私は、日本共産党渋谷区議団を代表して、認定第一号 平成二十四年度渋谷区一般会計歳入歳出決算に反対する立場から討論します。
福島原発事故、東日本大震災から、2年7カ月、今なお被災地復興、生活の再建はきびしい状況に置かれ、原発事故は「収束」とは言えず、放射能汚染水漏れなど、人類が経験したことの無い危機的状況が続いています。放射能汚染は台地と海を汚染し、国民のいのち、健康にも、子どもたちの未来にも大きな影響を与えています。東日本大震災と原発事故は政治の在り方、地方自治体のあり方を根本から問うものとなっています。
私たち区議団が、この年の秋に行った「くらしと区政に関するアンケート」では、生活が苦しいと回答した人が76%に上り、深刻な訴えが多数寄せられました。しかし、区は、住民税、介護、医療保険料などを引き上げ、負担増を強いてきました。
いま区政に求められているのは、区民のきびしい生活に心を寄せ、区民の声と願いが届く区政です。そして、首都直下型大地震に備え、住民の命を守る防災対策福祉のまちづくりであり、エネルギー政策も原発依存から、安全な再生可能エネルギーへの転換です。しかし、桑原区政の2012年度決算は、そうした区民の願いに背を向け、自治体本来の役割を投げだしており、認めることはできません。
反対の理由は、第一に、災害から区民の命と財産を守り、予防重視の防災対策になっていないことです。
渋谷の防災計画は、東日本大震災をふまえて、東京都防災会議が示した被害想定に基づいた計画とするとして、2012年度中策定の期限としていましたが、いまだに作成されていません。地震災害を未然に防止し、被害を最小限に食い止めるために公助を基本に予防重視対策を強力に進めるべきです。
区内には旧建築基準法によって建てられたマンションが360棟以上あると見られていますが、居住者の高齢化・資金難により合意形成が困難など、耐震診断・耐震補強が進まないのが実態です。一般の分譲マンションの耐震診断はわずか3件の実績にとどまっています。また、木造住宅の耐震改修助成は、簡易改修はゼロ、木造一般でも6件の実績にとどまっています。区民のいのちと財産を守るために制度の改善と周知を図るべきです。
マンション管理や、耐震補強対策・修繕計画を作成援助するためマンションアドバイザー派遣制度を復活すること。マンションや木造住宅の耐震補強工事を促進するため、補助制度の改善をいっそうすすめていくべきです。
区が管理する現在60橋のうち、危険度が高いDランクの橋は5つ、Cランクの橋は21もあります。区は、長寿命化修繕計画を策定し、計画年度を2012年度から2061年度までの50年間としていますが、地域防災計画でも巨大地震の発生を指摘している中、このような計画では住民の生命を守ることはできません。計画を前倒しして改修を実施すべきです。
第二に、区民のくらしが一段ときびしくなっているのに、区民への負担増と区民サービスを切り捨て、暮らしと福祉を守るという自治体の役割を投げ捨てていることです。
2012年度の区民の課税標準額は200万円以下の低所得者が58,878人、前年比で913人増え、課税者の48.9%と約半数近い状況にあり、2012年度の倒産件数は173件、それによる失業者は1,317人に上っています。
区民は、2012年4月から国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料負担増、さらに控除額が減らされ住民税の増税など、区民の暮らしの困難に一層追い打ちをかけるものとなっています。区民のくらしをまもる防波堤の役割が区に求められていましたが、高齢者・障害者に対しても冷たい区政となっていることは認められません。一般財源を投入し、区民の負担軽減をすべきです。
区の中小企業振興予算は、6億4696万円余に対して決算額は5億2844万円余、不用額は1億1852万円にもなっています。中小企業資金融資申込みは1587件、2012年の倒産件数は173件に表れているように、強力な支援が求められていました。しかし、新たな中小企業向けの事業はおこなわれず、施策は不十分なままです。商店街街路灯の電気代の全額補助や、小規模事業者登録制度を実施し、また、住宅リフォーム助成制度の改善など、区内の商店街、中小事業者の支援を強化すべきです。
応急小口資金融資は、相談件数が115件にのぼりましたが、執行されたのはわずか3件でした。必要な人に貸し付けられるよう改善すべきです。
