2015.10.8 牛尾
私は日本共産党渋谷区議団を代表して、ただいま議題となりました「生活保護の住宅扶助費削減による転居指導はせず、7月導入の住宅扶助費基準の見直しの撤回を求める意見書を国に提出することを求める請願」について、採択に賛成する討論をおこないます。
国は、生活保護費を削減するために、生活扶助基準を2013年8月から3年間で平均6.5%引き下げ、13年12月には期末一時扶助を大幅に引き下げ、総額で740億円の削減を強行してきました。さらに、今年7月から住宅扶助を引き下げ、10月からは冬季加算の引き下げを行おうとしています。とりわけ住宅扶助の削減は、当区の生活保護受給者の生活の基盤を脅かしています。
住宅扶助引き下げの内容は、渋谷区の場合、二人世帯の上限額を6万9800円から6万4千円にするととともに、単身世帯についての上限額5万3700円は据え置くものの、住宅の床面積が15平米以下の場合は4万8千円、10平米以下は4万3千円、6平米以下は3万8千円にそれぞれ引き下げるものです。
当区では、民間住宅の家賃相場が高く、これまでの基準でさえ、住まいを見つけることは困難でした。そのため、狭くて環境の悪い住宅に住まわざるを得ない受給者が多いのが実態です。
こうしたなかで、住宅扶助の上限額を引き下げれば、すでに生活保護を受けている人たちが、生活扶助費を削って住宅費にあてたり、保護受給開始にあたって転居を求められても住まいが見つけられない事態が生まれることは明らかです。区内で転居を迫られる恐れのある世帯数は明らかになっていませんが、政府は生活保護を受けている160万世帯のうち44万世帯となる見通しを示しています。4分の一を超える世帯に転居を迫り、190億円もの住宅扶助を削減することは、生活保護受給者の人権を踏みにじるもので許されません。
そもそも、生活保護は、憲法25条が定める生存権をまもる社会保障制度であり、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するものでなければなりません。したがって、住宅扶助基準額を決める際に最も大切なのは、国が決めている最低居住面積水準を保障できる基準額になっているかどうかです。最低居住面積水準は、専用台所や水洗トイレ、浴室、洗面所などの条件を満たしたうえで、「健康で文化的な生活を営む基礎として必要不可欠な住宅の面積に関する水準」として2011年3月に政府が閣議決定したもので、単身では25平米、二人世帯で30平米などと決められています。
当区の家賃水準を考えれば、最低居住面積水準を満たした住宅を確保しようと思えば、単身世帯で5万3700円、二人世帯で6万9800円のこれまでの基準でさえ、不十分なことは、誰が見ても明白であり、国の見直しはあまりにも現実を見ない基準設定と言わざるを得ません。
国の理不尽な住宅扶助費削減のもとで、区は生活保護受給者の居住を守るべきです。そのために区議会として、国に対し、「7月からの住宅扶助基準の見直し」を撤回するよう意見書をあげるとともに、区に対しても住宅扶助の減額を理由にした転居指導をせず、住宅家賃の補助を行うよう求めるべきです。
以上、請願に賛成する討論とします。