私は日本共産党渋谷区議団として、区長に質問します。
はじめに介護、高齢者福祉についてです。
介護保険制度は、「家族介護から社会化へ」として創設されたものの、歳出抑制によって見直しのたびに負担増や「介護とりあげ」がすすめられてきました。
さらに国は2018年度からの次期介護保険制度の見直しに着手し、利用料の一律2割負担への引き上げ、要介護2以下の訪問介護の生活援助や福祉用具、住宅改修の保険はずし、ケアプラン作成への自己負担の導入など、介護保険制度の根幹を突き崩す大改悪をねらっています。介護保険制度創設時に、厚労省の老健局長だった堤修三氏は、「給付は、保険料を納めた被保険者との約束だ」「介護保険は『国家的な詐欺』となりつつあるように思えてならない」と厳しく批判しています。
区長は、国の進める介護見直しが区民に与える影響についてどう考えるのか伺います。また、要介護1、2の高齢者まで保険からはずし、利用料の一律2割負担など、介護保険制度の大改悪に反対すべきと考えますが、見解を伺います。
国の制度改悪のもとで、渋谷区には区民が安心して受けられる介護サービスを保障する役割が求められています。
第一に、介護予防・日常生活支援総合事業についてです。
渋谷区では、今年4月から要支援1、2の方の訪問介護、通所介護を区が実施する介護予防・日常生活支援総合事業が開始されました。区は「要支援の方が区の事業に移行してもこれまでのサービスを低下させない」と繰り返し言ってきましたが、実態はそうなっていません。
渋谷区の総合事業では、車椅子を押してもらう、お風呂に入れてもらうなどの身体介護はこれまでの国基準並みのサービスとするものの、生活援助だけ利用する人は、「基準を緩和したサービス」として、ヘルパー資格がなくても研修を受けた人による訪問介護や、短時間のデイサービスに制限し、介護報酬や利用料を安く設定しました。
日本共産党区議団は、介護事業所訪問やアンケートに取り組み、5月22日に「介護保険シンポジウム」を開催しましたが、緩和サービスを導入しても事業者が実施できず、利用者がサービスを受けられなくなる深刻な事態が起きていることが明らかになりました。
4月の総合事業開始時点で、緩和サービスを実施した事業者は、約半数にすぎません。緩和サービスは介護報酬が国基準よりさらに訪問介護で2割、通所介護で3割も低くなっています。事業者に聞くと、介護報酬が低くヘルパー確保が難しい、実務負担が増えると言い、過半数が減収を見込み、廃止を検討すると答えた事業所も2か所ありました。また、緩和サービスを実施している事業所でも、「空き時間があるヘルパーがいる場合だけ受ける」のが実態です。
実際、私が相談を受けた高齢者夫婦は、夫が要介護3で妻が要支援1で、それぞれが訪問サービスを受けていますが、妻が5月から認定更新になって総合事業に移行するのに、事業者は渋谷区のサービスを実施しないため、これまで受けてきた家事援助のヘルパーの派遣が受けられなくなると言われました。ケアマネージャーは他の事業者に変更することを勧めましたが、せっかく慣れたヘルパーさんだったので継続してほしいと言ったところ、介護保険を使えず5月は10割負担になったと悲鳴をあげています。
緩和サービスの導入によって、事業者はさらに減収による経営の悪化で、良質なサービスが提供できなくなっています。そして、そのしわ寄せは、家事援助を引き受けてくれる事業者が見つからない、これまでのヘルパーが派遣されないなど、利用者に影響が及んでいます。生活援助が受けられなければ介護度は悪化しかねず、介護費用も増大するのです。区長は緩和サービスの実施が生み出した実態と声をどう受け止めているか伺います。また、事業者が安定して質のよいサービスを提供できるよう、処遇改善のための支援を行うべきと考えますが区長の見解を伺います。
