3月31日の区議会本会議で、菅野茂区議団長が行った、2017年度渋谷区一般会計予算、同国民健康保険事業会計、同介護保険事業会計、同後期高齢者医療事業会計についての反対討論を紹介します。
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私は日本共産党渋谷区議団を代表して、議案第19号平成29年度渋谷区一般会計予算に反対の立場から討論いたします。
安倍政権の「アベノミクス」は今や破たんが明瞭です。「世界で一番企業が活躍しやすい国」をめざすとして3年間で4兆円もの企業減税を行い、大企業は3年連続で「史上最高益」を更新し大株主など富裕層にも巨額の富がもたらされました。大企業の内部留保は過去最高の386兆円に達しています。しかし、労働者の実質賃金は4年連続減少し、国内需要の6割を占める個人消費は2015、16と2年連続でマイナス、非正規労働者の増大で、低賃金労働者が増え、中間層が疲弊し、貧困率は16・1%となり、先進国の中でも「貧困大国」となっています。
また、自公政権による社会保障費の「自然増」削減はこの間合計3兆3千億円にのぼり、医療費負担増、年金削減、介護サービス取り上げ、生活保護切り下げなど国民の生存権を脅かし、将来不安を増大させ、ここでも格差と貧困を拡大さているのです。区民の暮らしの実態は深刻です。わが党区議団のアンケートでは、「生活が苦しい」と66%が回答、この中で「保険料の負担が重い」という声が第1位です。区民の課税標準では200万円以下と均等割りのみの人は47・23%約半数にのぼり、高い国保料の滞納者は31%、就学援助の認定者は中学生で30%をこえており、深刻さが広がっています。
この格差と貧困の拡大の広がりをただすためには、1%の富裕層や大企業のための政治でなく、99%の国民のための政治が求められています。しかし、区長提案の予算は政府に追随し、区民の暮らしに冷たい大企業奉仕の逆立ちした予算であり認められません。
反対理由の第一は 、政府の「アベノミクス」の破たんによる、格差と貧困の拡大、そのしわ寄せを区民に押し付ける下で、政府の悪政から区民の暮らし、福祉を守る予算になっていないことです。
政府は新年度予算でも社会保障費の「自然増」を1400億円削減し、後期高齢者医療の低所得者への保険料軽減措置を50%から20%に縮小しました。そのため区内の高齢者1241人が1人平均で1万円の保険料負担増になり、高齢者の医療費や介護利用料の高額療養費の自己負担限度額の引き上げによる負担増が押し付けられています。また、高すぎる国保料は1人当たり平均保険料が前年度比7252円の値上げで11万8441円に。この5年間の中で金額・率とも最高の値上げ幅です。一方、年金や児童扶養手当、被爆者手当などの支給額は0.1%引き下げられました。収入が増えないのに負担だけが増大する、まさに区民の生存権を脅かす事態です。
区長は福祉予算を増額しているといいますが、2015年度から2016年度まで高齢者福祉の区型介護サービスや寝具乾燥サービスなど3事業を廃止と削減、値上げによる区民負担 増額は約1271万円になります。障がい者福祉 では福祉タクシー券、特定疾病 患者福祉手当,児童発達支援の3事業で同様に区民負担増額は約2億 15万円 、生活保護世帯の冬の見舞金の廃止で約1153万円の負担増で、この6事業だけでも合計2億2439万円の区民福祉の切り捨てです。これらの事業は高齢者、障がい者のにとって人間として生活していくうえで支えとなっていた福祉施策なのです。区長は、高齢者や障がい者に応益負担を求めていますが、福祉に応益負担を押し付けることは生存権を否定するもので認められません。切り下げた福祉事業は復活すべきです。
新年度予算では区民の切実な復活の願いに背を向けるだけでなく、生活保護世帯の夏の見舞金約1100万円を削減、女性の自立と社会参加の向上を図る目的の女性福祉資金貸付制度を申請相談があるにもかかわらず突然廃止したことは認められません。
