私は日本共産党渋谷区議団を代表して、ただいま議題になりました議案第6号 渋谷区国民健康保険条例の一部を改正する条例について、反対の立場で討論します。
この条例案は、2018年度の国民健康保険料を引き上げるとともに、開始される国保財政の都道府県単位化に合わせて規定整備を行うものです。
反対理由の第1は、2018年度の国保料を14年連続して値上げし、区民のくらしを破壊するものだからです。
条例案では、医療分と支援金分の合計で、均等割が1500円上がって5万1000円に、所得割が0・11%上がって9・54%になり、介護分は所得割が0・24%上がって1・40%になります。また、賦課限度額は、医療分が54万円から58万円に4万円引き上げられます。
その結果、加入者一人当たりの引き上げ額は、医療分と支援金分で3508円、介護分で2633円の値上げとなります。
年収400万円の40代夫婦と子ども二人の世帯の保険料は、1万4155円上がって49万102円となり、実に収入の12.5%にもなる保険料は負担の限界を超え、くらしを壊すものといわざるを得ません。
第2に、保険料を今年だけでなく、今後も値上げし続けるものだからです。
新年度からは、国の制度改定によって、国保の財政運営を東京都が行うことになります。国はこの制度改革にあわせて、区市町村が行なっている国保料を引き下げるための一般会計からの法定外繰り入れを段階的になくすよう求めています。これは制度改定に批判が向かないように初年度の保険料が大きく上がらないようにしながら、今後、毎年の値上げを押しつける国民だましの手法です。
東京23区では、これまで統一保険料方式をとってきました。特別区長会は来年度からの制度改定にあたって、2018年度については統一保険料方式をひきつづき維持するという申し合わせを行い、渋谷区も統一保険料にしました。法定外繰入をすべてなくせば、新年度の保険料は医療分と支援金分で1万1764円、介護分で4895円の大幅な値上げになります。区長会では6年間の激変緩和措置を取りましたが、保険料は今後も毎年値上げが続くことは認められません。
第3に、区の判断で一般会計からの法定外繰入を維持すれば、保険料の引き下げは可能であったのに、それを行わなったからです。
千代田区では、統一保険料方式に参加せず、自治体独自の判断で保険料を引き下げています。
賦課限度額が引き上げられたことで増える保険料ともに、一般会計からの法定外繰り入れを今年度よりも100万円しか減らさなかったことで、医療分、支援金分、介護分のすべてで、均等割、所得割を軽減しています。先ほど示した、年収400万円の40代夫婦と子ども二人の世帯の保険料は、45万9631円で6996円のひきさげとなり、渋谷区の新年度保険料に比べ3万471円も低く抑えています。
そもそも、統一保険料は、23区長の申し合わせ事項にすぎず、これに拘束される必要はありません。保険料の決定は、都道府県の示す標準保険料率を参考にするとされていますが、区市町村が決定する権限を持っています。国も憲法が定める地方自治の原則から、自治体が福祉的施策として行う一般会計からの繰り入れを禁止することはできないということを認めているのです。
渋谷区の国保加入者の所得は、23区の中でも3番目に高く2016年度の法定外繰入は同規模の荒川区の約半分です。私の試算では、今年度の法定外繰り入れ11億6459万円を維持すれば、保険料の引き下げは可能でした。こうした努力もせずに、新年度だけで3億7800万円もの法定外繰入を減らすやり方は認められません。
第4に、保険料の収納率を引き上げ、強制的な徴収を横行させるものだからです。
国の制度改革の中では、新たに保険者となる東京都の国保運営方針により、区市町村に保険料収納率の引き上げを競わせるようになります。すでに東京都では、差し押さえや短期証の交付件数の多い区市町村に財政支援を行う仕組みを作り実施しています。渋谷区の収納率は、2016年度で82.84%でしたが、新年度は83.45%に引き上げます。さらに東京都の国保運営方針では、渋谷区の国保加入者の規模の自治体は、2018年度の目標収納率を88.21%と定め、以後毎年0.91%の収納率引き上げを目標とするよう求めています。
渋谷区では、2016年度の保険料滞納世帯は27.82%にのぼっています。また、今年1月末現在で、794世帯914人が6か月しか使えない短期保険証に、25世帯27人には、いったん窓口で医療費全額を支払わなければならない資格証に切り替えられ、今年度の差し押さえ件数は2016年度の10件から激増し、すでに113件にのぼっています。
収納率を引き上げるために、厳しい生活のなかで保険料を払えない区民を医療から排除することは認められません。
国民健康保険制度は、すべての国民が健康保険制度に加入して、憲法25条の定める生存権を、医療の分野で保障するための制度です。それだけに保険料は、誰もが無理なく払える金額でなくてはなりません。
ところが国は、1984年以降、国保に対する国の責任を大きく後退させ、かつて国保会計の50%あった国庫負担の割合を2014年には20%にまで減らしてきました。医療費が高く所得は低い人が多く加入しているという国民健康保険制度の構造的問題に本格的なメスを入れようとせず、自治体が独自に行っている保険料軽減のための一般会計繰入をなくすことを強要して加入者に痛みを押し付けることは許されません。
日本共産党渋谷区議団は、今定例会に国保加入者生活支援手当条例を提案し、保険料負担が重くのしかかる均等割軽減世帯の今年度の値上げを行わず、さらに均等割の1割分を軽減するとともに、第3子以降の18歳以下の子どもの均等割を免除することを提案しています。
渋谷区として、保険料値上げをやめて軽減するとともに、国に対し、国庫負担を抜本的に高めること、さらに新たに保険者となる東京都に対しても、財政負担の増額と収納率を競わせて強制徴収を強いるやり方をやめるよう求めるべきです。
高い保険料の大本にある国の社会保障費削減をやめ、都と区に対しても保険料軽減の努力を行うことこそ、自治体の役割であること重ねて強調し、本条例案に反対する討論とします。