配慮しなければならない」と定めていることからも逆行するものであり、やめるべきです。
今回の改定案については、NPO法人「情報公開クリアリングハウス」をはじめ、多くの区民から、「実施機関の裁量的な情報公開の却下を招き、不当に区民の知る権利を侵害するもの」「情報公開請求者に対して負担を増加させることは、渋谷区としての情報公開に対する姿勢に疑問を持たせるもの」などの厳しい批判が寄せられています。区民の知る権利を守りいっそう充実させるためにも、こうした声に耳を傾け、条例の改定はやめるべきです。
以上、議案第36号渋谷区情報公開条例の一部を改正する条例の反対討論とします。