総合事業を開始した港区や江戸川区などでは、緩和サービスを導入せずにこれまでどおり国基準のサービスを提供しています。また、新宿区では家事援助のみであっても専門職による予防給付サービスを利用できるようにして、今までのサービスを保障しています。
利用者が従来どおりのサービスを受けられるようにするために、介護の質を引き下げ、事業者を苦しめる緩和サービスは撤回すべきと考えますが、区長の見解を伺います。
第二に、区型介護サービスについてです。渋谷区の区型介護サービスは、院内介助、老々介護や日中独居世帯のヘルパー派遣など、国の介護保険制度では受けられないサービスを区が独自に提供し、区民に喜ばれ、全国からも注目されている優れた制度です。
ところが、区は4月から、区型介護サービスの生活援助サービス等の利用に、「区分支給限度額を超えない」という制限を加えました。そのため、要支援1の場合は多くの方々が利用できなくなり、要支援2であっても、他のサービスを利用していれば、制限されることが多くなりました。介護シンポジウムでは、区型介護の制約で上乗せサービスが利用できず、自費となったために月数千円から数万円の負担になった高齢者がいると聞きました。区内のケアマネージャーの団体からも、生活援助サービスの制限をやめるよう、区に要望したと聞いています。
区は、今年度予算で区型介護の予算を3300万円も削減し、国の切捨てに合わせて区の制度も後退させました。区型介護サービスの制限をやめ、これまでどおり区型介護サービスを保障すべきと考えますが、区長の見解をうかがいます。
第三に、特養ホーム、グループホームの増設と入所申し込みについてです。
今年4月の特養ホーム待機者は、半年前に比べ22人増えて603人となり、深刻さを増しています。昨年度入所できたのは209人にすぎず、入所まで、何年も待たなくてはなりません。脳梗塞で半身が不自由になり、要介護4の夫を介護してきた女性からは、「主人は胃ろうになり、今、八王子の療養病床にいますが、毎日の見舞いに片道2時間以上かかり体力がもちません。何とか区内の施設に入所させてほしい」と切実な訴えを聞きました。渋谷区の特養ホーム増設計画は、2年後に開設する旧本町東小学校跡地施設の100床とグループホーム20床にすぎません。
原宿の丘の今後の施設計画を早期に示すとともに、代々木2、3丁目の公務員住宅跡地など、国や都有地の活用や、東京都の用地借上料の補助制度も活用して、待機者ゼロをめざし、特養ホーム、グループホームの増設計画を直ちに立てるべきと考えますが、区長の見解をうかがいます。
国の介護保険制度の改悪で、昨年4月から特養入所資格を原則要介護3以上とし、要介護1、2は認知症や、家族等による虐待などの疑いがある人などで、在宅生活が困難な場合に限られました。当区でも、要介護1、2の人は昨年度の入所者がわずか2人で前年度の13人から激減、、入所希望者も昨年4月に比べ125人も減りました。
区は「要介護1、2でも申し込みを受け付ける」と言っていましたが、実際には入所申込みの際に認知症や家族の介助が得られないなどの理由を書かなければ受け付けられません。待機中の状態悪化もあるだけに、申し込み段階で要介護1、2の方を排除することはやめるべきです。区長の見解を伺います。
第四に、保険料、利用料についてです。
国は昨年8月から、年間収入等とその他の合計所得金額が単身で280万円、2人以上世帯で346万円を越える人の介護利用料を2割負担にし、低所得者が施設を利用する際に食費、居住費を軽減する補足給付に資産要件を設けました。このため、渋谷区では介護認定者の約4分の1の2,118人が2割負担になり、補足給付の受給者が約6割に減るなど、負担増が強いられています。
2割負担の収入基準などは政令で定められます。法改正なしに政府の判断での負担増押し付けはやめるよう国に求めるべきです。区長の見解を伺います。