配食サービスは、外出することが困難で、自分で食事をつくることもできない高齢者や障害者の命綱ともいえるものです。しかし、区は、この補助金を削減し、区の役割を大きく後退させてきました。高齢者と障害者に対する配食サービスは、2011年度まで一食あたり360円の補助がおこなわれ高齢者は8441万646円、障害者は126万4340円で合計の補助額は8567万4986円でしたが、2012年度は200円に削減し、食事券事業とあわせても、高齢者は3740万8404円、障害者11万2千円と大きく後退しています。高齢者の配食サービを受けている人は、1410人から878人と激減しています。
こうした高齢者、障害者に冷たい配食サービスの補助金削減は認められません。
2012年度、開始した食事券事業は、スタート時に協力店は100店余りありましたが、今年に入り、協力を辞退する店が増え、現在80店に減少しています。配食サービスを食事券事業に統合するのは誤りであり、配食サービスと補助金を元に戻すべきです。
また、けやきの苑西原の運営を、社会福祉法人に2006年度から指定管理者にしさらに2012年度再指定しました。そのため区の運営費が削減され、2009年度と比較すると、年間の運営費が1,800万円も減らされています。このため、正規職員が非正規職員におきかえられるとともに、介護職員処遇改善交付金もあやめの苑よりも少ないなど、介護職員の労働条件の悪化が危惧されます。特養ホームの運営は直営に戻すべきです。
特別養護老人ホームの待機者は依然深刻で、今年の4月末現在633人となっています。実施計画で示されているケアコミニュティ原宿の丘地域密着型特養ホーム建設計画と、旧本町東小学校跡地建設計画をただちに実行すべきです。
障害者グループホームの増設は切実です。
区は、グループホームやケアホームの増設に対して、民間事業者に施設整備を助成すると民間任せになっています。公的責任において増設すべきです。
2012年度も区民の死因のトップはがんで、473人と死亡総数の30.5%を占めています。さらにがん検診の受診者を増やすために身近な医療機関で健診できるよう改善すべきです。また、精密検査対象者は2,497人となっており、早期発見、早期治療に結びつけるためにも二次健診の補助を復活すべきです。
2012年度は渋谷ヒカリエ内に区民サービスセンターを開設したのと引き換えに、氷川出張所の窓口を閉鎖し、恵比寿出張所も住民合意も無く一方的に恵比寿駅東口に移してしまいました。住民サービスを後退させるやり方は認められません。
2012年度の区の職員数は、前年度に比べ83人が削減されました。その主な内訳は、社会福祉関係で8人、児童福祉で16人、本町地区の学校統廃合など教育委員会が20人などです。区民サービスの低下を招く職員削減はやめるべきです。
あらためて、区として、自治体本来の役割である福祉とくらしを守る責任を果たすべきです。
第三に、財政削減、効率化を口実に、子どもを犠牲にして区立保育園、幼稚園をつぶし、学校統廃合を進めていることです。
昨年4月、認可保育園の待機児は深刻でした。ところが区は、桜丘保育園の廃止に続き、2012年度は、区立西原保育園を廃園にしました。「どうしても西原保育園に残りたい」と願う保護者を無理やり転園させて廃園を強行したことは認められません。
さらに、今年4月の認可保育園の待機児数は235人でした。それなのに、今年度には神宮前、上原保育園の存続を求める保護者の願いを無視して廃園にしてしまいました。
特に、神宮前、上原地域の0歳から3歳の待機児は、神宮前地域では96人、上原地域では40人と深刻だったのです。
昨年3月に「神宮前保育園の存続に関する陳情書」が出されましたが、神宮前保育園の保護者は、耐震補強は困難と説得されて転園を余儀なくされたのです。それを、今度は、神宮前保育園を耐震補強して認定こども園の分園とするとしています。結局、区立神宮前保育園を廃園にしつぶすことが狙いだったのです。
上原、西原保育園の跡地にしても、民間の認定こども園の分園の設置を打ち出しました。このことは区立保育園を次々と廃園し保護者の願いを踏みにじるもので認められません。
区立保育園を次々と廃園にし、廃園にした後は、民間の認定こども園の分園設置することは、区の保育に対する責任を放棄し、子どもたちの保育にお金をかけない、効率化とコスト削減のため、子どもたちを犠牲にするもので、許されません。
桜丘、西原、上原、神宮前保育園は、区立保育園として復活させるべきです。
また、区は、区立幼稚園について「定員割れして非効率」だとして、区立中幡幼稚園を廃園にしたのに続き、西原幼稚園を廃園にするため、本年度の4歳児募集を停止しました。さらに、臨川、広尾幼稚園も統廃合しようとしています。
