私は、日本共産党渋谷区議団を代表して、ただいま議題となりました議案第22号 渋谷区立幼稚園条例の一部を改正する条例に反対する立場から討論をいたします。
本条例改正案は、区立西原幼稚園を廃園にしようとするものです。50年にわたって、地域のすべての子どもに対して、区が、良好な幼児教育の環境を整備し、幼児の健やかな成長をささえてきた西原幼稚園を廃園にすることは絶対に許されません。
その理由の第1に、保護者や住民の願いを踏みにじることは許されないからです。
西原幼稚園は創立以来50年間で2073人の卒園児を送り出してきました。その間、園とPTAやOBを中心に、地域ぐるみでよりよい子ども達の育ちを応援してきました。親子遠足、運動会、西原まつり、もちつき大会、幼小合同展覧会、たこあげ遠足、小学校1年生との交流給食、お別れ料理会など、ひとつひとつの行事を園と保護者の力で成功させ、ひとり一人の子どもの学び成長する力を育んできたのです。
保護者は、こうしたすばらしい区立幼稚園を残したいと、必死の努力をしてきました。区が3歳児保育を実施しない中で、西原幼稚園でも、未就園児の会である「のびっこの会」をつくり、30人から40人が登録していますが、独自のポスターを作り、未就園児の参加企画も独自に準備するなど、懸命に登録児も増やして、区立幼稚園を支えその良さを広げてきました。
廃園計画を知った保護者は、「歴史と伝統のあるすばらしい区立幼稚園を何としても残してほしい」、「住みなれた地域で区立幼稚園に通わせてほしい」との声を上げ、区や教育委員会にも何度も廃園の中止を求めて要請し、区議会にも幾度も幾度も子どもと一緒に要請、陳情、傍聴に駆けつけました。こうした熱意によって区議会も、一昨年1,506人の願いがこもった「区立幼稚園を存続するための請願」を採択したのです。その後も、西原幼稚園に子どもを入れたいと願う保護者10人から、西原幼稚園への入園を求める要請書が区や教育委員会に提出され、本議会にも、西原幼稚園の存続を求める陳情が出されているのです。保護者は、未だに納得していないのです。
こうした保護者や住民の願い、区議会で採択された請願を踏みにじって西原幼稚園廃園を強行することは許されないからです。
第2に、西原幼稚園の廃園は、地域のすべての子どもに、良好な幼児教育の環境を整備する区の責任を投げ出すことになるからです。
区立幼稚園の目的は、学校教育法にもとづいて、義務教育やその後の教育の基礎を培うために、幼児を保育し、健やかな成長の場を確保することに区が責任を持つことにあります。
だからこそ、所得の少ない家庭の子どもも困難を抱えている子どもも安心して通え、学ぶことができるのです。
区が、西原幼稚園の廃園の理由の1つにしている、近隣に認定こども園が設置され受け皿ができたからといっていますが、まったく理由になっていません。
区立幼稚園の入園料は2,000円、保育料は5,000円で、年間の負担は62,000円です。これに対して西原のこども園では入園料は8万円、毎月の保育料は短時間児では29,000円、中時間児では39,000円となります。区立幼稚園のおよそ7倍もの負担が求められることになります。区の補助を受けたとしても4倍近くとなり、これにさらに毎月4,200円以上の給食代がかかることになるのです。しかも、選考試験があり、園の判断で「入れる子」、「入れない子」に選別されることになります。
また、幼稚園は学校教育法にもとづく卒園資格を認められますが、認定こども園では学校教育法にもとづく卒園資格は与えられないのです。
西原幼稚園は西原小学校に併設されており、子ども達は安心して、幼稚園から小学校へと進学でき、保護者も継続して子育てのネットワークを豊かに発展させることができました。保護者からは、西原幼稚園の廃園にすれば、「区立幼稚園に入りたい子どもは、地域外の園に通うことになり、地域の子育てのネットワークが壊される」、「他の区立幼稚園に通えば、地元の西原小学校に行きにくくなる」など、地元の小学校との関係が薄れ、良好な幼児教育の環境が壊されることになると訴えているのです。
第3に、子どもを財政削減の犠牲にして、ひとり一人の子どもの成長の場を切り捨てることは許されないからです。
区は、区立幼稚園は非効率と決めつけて、廃園を強行しようとしていますが、とんでもありません。区立幼稚園全体の在園児数は、平成21年には190人だったものが、平成24年度244人、25年度も242人と根強い人気があり、西原幼稚園も、区が廃止方針を打ち出した平成23年度には、38人の子どもが通っていたのです。
私も先日、西原幼稚園の卒園式に伺いました。13人の卒園生一人ひとりの顔が輝いていて、園長先生はじめ教職員の方、保護者も一緒になって、子どもの成長した姿に感動し涙しました。臨席した方もみな同じ思いだったと思います。
そもそも一人ひとりの子どもの学びと成長に寄り添うべき幼児教育の営みに、効率という尺度を持ち込んで、非効率というレッテルを張り、かけがえのない子どもの学びの場を切り捨てること自体、学校教育法の精神にも、区の幼児教育に対する責任も否定するもので許されないことです。
定数割れで非効率というのであれば、区がこの間、区立幼稚園の良さを広げる努力をしてこなかったことこそ問題です。わが党区議団がかねてから要望してきた3歳児保育は、すでに多くの区で実施していますが、渋谷区は保護者の願いに背を向け未だに実施していません。保護者からは、「3歳児保育や預かり保育、通園バスなど、私立幼稚園なら当然実施している事業努力もしないで、一方的に「非効率」と決めつけ廃止するやり方は許せない」との声が上がっているのです。
区が果たすべき幼児教育の環境整備に背を向けて、財政削減の犠牲を子どもに押し付ける西原幼稚園の廃園は断じて認められないからです。
以上、区立幼稚園条例の一部を改正するための条例に反対の討論とします。