また、渋谷区が独自に行っている低所得者の保険料、利用料軽減は、年金給付の引き下げや貯蓄なし世帯が増加しているのに、保険料で82人、利用料で116人に減少しています。すべての低所得者が経済的理由で給付を断念することのないよう、保険料、利用料の軽減制度を周知徹底するとともに、対象を住民税非課税世帯にまで拡大し、預貯金制限を撤廃すべきです。区長の見解を伺います。
つぎに障がい者福祉について質問します。
障害者が生きるために不可欠なサービスを「益」とみなし、原則1割の「応益負担」を強いる生存権侵害の障害者自立支援法に対する違憲訴訟が和解し、応益負担制度の廃止、憲法等に基づく障害者の基本的人権の行使を支援する障害福祉施策の充実などの「基本合意」が結ばれました。しかし、自公政権による今年の総合支援法の「3年目の見直し」でも、一割負担の法の枠組みは温存され、「65歳になれば介護保険が優先され、1割負担が課せられる」などの問題は解消されませんでした。
区長が障がいのある人もない人も同じように尊重されるダイバーシティを目指すならば、基本合意にもとづいて応益負担をやめることを国に求めるべきです。また、区の障害者施策でも障がい者が安心して暮らせるよう、負担の軽減とサービスの充実を図るべきと考えますが、区長の見解を伺います。
その上で、具体的な施策として以下の点を求めます。
第一に、福祉タクシー券の単価を復活することです。
区は昨年度まで月4600円支給してきた障害者の福祉タクシー券の支給単価を他区並みにするとして今年度から月3500円に引き下げました。区長は昨日の答弁で、「大きな後退ではない」などと言いましたが、とんでもありません。引き下げられた障がい者は深刻な影響を受けているのです。
息子さんが重度重複障害のお母さんからは、「数年前に息子がインフルエンザにかかった時に治療を受けられる病院が慶応病院しかなく、それ以来通院しているが片道約2000円かかる。歯科診療も健康プラザでは受けられず飯田橋の歯科大学病院まで行くので片道2500円。タクシー券は大事に使わなければと思い、外出を控えるようになった」と聞きました。
また、パニック障害のある娘さんのお母さんからは、「電車やバスに乗れず、移動はタクシーか徒歩にしているが、ショートスティの入退所や通院、休日の外出などはどうしてもタクシーを利用せざるを得ない。月4600円でも交通費の一部にしかならなかったが、削減で家計はいっそう大変です」と悲鳴をあげています。区長が予算を削減したために苦しんでいる障害者のこうした声をどう受け止めているのか、伺います。
タクシー券の削減は、外出機会を減らし、社会参加を狭め、障害者の尊厳を奪うものです。障害者の通院や外出に影響が及ばないようにするために、削減したタクシー券の支給額を元に戻すべきです。区長の見解を伺います。
第二に、今年度から有料化した就学前の児童発達支援の無料化の復活についてです。
区は、今年4月からはあとぴあ原宿で行っている、障がいのある就学前の児童に対する発達支援を無料としてきたこれまでの措置をやめ、1割負担を強行しました。障害者の受けるサービスは無料という原則に逆行する改悪です。
発達支援は親の所得によって課税世帯となるため、4月に利用した80人のうち、69人が有料となり14万9千円の負担が押し付けられました。5月からは新たに開設された代々木の杜でも有料化になりました。区長は予算で見込んだ152万円を確保すれば無料を継続できるのに、多くの子どもが無料の発達支援を受けられなくなっていることに痛みは感じないのか伺います。基本合意にも子育て支援にも逆行する児童発達支援の有料化はやめ、条例の減免規定を適用してこれまでどおり無料に戻すべきです。区長の見解を伺います。
第三に、障害者福祉手当の拡充についてです。