区議会は一昨年の第4回定例会で、保護者から提出された「区立幼稚園を存続するための請願」を採択しました。西原幼稚園をはじめとする区立幼稚園の存続は議会の意思でもあります。子どもたちのよりよい教育環境を願う保護者、区民の声、議会の意思を無視して区立幼稚園の廃園を強行することは認められません。区立幼稚園を存続し幼児教育を充実すべきです。
昨年、保護者や住民にまったく知らせず、山谷小学校と代々木小学校の統廃合が、突然決められました。両学校の保護者説明化が繰り返しおこなわれ、反対の意見が相次ぎました。
学校統廃合に、代々木小学校では8割の保護者が反対し、地域からも、学校は、防災の拠点であり、これまで学校を中心に地域の人たちが築き守ってきた教育環境、地域のコミュニティを壊すことから、反対する声が多く出されました。こうした声を踏みにじり、統廃合を強行したことは認められません。山谷小、代々木小学校は存続すべきです。
英語教育重点校として、松濤中学校は他の中学校の16倍、渋谷本町学園には12倍の予算をつけ、さらに渋谷本町学園には小中一貫校のためとして2254万円が支出されています。
公教育は、どの子も公平、平等な教育が受けられ、等しく学び、成長する機会を保障されることは当然です。
「特色ある学校づくり」として、学校間格差をつけることは認められません。
一人一人に行き届いた教育を実現するためにも小規模校が見直されています。学校統廃合や学校選択制をやめるとともに、区として30人以下学級を実施すべきです。
第四に、地球温暖化対策、環境対策が大きく立ち遅れていることです。
国連の世界気象機関は、今年7月3日、2001年からの10年間は、前例のない異常気象に見舞われた10年間だったとし、国連が温暖化に警鐘し、温室効果ガスの増大が地球環境の変化に大きな影響を与えていると警告しています。渋谷区として温暖化対策の実効計画はありません。区、区民、事業者挙げて温暖化対策を実効あるものにするため条例制定し、温暖化対策を抜本的にすすめるべきです。区の温暖化対策事業費はわずか140万円で、書籍代などの購入にとどまっています。1,100万円あった緑化推進事業費は25万円で、区が指定した保存樹木318本の助成と植栽ボランティアに対する助成をやめてしまいました。区民からは、保存樹木の枝を剪定できない、と悲痛な声があがっています。復活すべきです。
今年の夏も原発が無くても電力は足りていることが証明されました。危険な原発をなくし地球環境をまもるためにも、区が率先して再生可能エネルギー、省エネ対策に乗り出すことが求められていましたが区は、LED照明への切り替えや、太陽光発電設置助成など実施していません。未来を担う子どもたちの命、健康を守るためにも環境対策を抜本的に強化すべきです。
第五に、特定の営利企業、団体への便宜供与を続けていることです。
これまで区は、東急電鉄のために渋谷ヒカリエの再開発の際、区道の廃止・付け替えをしました。さらに昨年11月には、東急電鉄㈱と関連会社に保育園の待機児が深刻にもかかわらず旧桜丘保育園施設を年間570万円、旧恵比寿防災職員住宅は、年間240万円で10年間の定期借家契約を結んでいたことが今年4月19日議会に報告されました。営利企業に区民の財産を貸し付けることは、便宜供与の何者でもありません。昨年東急電鉄から1,000万円の寄付金を受け取っていますが、受け止るべきではありません。特定の企業との癒着はやめるべきです。
文化総合センター大和田の11、12階にあるインキュベーションオフィスは、破格の賃貸料で文化学園に貸し付けられ、運営は文化学園に全面的に委ねられています。文化学園はこの施設をみずからの施設の一つとして位置付け卒業生の就職、起業支援施設と広報しています。区の施設を一法人の事業活動のために貸し出すことは認められません。
また、民間のおやじ日本に神南分庁舎の一部を無償貸与し、神宮前国際交流学級に神宮前小学校の施設を無償貸与していますが、民間への貸与はやめるべきです。
第六に、不要不急のイベント事業や土地購入などに対する税金の無駄遣いや大企業奉仕のための大型再開発を推進していることです。
区長は財政難を口実に効率化、コスト削減として次々と福祉など切り捨ててきました。その一方で住民無視・トップダウンで税金の浪費、無駄遣いを進めてきました。
区制施行80周年事業には、予算を800万円も上回る8984万4668円も支出していることは認められません。
また、花しょうぶを見る交流会を聖域として、一晩のイベントの飲食費なとどとして517万332円も支出したことは認められません。
区長が突然打ち出し、住民の反対を押し切って強行した富ヶ谷二丁目の公園計画には、用地費11億2600万円と工事費7438万6725円合わせて12億円も投入したことは認められません。昨年7月には目的が無いのに恵比寿2丁目の土地購入に1億2200万円、さらに、10月には、恵比寿一丁目の土地と建物をコミュニティ用地と称して1億2900万円で購入しています。区長の一存で次々と土地を購入する、こうした税金の使い方は認められません。