新年度の認可保育園入園希望者は1981人。昨年度比246人増と大幅に増えており、新年度も待機児解消の見通しはありません。区は、新年度の認可保育園6園、認定子ども園2園の新規開設を行うなど、定数809人を拡大していますが、いずれも民間事業者による運営主体です。いま、保護者や区民は、質の高い保育をもとめています。区立保育園は、障がい児加算や2階加算など、渋谷の保育の質の確保の上で重要な役割を果たしてきました。ところが区は、この間区立保育園5園を廃園にしてきたことは、保護者の願いに背を向けるもので認められません。
北区では、スピード感を持った定数増を進めるために公立保育園で定員増を図っています。区の保育水準を確保するうえで重要な役割を果たしてきた区立保育園を中心に認可保育園を増設し待機児解消を図るべきです。
民間保育士の家賃補助制度は、保育士だけでなく調理、事務職員にも拡大し、保育施設運営のレベルアップを図るべきです。また、賃金の引き上げについても区独自の補助制度を創設すべきです。
子どもの貧困が社会問題になる中、小中学校の給食無償化は、保護者の強い要望であり、そもそも学校給食は、食育として教育の一貫であす。憲法26条は義務教育無償としています。すでに小中学校の給食無償化は、全国で62カ所に拡大しています。千葉県大多喜町では、教育費は増加傾向にある保護者の経済的負担を減らすために無償化に踏みだしています。渋谷区での学校給食無償化に必要な財源は、年間で3億2000万円です。ただちに実施すべきです。
就学援助の入学準備金の入学前支給は、すでに実施している板橋区、世田谷区に続き、港、豊島、足立など、都内でも8自治体に広がっています。全国では既に158自治体が入学前支給を実施しているのです。文科省も中学校に続き、小学校でも前倒し支給を要綱で実施できるよう前向きに検討すると言っています。当区も、保護者負担を解消するために入学前支給を実施すべきです。
子どもの貧困対策を総合的に進めるために、高校生までの医療費無料化や奨学金については給付型の実施を視野に入れ、一定所得以下の場合の返済免除を直ちに実施すべきです。
介護の社会化が求められており、渋谷区の介護保険事業計画の基本理念でも、高齢者の尊厳を守り、渋谷区らしい独自施策の充実が求められています。ところが、区型介護サービスは、昨年に続き新年度もヘルパー派遣や外出介助を1122万円も削減したことは許されません。必要なサービスが安心して受けられるよう独自施策の拡充を図るべきです。また、軽度者への緩和サービスは止めて、国基準の介護報酬と専門職による事業として実施すべきです。
特養老人ホームの待機者は、昨年10月時点で586人に上り年間の入所者数は209人にすぎません。区民からは、「何年待っても入れない」と苦情が寄せられています。来年5月に開設される旧本町東小跡地複合施設が完成しても定員は100名、希望者が全員入れる状況ではありません。区は、高齢者ケアセンターの改築による特養ホーム計画を示しましたが、それでもまだまだ不十分です。早急に、代々木23丁目や神宮前3丁目の国有地などを活用し、特別養護老人ホームやグループホームの増設計画をたて希望者が全員入れるようにすべきです。
いつまでも安心して地域で住み続けられる地域包括ケアの体制整備が求められています。ところが、区が、この間配置されてきた介護予防機能強化支援員を新年度廃止したことは、地域包括ケアを支える体制強化に逆行することで認められません。区内11カ所の地域包括支援センターに専門職である常勤職員を増員して体制強化を図るべきです。
わが党区議団は、格差と貧困の拡大をただすためには、自治体の責任である区民のくらし・福祉を第一にした税金の使い方に転換すれば、学校給食の無償化や高校生までの医療費無料化、75歳以上の住民税非課税世帯の医療費無料化、国保料の負担軽減、小中学校の35人学級の全学級実施など、区民な切実な願いを実現する財源を示し、提案もしてきました。区長は、区民の深刻な生活実態を直視し、自治体本来の責務を果たすべきです。
