私は、日本共産党渋谷区議団を代表してただ今議題となりました、議案第43号 平成27年度 渋谷区一般会計補正予算(第1号)に反対の立場から討論します。
本予算に計上されている三事業のうち、基本構想改訂等経費とプレミアム付商品券発行事業費については、賛成しますが、住民記録事務費として計上されている通知カード・個人番号カード関連事務経費7400万円については、認めることはできません。
この経費は、2013年5月に成立した「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」にもとづき、安倍政権が2016年1月から社会保障・税番号制度、いわゆるマイナンバー制度を実施するため、今年の10月から住民票に記載されている全住民に12ケタの個人番号・マイナンバーを付け、それを通知する費用ですが、マイナンバー制度そのものに重大な問題があります。
日本共産党は、「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」に対し、三点の重大問題を指摘し、反対しました。
第一に国民一人ひとりに原則普遍の個人番号をつけ、個人情報をこれによって容易に照合できる仕組みを作ることは、プライバシー侵害や、なりすましなどの犯罪を常態化するおそれがあることです。
実際、個人情報流出を防ぐためには、人的セキュリティと機械的セキュリティの両方が必要ですが、完全なセキュリティの構築は不可能です。
日本年金機構の125万件の情報流出問題が国会で審議され、サイバー攻撃から個人情報を守る完全なセキュリティがないことは国会答弁でも認めています。6月22日年金機構は、流出した情報の被害者数が全都道府県の101万人余になることを明らかにしましたが、不正使用を心配する国民の不安は大きくなっています。
それにもかかわらず安倍内閣は、年金とマイナンバー制度は、システムが違うから大丈夫と繰り返しています。日本年金機構ができるときに日本共産党が「個人情報の保護は大丈夫なのか」と質したことに対し、「遮断されているから大丈夫」と答弁していたにも関わらず今回の流出が起きているのです。
来年一月から、年金、医療、介護、雇用や所得、納税等でマイナンバー制度の利用を開始すれば、扱う個人情報の対象者数は延べ2億5836万人になり、年金機構が扱っていた2・5倍になります。さらに安倍内閣は、今国会に民間金融機関の預金口座や健康診断、予防接種、中所得者向け公営住宅の管理まで適用を拡大する改定案を提出しており、これが成立すれば個人情報は膨大な量になるのです。情報が大量に集積されるほど利用価値が高まり、攻撃されやすくなるのです。また一度もれた情報は、流通・売買され取り返しがつかなくなるのです。
イギリスでは、いったん導入を決めた国民IDカード法を人権侵害の危険があることや、巨費が浪費されることから廃止しています。又、アメリカでは、国防総省が、なりすまし被害など甚大なデメリットから、共通番号制をやめて個別分野ごとの番号利用への変更しようとしているのです。
第二の問題は、政府が国民一人ひとりの社会保障の利用や保険料の納付状況を一体的に把握・監視し、社会保障費の抑制・削減と、徴収強化の手段とされかねない問題です。
税務当局は、個人番号をキーとして提出された法定調書を効率的につきあわせ、名寄せすることで、納税者の所得情報をより的確に把握することができるようになります。
また、社会保障費の抑制について、安倍内閣は、6月22日に発表した骨太方針と改定成長戦略の素案で、社会保障を歳出改革の重点分野と位置づけ、社会保障費の自然増分を2016年度からの3年間で、九千億円から1兆5千億円規模で削減しようとしているのです。具体的には、介護保険給付の軽度者の切捨てや、病院ベッドの削減、外来受診の抑制などの削減策を列挙しているのです。こんなことにマイナンバー制度を使わせるわけにはいきません。
第三の問題は、共通番号システムは、初期投資3千億円ともされる巨額プロジェクトにもかかわらず、その具体的なメリットも費用対効果もしめされないまま、新たな国民負担が求め続けられること。また、マイナンバーを扱う中小業者に対して厳格な管理体制を強要していますが、小規模業者にとってはマイナンバーを管理することは大きな負担となり、経営にとっても大打撃となることです。事業者は、短期アルバイトを含めすべての従業員と扶養家族のマイナンバーの管理を強いられ、膨大な事務負担が生じるとともに、仮に情報が流出した場合の罰則も科せられます。しかも制度導入の為の自己負担は、帝国データバンクの推計では、40万円から99万円とされており、不況に苦しむ中小業者に都つては、耐え難い負担となるのです。
国民の人権侵害や個人情報の流出の危険や、住民への社会保障などの給付削減と徴収強化による生活破壊と、中小業者の営業を破壊するマイナンバー制度の個人番号の通知を延期し、制度を廃止することを強く求めて、反対の討論とします。