渋谷区は、2014年8月から特定疾病患者福祉手当を廃止し心身障害者福祉手当に統合しました。しかし、心身障害者福祉手当に移行できたのは664人に過ぎず、1,481もの人が打ち切られました。パーキンソン病で手当てを受けていた方からは、「加齢とともに発症する病気なのに、高齢を理由に手当てがなくなるのは納得がいかない。年金は削られ、体は不自由になっていくのに、頼りにしていた手当てを打ち切られ、目の前が真っ暗になった」と訴えています。特定疾病患者福祉手当になかった年齢制限、所得制限のために手当てを打ち切られた受給者は、883人もいます。難病患者の医療費は、昨年から負担限度額の引き上げや、入院時の食事代全額自己負担などで、負担が大きく増えています。
心身障害者福祉手当の年齢や所得による制限を撤廃し、これまでどおり難病患者の生活を保障すべきと考えますが、区長の見解を伺います。また、精神障害者に対しても支給する区が増えています。当区でも精神障害者1級の手帳保持者も対象とすべきと考えますが、合わせて区長の見解を伺います。
次に羽田空港の新飛行ルートの見直しについてです。
国土交通省は、羽田空港の国際線を増便するための新飛行ルートを示し、今年夏には決定しようとしています。渋谷区の上空には、南風運用時の午後3時から7時の間に、幡ヶ谷と初台の間の上空約900mから恵比寿上空約600mを通過するルートに一時間当たり13便、代々木上空約900メートルから神宮前を通過するルートに一時間当たり31便が通過する計画です。
騒音の影響は、68~74デシベルと想定されています。江戸川区では現在、南風時の悪天候時に着陸機が高度900メートルから600メートルを通過し、区民から年間150件もの苦情が寄せられています。また、航路の下に住む住民は常に落下物等の危険にさらされます。成田空港周辺では昨年一年間だけでも5件が確認されており、航空労組連絡会も「落下物の被害が懸念される」としています。
区民からは、「オリンピックの招致を理由に禁じ手である住宅地・繁華街・高層ビル群上空を降下して騒音と危険の犠牲を都民に押し付けることは認められない」など、経済優先で都民の安全を無視するやり方への怒りがよせられています。4月には「羽田増便による都心低空飛行計画に反対する東京連絡会」が国土交通省に計画の撤回を求める要請をするなど、都民の運動も起こっています。
そもそも、東京湾を最大限に活用する羽田空港の飛行ルートは、騒音被害に苦しむ住民が裁判に訴えるなかで国と和解し、設定されたのです。今回の変更は、住民との約束を反故にするものです。区長は、区民の安全を脅かす羽田空港新飛行ルートの見直しを求めるべきと考えますが、見解を伺います。
つぎに、神宮外苑のまちづくりについてです。
神宮外苑は風致地区として建築物の高さは15メートルに制限されており、国立競技場の建替えでもこれまでの30メートルが限度です。しかし、東京都は、良好な環境形成という理念に背き、高さ70メートルの新国立競技場や72メートルの日本青年館・JSC本部棟が建設できるようにするため、2013年6月に渋谷、新宿、港の3区にまたがる神宮外苑地区・地区計画の都市計画決定を強行しました。
今回、都はさらに追加して、高さ78メートルの日本体育協会とJOCが入る新会館の建設と、神宮前二丁目の外苑ハウスを高さ25mから80m、延べ床面積は1万5千㎡から6万㎡と4倍にする建替えにあわせた地区計画の変更案を示し、今年中にも都市計画決定しようとしています。
5月31日に開かれた説明会では「突然、JOCビルをここに建てるというのは理解できない」「外苑ハウスの建替えになぜ大幅な優遇措置がとられるのか」「明治公園がどうなるかのビジョンや計画がない」など、疑問と批判が続出しました。
神宮外苑の緑を壊し環境破壊をもたらす新国立競技場と同じように、日本体育協会・JOC新会館や外苑ハウスの計画は神宮外苑の環境にふさわしいものとはいえません。高層ビルや巨大マンション建設にあわせた都市計画の変更はやめるよう、区としても意見を述べるべきです。区長の見解を伺います。