反対理由の第二は、区は政府の「成長戦略」いわゆる「財界戦略」というべき、「世界で一番企業が活躍できる」都市づくりなど、そのトップランナーとして、自治体の本旨をゆがめ、企業利益を最優先にした予算となっていることです。
5街区すべての開発に東急グループを中心とした大企業がかかわる渋谷駅周辺再開発事業には、新年度、道玄坂一丁目駅前地区再開発に3億4000万円、渋谷駅街区北側自由通路整備事業に4億4000万円、渋谷駅周辺地域交通戦略策定業務に5832万円など、合計9億4956万円余の税金を投入しようとしています。
この開発事業は、財界戦略で進められている「国際戦略特区」や「アジアヘッドクォーター特区」を活用して減税や容積率を緩和させた巨大開発で、外国企業の成長を呼び込み「世界で一番企業が活躍しやすい」国づくりを進めている財界戦略に沿ったものです。この事業を進めるために住民を追い出し、90億円もの区民の税金を投入することは、住民福祉の機関である自治体の役割を投げ捨てるものです。
区庁舎建て替え事業や宮下公園整備事業は、区民の土地を長期にわたって大企業に貸し出し、大企業の利益のために、区民の土地を提供する官民連携手法で進められています。
このやり方は、財界と政府が一体となって進めている「日本再興戦略」で「都市機能を効率的に進める上で、民間にある知恵やノウハウを最大限発揮させることが不可欠」としているとおり、財界の利益を最大限にするための手法です。
庁舎や公園という、区民にとって大切な公共サービスの拠点や憩いの場であるにもかかわらず、区民の声は聞かず、情報提供もされない手法です。しかも、一部の大企業のために、区民の土地を使ってもうけさせることは、住民が主人公である自治体のとるべき手法ではありません。
区は、ICT教育の推進として、新年度、全ての小中学校の子どもたちと職員に、タブレット端末を貸与するとして7億500万円の予算を付けています。今年度、代々木山谷小学校の5年生にモデル実施をしていますが、その検証結果は明らかにされていません。「このまま見切り発車で良いのか」との区民の声が寄せられています。教育委員会定例会でも、「デメリットも示すべき」、「お互いの顔を見て会話ができなくなることがあげられる」、「人間形成がゆがめられないよう紙による教育とのバランスが大事」など、多くの疑問や不安の声が上がっています。すでにモデル実施した荒川区では、多くのトラブルが発生し、タブレットがなくても十分に教育が身につく、として全校児童生徒への貸与を見直しています。
タブレット教育を活用したICT教育には、「画一化が進み、子どもに寄り添う教育が後退」、「子どもの心と体への影響」など、多くの課題が指摘されています。
ICT教育の目的は、安倍政権の新成長戦略の一環で、2020年から世界最高水準のIT利活用社会を実現しようとしています。そのため就学前の子どもから高齢者まで、IT利活用を推進しIT分野に優れた一部のエリートとIT産業の市場づくりに他なりません。
区は、まず子どもの学びと成長を第一に、教師と保護者、専門家、区民で検証すべきで、拙速な導入はやめるべきです。
自治体本来の役割は、住民福祉の増進であり、大企業のもうけのためであってはなりません。憲法と地方自治法の原点に立ち返るべきです。
反対の第3の理由は、不要不急の事業にしがみつき、特定企業や団体に便宜供与をはかる予算となっているからです。
新年度予算でも、伊豆・河津保養所の運営費と施設維持改修費、合わせて1億4826万円余の予算を計上しています。わが党区議団のアンケートでも、区民からは「遠くて不便」、「交通費が高くて利用できない」、「廃止すべき」との声が7割を超えています。今後、宿泊棟の老朽化による大規模な改修等も想定しなければならず、多額の税金の投入が行われることになります。土地購入の不明朗さや多額の税金投入する河津保養所は廃止して、区民のくらしに回すべきです。
