私は日本共産党渋谷区議団を代表して、ただいま議題になりました認定第1号、平成27年度渋谷区一般会計、認定第2号、同国民健康保険事業会計、認定第3号、同介護保険事業会計、認定第4号、同後期高齢者医療事業会計の歳入歳出決算について、反対の立場から討論します。
2015年度は、安倍政権と与党が国民の多数の民意を踏みにじって憲法違反の安保法=戦争法を強行し、自衛隊が海外で殺し殺される危険がさしせまり、経済でもアベノミクスで大企業が3年連続で史上空前の利益を上げる一方で、働く人の実質賃金は低下し続け、5年前に比べて5%も低下しました。消費税の8%増税の影響で個人消費は戦後初めて2年連続で低下する異常事態となり、不安定雇用も拡大し続け、貧困と格差が広がりました。
区民のくらしも、日本共産党区議団が実施したくらしのアンケーで74%の人が「くらしが苦しくなった」と答えたように、厳しい生活を余儀なくされていました。区民は「住民目線の区政」を訴えて新たに誕生した長谷部区長に、くらしを守り福祉を充実させる区政を求めていました。
ところが、長谷部区政は、前区政の住民無視と開発優先の区政をそのまま踏襲し、住民への説明もせず意見も聞かずに新庁舎の建替えや宮下公園の整備に突き進み、渋谷駅周辺再開発に莫大な税金を投入する一方で福祉を削り、区民負担を増やしてきました。また、区税収入が増えているのに、その多くは区民のために使うことはせず、財政調整基金に50億円を積み増しして359億2839万円に、都市整備基金は376億8931万で合計736億1770万円もため込むなど、暮らしを守る役割を果たそうとはしなかったことは認められません。以下、各部ごとに決算の問題点を指摘します。
新総合庁舎等整備事業では、新総合庁舎等整備事業費として三井不動産レジデンシャル等と結ぶ借地契約書等のアドバイスを受ける弁護士や建築家等の相談員6人への委託料など、2502万3千円余と仮庁舎整備事業として、仮庁舎設置のための委託料、工事費、賃借料等15億5363万5千円余に加え、東京都への借地料6695万円余で合計16億4561万8千円余が執行されました。区民は、三井不動産レジデンシャル等に区役所庁舎の敷地の約3分の1にあたる4500平米を70年以上借し出してマンションを建てさせる見返りに庁舎と公会堂を建ててもらう手法に納得していません。今年2月に開かれた工事説明会では、説明はすべて事業者任せで区が責任を持とうとしないことや、横浜のマンション杭打ち偽装事件の事業者と契約を結んだことへの不安の声が出されました。また、三井不動産レジデンシャル等のマンションについては、総事業費や分譲価格等の質問に一切答えず、住民から「三井不動産の儲けのために区民の土地を使うのか。住宅棟はない方がよい」「三井不動産の儲けのための庁舎建設はやめるべき」等の意見が出されたのです。
さらに区は、建築費の高騰を理由に2014年度に結んだ基本協定と借地契約を見直し、建築費の対価を154億円から211億円に引き上げることと引き換えに、三井不動産レジデンシャルが建てるマンションを37階420戸から39階507戸に拡大したのです。区民には全容を知らせず、意見も聞かず、三井不動産が区民の土地を使って最大の儲けをあげる庁舎建替えのやり方を認めることはできません。
財産管理事務費で幡ヶ谷二丁目防災公園等複合施設用地に人が入らないよう柵を設置する工事と、土壌汚染対策工事で土が近隣に飛ばないように土の圧縮工事を行ったため、合計766万8千円を執行しました。幡ヶ谷二丁目の用地については28年度も土壌汚染に伴う地下水のモニタリング費用を計上し、地下水の測定が行われていますが、一回目より二回目の測定結果が悪化していることから再汚染の不安が広がっています。工事は中止し、改めて住民、専門家の参加で検討し直すべきです。
公契約条例にもとづく労働報酬審議会が予算では4回分計上されていましたが、労働報酬下限額を定める会議1回しか実施していないことは重大です。区の公契約条例が適用されている現場で働く労働者の一部で下限額より低い賃金で働いている実態も、関係団体の実態調査で明らかになっているだけに、他の自治体で実施しているように、受注者に労働者に支払っている賃金の実態を把握できる労働台帳の提出を求めるとともに、働く労働者にとっても区が定めた労働報酬下限額がいくらなのかを周知徹底するよう改善すべきです。