これまで大企業のための渋谷駅周辺再開発のため、2001年から2012年まで3億4330万円もの巨額の税金が投入されてきました。
2012年度は、渋谷駅周辺事業費1974万593円、渋谷駅北側自由通路の整備費として800万円が投入されました。この北側自由通路は、15年間で、総額60億円の工事費のうち20億円を負担することになります。また、今議会の補正予算であらたに、渋谷駅南口自由通路の基本設計費として1,286万円が計上されていますが、本来事業者が負担すべきです。渋谷駅周辺の再開発がさらに加速され、今後も巨額の税金が投入されることになります。今後東急東横店の建て替えに伴う再開発は、230メートルもの超高層ビル、また、東急東横線跡地にホテル建設など4つの超高層ビル建設が予定されています。
渋谷駅周辺整備事業は、大企業のための街づくりのため高さ制限を撤廃するとともに、税制面でも開発のために規制緩和し大企業のためのまちづくりを促進するものです。
大企業のための渋谷駅周辺事業に莫大な税金を投入することはやめるべきです。
以上、平成24年度渋谷区一般会計歳入歳出決算の認定に反対する反対討論といたします。
認定第二号 平成二十四年度渋谷区国民健康保険事業会計、認定第三号 同介護保険事業会計、認定四号同後期高齢者医療事業会計決算についてそれぞれ反対の立場から討論いたします。
はじめに国民健康保険事業会計についてです。
国保料は10年連続引き上げられ2012年度の保険料は、均等割りは介護分も含め1,200円の引き上げとなり、所得割の料率も引き上げられ耐えがたい負担となっています。
年収300万円の三人家族の場合231,399円にもなり高すぎる保険料に悲通な声が上がっています。
また、高い保険料のため17,864世帯が滞納世帯となっており、前年に比べ、加入世帯の26.3パーセントから30.3%に増加しています。
保険料の算出方法が住民税方式から所得税旧但し書き方式に変更になったことに伴う経過措置を2012年度で廃止したため、一層の負担増が押し付けられています。国民皆保険制度をゆるがす保険料の引き上げと、国保の広域化に反対するとともに、保険料を軽減するため国と都に財源措置をも求め保険料を引き下げるべきです。2012年度決算では約6億円もの繰越金をのこしているのですから、区独自にも引き下げるべきです。
次に、介護保険事業会計についてです。
党区議団のアンケートでも、「年金受給者ですが、介護保険料の負担が重く、やりきれません」「介護保険料が9,200円上がった。保険料は上がるが、実際必要となったときに、そう簡単には受けられないそうですね」という悲痛な声が寄せられました。
この年度は、保険料の値上げがおこなわれ、基準額で年額9,960円の引き上げとなりました。保険料の引き上げは認められません。ふつう徴収の滞納者は1,109人、そのうち本人住民税非課税の第四段階までの人が732人で68%、低所得者のために保険料軽減制度の改善を実施すべきです。
介護認定者は8,106人、そのうち要支援者は3178人、国は介護保険サービスから要支援者をはずし、地域支援事業に移行させるとしていますが、こうした制度改悪に反対すべきです。
介護予防事業のシニアいきいき事業は、高齢者の皆さんが、積極的に社会参加してもらえる、介護予防の重要な施策です。しかし、講座数の削減により参加者数が半減しています。事業の拡充と拡大をすべきです。
最後に、後期高齢者医療保険事業会計です。
75歳以上の高齢者を国保や健保などと別だてにしている後期高齢者医療制度が、お年寄りの暮らしと健康に重大な影響を与えています。厚労省の集計では保険料を払えずに滞納している高齢者は全国で25万人以上、滞納のため資産を差し押さえられた人は毎年増え続けています。保険証が手元にこない人も生まれています。高齢者を年齢で差別し、負担増などの痛みを強いる制度の根本的欠陥は明らかです。
2012年度は均等割が2,300円、所得割が1.01%引き上げられ、平均保険料は118,740円から130,664円に10%も引き上げられました。広域連合は現在、来年度の保険料の試算を始めていますが、さらに大幅な値上げとなる見込みと言われています。有病率の高い高齢者を年齢で差別し、高齢者人口が増えれば増えるほど保険料の値上がりに跳ね返る、高齢者いじめの制度は認められません。国に対し、過酷な保険料と差別医療を強いるこの制度を廃止するよう求めるべきです。
以上、三会計について反対の討論といたします。