区は、土壌汚染がある事を知りながら32億円で購入した幡ヶ谷2丁目の防災公園に、新年度、複合施設(仮称)整備事業として15億4852万円が計上されています。なぜ、土壌汚染があることが分かっていながら購入したのか、なぜ鑑定評価額より2億円も高い価格で購入したのかなど、取得経過も不明朗です。しかも、土壌汚染地下水モニタリング調査は継続中であり、安全が確認されたとは言えません。取得経過の全容を明らかにするとともに、建設工事は中止すべきです。
東急電鉄に旧恵比寿住宅を年間240万円、旧桜丘保育園の土地を年間570万円という10年間格安で貸しています。いま、保育園の待機児童など、喫緊の課題がある中で、区民の財産を破格の安値で企業に貸し出すことはやめるべきです。
また、NPO法人おやじ日本、NPO法人国さて交流学級に、区の施設や神宮前小学校の一部を無償や格安で使用させていることは、区民から便宜提供ではないかとの声が上がっています。神宮前国際交流学級は、今年8月で使用許可をしないという判断をしましたが、区民の財産をいち任意団体に使わせて便宜供与と疑惑を持たれるようなやり方はやめるべきです。
以上、2017年度渋谷区一般会計予算に対する反対討論といたします。
私は、日本共産党渋谷区議団を代表して、議案第20号平成29年度渋谷区国民健康保険事業会計予算、議案第21号同介護保険事業会計予算、議案第22号同後期高齢者医療事業会計予算に、反対する立場で討論します。
まず、国民健康保険事業会計について
2017年度の国民健康保険料は、今年2月末で31.26%の滞納世帯がある中で、平均7252円もの大幅値上げとなり、1人当たりの年間平均保険料は13万276円となります。300万円の給与所得の3人世帯の場合、年額29万8437円の保険料となり、給料の1カ月分以上が徴収されることになります。2月末現在、保険料が払えず窓口で全額医療費を払わなければならない資格証の世帯が34世帯、短期証も522世帯にのぼっています。国民健康保険制度は憲法25条に基づく社会保障制度です。高い国保料を引き下げるために、区は国に対し国庫負担の引き上げを求めるとともに、区独自で保険料の負担軽減を実施すべきです。
次に、介護保険事業会計です。
区は昨年4月から実施した介護予防・日常生活支援総合事業の緩和サービスAは、介護報酬を訪問で8割、通所で7割に引き下げたため、利用者が継続してサービスを受けられなくなったり、通所介護サービスそのものの利用をやめる事態が生まれています。
また、訪問事業所では、資格のない人は雇えないとして、資格のあるヘルパーを派遣しているのが実態です。事業所から、「緩和サービスに従事する場合の賃金は時給932円の最低賃金にせざるを得ない」という話もあります。
このように、介護報酬を引き下げた緩和サービスは、利用者がこれまでどおりのサービスを受けられなくし、介護従事者の処遇を引き下げ、事業所の安定的な運営を困難にするものです。緩和サービスはやめて、国の基準と同じサービスを提供すべきです。
介護保険制度はますます必要なサービスが受けられなくなり、「保険あって介護なし」「国家的詐欺」といわれる制度の大改悪は認められません。
次に、後期高齢者医療事業会計です。
新年度の一人あたりの年間保険料は14万6086円にもなります。75歳以上の高齢者にこのような高い保険料を押し付けているため、滞納者は1月末で793人に上っています。
社会に貢献してきた75歳以上の高齢者だけを別制度に囲み込み2年ごとに保険料が引き上げる制度は、世界に類例のない差別医療制度であり廃止すべきです。そして、75歳以上の非課税の高齢者が安心して医療にかかれるように区として医療費無料化を実施すべきです。
以上で3事業会計予算に反対する討論といたします。