大地震や自然災害による被害が全国的に増大しているなかで、日ごろからの備えが区民の命と財産を守る上でいっそう重要となっています。災害時要援護者対策経費として高齢者家具転倒予防金具の設置工事費が計上されていますが、予算150万9千円に対し、執行額は64万4千円で多くの不用額を出し都に返還しています。転倒防止金具の設置が必要な高齢者に周知を徹底するとともに、障害児・者のいる世帯や民営福祉施設等にも助成対象を拡大すべきです。また、他の自治体で助成を開始している感震ブレーカー設置助成制度を当区でも創設すべきです。
第二保養所の河津さくらの里しぶやに対する税金投入は、大浴場等の改修に2億6512万8千円、運営費に1億2808万5千円など、合計で4億797万4千円余が執行されました。一年間の利用者はのべ4135人で利用率は34.6%に過ぎず、区民から遠くて不便、二度と行かないなどと酷評されています。1億円を超える運営費を毎年投入するだけでなく、老朽化した施設の維持改修にさらなる経費をかけることは税金の無駄遣いであり、この施設廃止すべきです。
社会保障・税番号制度が開始され、この年度通知カードの発送がおこなわれ、マイナンバーカードの発行も始められました。渋谷区は国が定めた情報のほかにも、マイナンバーカードで印鑑登録証明の発行ができるようにしました。区民の個人情報のセキュリティに対する不安が払しょくできていないのにが、マイナンバーに印鑑登録の情報も紐付したことは認められません。そもそもマイナンバー制度は、税と社会保険料の徴収強化の一方、社会保障給付を抑制することを企図して実施されるものであり、認めることはできません。
渋谷駅周辺整備事業では、東急不動産などが推進する桜丘口地区の再開発事業に5億7600万円をはじめ、渋谷駅周辺整備調整事業経費として1億8725万円余、加えて26年度から繰越明許となった南口北側自由通路整備事業に3488万9千円余、渋谷駅北口自由通路整備事業に2756万1千円も支出し、27年度全体の税金投入額は8億2570万円余に達しています。桜丘口地区の再開発事業ではアパート住民が追い出され、商店主からは再開発後は戻ってこれないという声が上がるなど区民は犠牲を強いられています。大企業のための渋谷駅周辺再開発事業への税金投入は中止すべきです。
区民の憩いの場であるとともに渋谷駅周辺の貴重な防災空間である区立宮下公園を三井不動産に33年間貸し付け、3層の商業ビルと17階建のホテルを建設して大儲けをさせる計画を推進するために、宮下公園等都市計画変更事業委託費として194万4千円を執行しました。現在示されている都市計画案では,当初1階に整備するはずだった公共駐車場が地下に移され、商業施設がさらに増やされています。そもそも区民に一切の説明もないまま、公園内にホテルや商業施設をたてさせ、緑化した商業施設の屋上を「公園」などと称することは、都市公園という区民共通の財産を一企業の利益のために差し出すものであり、到底認められません。計画は白紙に戻し、区民参加の検討会を設置して一から検討し直すべきです。
保育園運営、施設整備費について、昨年4月の認可保育園の待機児童は528人でどこの保育施設にも入れなかった子どもは252人でした。今年度の認可園の待機児は921人でどこにも入れない子も315人といっそう深刻になっているのに、区立本町第二保育園を廃止したことは認められません。
今年の10月には、どこにも入れなかった子どもが、451人とさらに増えており、0歳から2歳児が98%を占めているだけに、保育施設の増設は喫緊の課題です。待機児解消にむけ、未就学前の人口の半分程度を目標に区立保育園を中心に整備し、公的責任で保育を保障すべきです。国や都の土地や区施設などを基本に、民有地も活用して認可保育園を早急に増設するべきです。また、保育施設の建設にあたっては、事前に近隣住民との合意形成をはかり良好な保育環境をつくるべきです。
子育て支援センターは、相談事業に加え、短期緊急保育、子育てひろばなど幅広く子育て支援を行う大事な施設です。H27年度、短期緊急保育の利用実績は2468人とニーズが高くなっているだけに、ひがし、西原、原宿の子育て広場を子育て支援センターにして短期緊急保育を実施するとともに、子育て支援センターの増設をはかるべきです。
