私は日本共産党渋谷区議団を代表して、ただいま議題になりました「介護報酬の緊急改定を国に要望する意見書の提出を求める請願」の採択に賛成の立場から討論します。
政府の社会保障費削減政策のもとで、今年4月の介護報酬改定は、マイナス2.27%と過去最大規模の引き下げになりました。介護サービスの充実や介護従事者処遇改善加算を除けば4.48%もの引き下げで、介護事業所の経営は一段と厳しくなっています。
特に各種の加算を受けられない施設や、小規模の事業所では、その影響は大きく、介護事業所の倒産件数は過去最悪の勢いで増え続けています。民間調査機関の帝国データバンクは、「4月からの介護報酬引き下げも加わって、事業継続の断念を余儀なくされる現状だ」と原因を指摘しています。区内でも笹塚にあったデイサービス事業所が撤退しており、区民が安心して受けられる介護に逆行する事態となっています。
在宅介護では、要支援の方のデイサービスやデイケアの単価は2割以上も削減されたことから、「デイサービスで週2回のお風呂はダメと言われた」など、事業者がサービス提供を渋ったり、区分限度額以内なのに、サービスが利用できない事態も生まれています。
特養ホームでは、多床室でマイナス12%をはじめ、全体で5.6%の削減で、その影響は一施設当たり平均で1500万円の減収と見込まれてきました。じっさい、独立行政法人、福祉医療機構が特別養護老人ホーム3,057施設を対象に行った、介護報酬改定の影響に関するアンケートによると、有効回答数1,012件のうち、68.8%が減収と回答し、処遇改善加算を取得しても65・5%が基本報酬の減算分を補えないと言っており、最大の悩みは人材が確保できないことと回答しています。また、全国老人福祉施設協議会が行った特養ホームの緊急調査では、今年3月と4月の比較で一施設当たり平均月54万円の収入減で、年間では650万円の減収になるとしています。
その結果、特養ホームの待機者が全国で52万人もいる一方で、職員が確保できないために、全国の過半数の都道府県で空きベッドにせざるを得ない施設が生まれていると報道されています。当区でもかつてけやきの苑西原で、計画通りの職員が確保できず、ベッドが空いた状態になる事態が発生したことがあり、他人ごとではありません。こうした状況を放置すれば、介護の供給体制が崩壊しかねません。安倍政権は「新三本の矢」などと言って「介護離職ゼロ」を打ち出しましたが、職員の処遇改善はありません。都内の介護職の有効求人倍率は10・5倍まで急増し、介護の現場は介護報酬の大削減によっていっそうの危機と困難に直面しているのです。
区民が安心して受けられる介護保険制度にするためには、介護報酬を大幅に引き上げなどで介護事業者の経営を支援し、全産業と比較して月約10万円も安いとされる介護従事者の給与を引き上げることをはじめとした処遇改善を図ることが欠かせません。
国は憲法25条で、社会保障の増進に努める義務を負っています。その責任を果たすためにも、今年から大幅に引き下げた介護報酬の緊急再改定を行うとともに、介護報酬の引き上げが高齢者の利用料、保険料に跳ね返らないようにする措置をただちにとるべきです。また、その財源は「戦争をする国づくり」の中で5兆円にのぼる軍事費や、不要不急の大型公共事業を削減するとともに、空前の利益を上げ300兆円を超える内部留保をため込んでいる大企業への法人税減税を中止するなどしてあてるべきです。
区民が安心して受けることができる介護保険制度を実現するためにも、渋谷区議会として国に対する意見書を提出すべきです。以上請願に賛成する討論とします。