ご意見
・ご相談

日本共産党渋谷区議会議員団

ご意見・ご相談

議会報告
REPORT

2016年 第3回定例会最終本会議での牛尾まさみ議員の「所得税法第56条廃止の意見書提出を求める請願」に対する賛成討論

 私は日本共産党渋谷区議団を代表して、ただいま議題になりました、所得税法第56条廃止の意見書提出を求める請願に賛成の立場から討論します。 

 請願の趣旨は、所得税法第56条は「事業者の配偶者とその親族が事業に従事した時、対価の支払は必要経費に算入しない」として家族従業者の自家労賃を認めていないことは、憲法の個人の尊重、法の下の平等、両性の平等、財産権などに反するとして、すべての事業者への記帳義務化にあわせて配偶者や家族従業者の働き分を事業主の控除としてではなく、必要経費として算入するよう求めるとして、当議会に所得税法第56条廃止の意見書を国に提出することを求めるものです。 

 賛成理由の第一は、配偶者や家族の働きを必要経費として認めないという所得税法第56条が人権否定にあたるとともに、この条文の制定された経緯や時代背景から見ても、このまま残しておく理由はないからです。

 1947年に施行された現行憲法は、平和主義、国民主権を高らかに掲げ、国民の基本的人権として、すべての国民に、個人の尊重、法の下の平等、両性の平等、財産権などを保障することを明記しました。こうしたもとで、自営業者の家族についてもその働きを正当に評価し、その対価として賃金を支払うことは当然です。

 1887年(明治20年)に制定された所得税法のもとでは世帯単位の納税がおこなわれていましたが、日本の税制改革に関して出されたシャウプ勧告を受けて1950年から世帯単位から個人単位の課税に切り替えられました。ところが、56条には個人単位の課税制度を利用して家族構成員間で所得を分散させる租税回避的な行動を抑制するためとして家族単位の課税の仕組みが残されました。

 これは当時の日本の個人事業が家族全体の協力の下に行われていることが多く、必ずしも家族従業員に対して給与等の対価を支払う慣行がなかったことを反映してのものであり、現在もなお合理性を持つとはいえません。 

 第二の理由は、自家労賃を認めることは、世界でも、国内でも時代の流れとなっているからです。

 世界に目を向けると、ドイツ、フランス、アメリカなど主要国では自家労賃は必要経費として認め家族従業者の人格・人権、労働を正当に評価しています。また、国連女性差別撤廃委員会は、2009年日本に対する総括所見の議論の中で日本政府に痛烈な批判が行われ、今年3月に出された国連女性差別撤廃委員会の総括所見でも、家族経営における女性の働きを認めるよう所得税法の見直しが提起されました。

 こうしたなかで、国内でも第四次男女共同参画基本計画には、「商工業等の自営業における家族従業者の実態を踏まえ、女性が家族従業者として果たしている役割が適切に評価されるよう、税制等の各種制度の在り方を検討する」という文言が盛り込まれ、閣議決定されています。

 国会でも、2009年11月17日の参院財政金融委員会で、峰崎直樹税務副大臣が「多くの皆さんが廃止を望んでおられることはよくわかっている」「所得税法56条廃止について、前政権から継承としてしっかり検討していきたい」と表明、それを受けて藤井裕久財務大臣も、「私も峰崎副大臣と同様に考えている」と答弁しました。また、2010年3月19日の衆院経済産業委員会では直島正行経済産業大臣が「所得税法56条は見直す必要がある。省庁ごとに所管はあるが、政策は横断的に実行したい」と答えています。さらに、今年3月16日の衆議院財政金融委員会では、麻生財務大臣が「以前から所得税法第56条を見直すべきとのご指摘を受けているところでありますから、引き続き財務省において丁寧に検討していきたいと考えております」と答弁し、政府も検討を約束しています。

 地方自治体の議会でも意見書がすでに10月17日現在で464議会から上がっています。渋谷区議会でも時代遅れとなった所得税法第56条廃止の意見書を提出すべきです。 

 最後に、請願を審査した区民環境委員会であった青色申告にすれば問題ないという点について述べさせていただきます。

 現行制度では、白色申告事業者には自家労賃は認められていませんが、同じ中小事業者でも青色申告事業者になれば、家族に支払った賃金を必要経費として控除することはできるようになっています。両者の最も大きな違いは、記帳義務のあるなしでしたが、1984年から所得300万円以上の、2014年からはすべての白色申告事業者にも記帳義務が課されたことから、両申告制度の間で差をつける合理的な理由はなくなっています。

 しかし、青色申告事業者になるためには、申告の前年の3月15日までに青色申告事業者としての承認申請を行わなければならず、あらかじめ届け出た家族への賃金の上限額を超える場合にはさらに届出が必要となるなどの厳しい規制があります。このことは青色申告制度を定めた所得税法第57条が、56条の例外規定として定められたことによるものです。請願者が求めているのは、そもそも自家労賃を認めないという所得税法56条を廃止することであり、青色申告にすれば問題ないというのは請願の趣旨に答えることにはなりません。

 中小事業者の配偶者や家族に対する差別的な制度の廃止を願う区民の訴えを受けとめ、所得税法第56条廃止の意見書を国に挙げるよう重ねて呼びかけ、請願に賛成する討論とします。 

一覧に戻る

TOP