少人数学級は、教師が一人ひとりの児童・生徒と向き合う時間を確保し、児童生徒の人格形成を育む点からも重要です。区内には35人をこえるクラスが、小学校で7クラス、中学校で2クラスありました。区として早急にすべての小中学校で35人以下学級を実現し、さらに30人学級を目指すべきです。
区内の中学校では、英語教育重点校として二校が指定され、松濤中学で1900万円余、本町学園で1425万円余と他の中学校に比べ最大30倍もの経費が執行されています。公教育では学校間の格差をなくし、学校選択制をやめ、どの子にも地元の学校で基礎学力を身につけられるよう保障すべきです。
学校給食費は食育の場として重要であり、義務教育は無償の原則にたって給食費無償化を実施する自治体も増えています。当区でも給食費を無償にして保護者と教師の負担をなくすべきです。
就学援助は、小学校で21%、中学校で33%の児童・生徒が受けています。格差と貧困が拡大される中、保護者の教育費負担を軽減するために、支給基準を生活保護基準の1・5倍まで引き上げるべきです。また、新入学学用品費は、支給を入学前に前倒しするとともに、単価を実情に見合った金額に引き上げるべきです。
特別支援学級運営費では、情緒障がい児の小学校での通級指導学級が都の制度変更で通級指導から巡回指導に変わろうとしています。通級指導学級を必要とする子どもたちのために、小学校3校の通級指導学級をこれまでどおり継続し、中学校での通級指導学級を増設すべきです。
図書館運営では、区内10カ所の図書館が民間委託され、中央図書館でも常勤の図書館司書は2名にすぎません。図書館は営利を目的としないため直営に戻すべきです。また、より多くの人に読書の楽しみを拡げるためにも、各館に常勤の司書を配置すべきです。
社会教育館は、区内の社会教育活動の中核を担う施設であり、民間委託をやめ直営に戻すとともに、区民の活動の幅が広がるよう、全館に常勤の社会教育主事を配置すべきです。また、施設の老朽化対策をすみやかに検討し、備品の整備を十分に行うべきです。
学校開放事業の夏季プール開放を全校廃止したことは許されません。元々は5千人以上の利用があった子どもたちに人気の事業です。今後は、全校で開放を目指すべきです。また、現在行っている学校温水プール開放事業で、小学生の利用料は時期・曜日を問わず無料にすべきです。
高齢者福祉では、マッサージサービスの委託料を削り利用料金を800円から1200円に値上げしました。寝具乾燥も無料から有料にし対象者も介護認定を受けた人に限定し、訪問入浴介護も要支援者のサービス利用をできなくしました。このため、これらのサービス利用は大きく減ってしまいました。また、区型介護サービスの緊急派遣型ホームヘルプサービスや勤労者世帯支援外出援助サービスをやめてしまいました。こうした高齢者福祉の切り捨ては認められません。
特養ホームの入所資格を原則要介護3以上に限定したことにより、入所申込み者は前年に比べ140人も減り、実際に入所した人も前年度の13人から2人に激減しました。区は入所申込み段階から特例入所の対象になることを受け付けの条件にしていますが、こうした制限はやめるべきです。きびしい入所制限にもかかわらず、今年の入所待機者は586人にも上っています。特養ホームの増設にむけてただちに計画を立てるべきです。区立特養のうち、けやきの苑・西原、地域密着型特養のせせらぎは指定管理での運営が行われていますが、この年度の運営費も前年度に比べ、西原で398万3千円、せせらぎで93万円も減らされています。この年度は介護報酬の基本報酬が6%も削られており、毎年の運営費の削減は入所者のサービス低下につながりかねないだけに、指定管理はやめるべきです。
生活保護では、国の住宅扶助基準の引き下げで、区内の受給者のうち78世帯が指導の対象になりました。すでに経過措置が過ぎた受給者は住宅扶助費が引き下げられており、基準以内の家賃の住居が見つからなければ、生活費を切り詰めなければなりません。家賃の高い渋谷区でこうした対応は受給者の人権を脅かすもので認められません。都心区で実施しているように、区内でも特別基準を実態に合わせて認め、住み慣れた地域での居住を保障すべきです。
区は2014年8月から特定疾病患者福祉手当を心身障害者福祉手当に統合したため、1481人が対象外とされました。切り捨てられた手当を復活させるために、年齢制限、所得制限を廃止するとともに、対象外になっている精神障害者にも福祉手当を支給するよう都に求め、区独自にも実施すべきです。
