3月31日の区議会本会議で、トマ孝二区議会議員が行った「渋谷区新たな地域活性化のための条例」についての反対討論を紹介します。
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私は、日本共産党渋谷区議団を代表して、ただいま議題となりました、議案第六号 渋谷区新たな地域活性化のための条例について反対の立場から討論をおこないます。
党区議団は、住民が自主的に活動している任意団体である町会や自治会、NPO団体が、地域住民の親睦、防犯、清掃、防災など地域を住み良くするためにおこなっている活動に敬意を表するとともにそれに対する支援を強化することは必要だと考えています。しかし、本条例には問題点があり、以下その理由について述べます。
第一の反対の理由は、区が定めた基本構想の実現のために住民を動員し、区が担うべき役割を住民同士の助け合い、支えあいにかえようとしているからです。
じっさい、条例の前文では、「渋谷のにぎわいと活力を生み出し、維持していくためには町会をはじめ、PTA、NPO団体、ボランティア団体等の様々な組織や事業者が連携して地域の課題解決に取組むことが必要」、「私たち渋谷区民は、町会その他の地域コミュニティをはじめ、福祉、教育、子育て、青少年育成、防犯、防災等のあらゆる分野で地域の課題を地域で解決する社会を実現するため、そして誰もがその地域活動を通じて活き活きと自己実現に向かって躍動するダイバーシティ渋谷・『ちがいをちからに変える街・渋谷』を実現する」として町会等の役割を区が規定し、さらに区の担うべき役割を町会等に押し付け、負担を増やす条例となっていることは重大で、こうしたこは認められるものではありません。
第二の反対理由は、住民の自由意思で入退会できる組織である町会等に加入することを区が強く求めているからです。
じっさい「地域共同体の責務」を定めた第四条では「町会その他の地域共同体は、その所在する区域の区民、居住者及び事業者に対して、その活動内容を周知し、及び当該団体への参加を勧誘するよう努めるものとする」とうたっています。
事業者の責務を規定した第五条の二項では、「事業者は従業員が区に居住する場合は、当該地域に所在する町会その他の地域共同体に自らの意思により加入すること及び当該団体の活動に参加することについて、十分に配慮するよう努めるものとする」とし、企業が渋谷区在住の従業員に対し、町会などに加入するよう求めることを定めているのです。
宅地建物取引業を営む事業者の責務を定めた第六条では「区内に所在する宅地または建物について、売買、交換、貸借の代理、媒介した場合」「当該宅地又は建物が所在する地域の町会その他の地域共同体」に「積極的に協力するよう努めなければならない」として町会などへの勧誘を取引きのさいにおこなうよう求めているのです。
まさに、今回の条例は、自主的な団体組織である町会等について、全区民や新しく区民になる人びとを対象にその加入を強く求めるものとなっているのです。 こうしたことは、住民に対する行政からの押しつけであり、住民の意思に反するものと言わなければなりません。
第三の反対理由は、本条例は憲法が保障する住民自治の原則である民主主義の根幹の地方自治を踏みにじることになるからです。
今回の条例について、町会、自治会が高齢化社会の進行のなかで担い手が少なくなり、全区民の三〇%しか町会に参加していない現状から、町会への加入者増のために支援してほしい、と、町会からの要請にもとづくものだと区当局は言っています。私たちも町会等の自主活動が支障なくより活発におこなわれるよう支援することは重要だと思います。
しかし、それは、条例を制定しなければできないものではなく住民による自主的、主体的な幅広い取組みを支援する方向や個性豊かに多様性を認め合い、住民の自治意識をいっそう高める方向への支援によって実現できると考えます。
そもそも、1942年には町内会は、大政翼賛会の下部組織となり、国民を経済的、政治的、思想的に統制するとともに、国防への参加を強要する国家施策に動員する末端組織として重要な役割を担わされるようになったのです。だからこそ敗戦後に、占領軍によって町内会の解散、禁止がおこなわれたのです。町内会が、戦争への協力を強制的に、または自ら進んでおこなうようにされたことへの反省にもとづいて現在の町会、自治会は住民が自主的に加入し、役割や目的も住民自らが定めて、運営されているのです。したがって、こうした自主的な団体、組織である町会や自治会、NPO組織に区がこのような条例をつくり活動を規定することは町会等を区の下部組織にするものであり、地方自治の精神に反するものですることです。
このような条例を制定し、全区民や新たな区民をを拘束することは住民自治に反するものであり、当区議団は認めることはできません。
以上、反対討論といたします。