精神障害者支援事業所に行っている運営費助成について、4施設中2施設から、家賃補助の増額の要望が出されています。区はこの間、区施設を障害者の作業所に貸し出すなどの支援を行ってきましたが、精神障害者の作業所では実現していません。施設の安定的な運営を保障するためにも、持ち出しとなっている家賃分をなくすよう、限度額の引き上げを行うとともに、区施設の提供についても検討すべきです。
がん検診は要精密者の二次検診受診への勧奨や結果の把握など改善されてはいるものの、受診率は乳がん検診以外はいずれも10%台と低迷しています。一検診男受診率を向上させるためにも、現在二か所でしかない胃、大腸、肺がん検診を区内の身近な医療機関で受診できるよう改善するとともに、成人男性に多く発症している前立腺がんについても検診を実施すべきです。
平成27年度の国民健康保険料は11年連続して引き上げられ、一人あたりの年間平均保険料は11万8755円となり、前年度と比べ1071円の引き上げとなりました。年収300万円の夫婦と子ども1人の3人世帯の保険料は26万8137円で前年度と比べ3864円も引き上げられ、給料の一か月分が保険料で消えてしまいます。その結果、滞納世帯はさらに増え、33.62%にものぼっています。滞納世帯への短期証発行は666件、窓口でいったん全額負担しなければ医療が受けられない資格証は46件にものぼり、区民の医療を受ける機会を奪っています。
国民健康保険料は、失業者や不安定雇用の労働者、高齢者など、もともと低所得の人が多く加入する医療保険制度であるにもかかわらず、国は国庫支出の割合を減らして責任を後退させてきました。市町村国保の総収入に占める国庫負担の割合は1984年度の50%から2014年度には24%にまで減り、全国平均の保険料はこの間に一人当たり3万9千円から9万3千円に増えました。重すぎる国保の保険料を本格的に引き下げることは、国庫負担の大幅増額によってしか解決できません。これを国に正面から求めるとともに、区としても低所得の方々に区長の判断で保険料を減免する申請減免の対象となる収入額を明記して周知するとともに、生活保護基準の1.15倍以下という基準を引き上げるよう特別区長会で主張すべきです。
第6期介護保険事業計画の初年度となるこの年度の保険料は、基準額が61800円から67560円に5760円引き上げられ、生活保護世帯などの旧第一段階と第四段階以上のすべての所得段階で値上げとなりました。一人あたりの年額保険料は平均で6万7704円から7万4766円になり、7062円、10.4%の大幅な値上げとなり、普通徴収の滞納者数は1626人にものぼりました。一方で年金支給額は減っているのに、区の低所得者の保険料軽減制度の利用者は前年度の79人から76人に減っています。このことは保険料軽減制度が知られていないことを示しています。
また、この年度の認定段階ごとの限度額に対するサービス利用率は55.5%で前年度に比べ0.4%低下しました。特に要支援者の利用率が下がっていることは、介護予防を重視して重度化を防ぐ介護保険制度の目的にも逆行するものです。誰もがお金の心配なく必要な介護を受けられるようにするためにも、保険料を引き下げ、保険料、利用料の軽減制度の周知徹底を図るとともに、預貯金額制限を撤廃すべきです。
平成20年度からスタートしたこの制度の保険料は2年ごとの見直しのたびに引き上げられてきました。この年度の年額平均13万290円の保険料は年金を頼りに生活する高齢者にとって重い負担となっており、普通徴収の9635人の被保険者の滞納は2473件にものぼりました。国は来年度から、低所得の方や、他の医療保険制度で被扶養者から移行した高齢者の保険料を8.5割、9割軽減する特例軽減を廃止しようとしており、実施されれば年齢による差別医療制度の弊害が一気に噴出します。そもそも後期高齢者医療制度は、導入を担当した当時の厚労省の課長補佐が、地方での講演で、「医療費が際限なく上がっていく痛みを高齢者に直接感じてもらう」ためにこの制度をつくった」と放言したことに示されているように、75歳以上の高齢者だけを囲い込み、差別的な医療制度を行なう制度に他なりません。この制度はきっぱりと廃止し、もとの老人保険医療制度に戻すべきです。
以上、平成27年度渋谷区一般会計、同国民健康保険事業会計、同介護保険事業会計、同後期高齢者医療事業会計の歳入歳出決算の認定に反対の討論とします。