私は日本共産党渋谷区議団を代表して、議案第20号 平成30年度渋谷区一般会計予算に反対の立場から討論をいたします。
まず、民主主義の根幹にかかわる重大問題として、安倍政権は、森友学園への国有地売却の値引きに関する公文書の改ざんを認めました。このことは、国民と国会を冒涜し、民主主義を破壊する歴史的犯罪事件です。国民の怒りは広がり、世論調査では、安倍総理に責任があると回答したのは65%です。安倍政権は、速やかに、「改ざん事件と森友学園疑惑」の真相解明のため、佐川氏にとどまらず、安倍昭恵氏をはじめ関係者すべての国会証人喚問に応じ、全容を明らかにし、総辞職すべきです。
昨年わが党区議団がおこなった区民への区政アンケートでは、くらしが「苦しくなった、苦しいまま変わらない」と答えた人は、68.5%。70代の方は、「公的年金は全て家賃でなくなり、今の生活をいつまで続けられるかとても心配です」と訴えています。渋谷区で昨年生活保護受給世帯は2894世帯、3219人、就学援助を受けている中学生は3人に1人、国民健康保険料の滞納世帯は約28%となり、依然として深刻な事態がつづいています。
安倍内閣が示した18年度国家予算は、軍事費が5兆円を超え、4年連続で過去最高を更新する一方、国民の命を守る社会保障予算は、自然増分だけでも1300億円を削減しました。その結果、生活保護費の削減、介護保険料、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料の大幅値上げの負担増が区民にも押しつけられようとしています。
ところが、区長提案の予算は、政府の社会保障の切り捨て政策に追随し、区民に負担増と福祉の切り捨てを押し付ける一方で、大企業の儲けを優先する逆立ちした予算であり認められません。
反対理由の第1は、政府の「格差と貧困」の拡大をもたらす予算の下で区民の暮らしと福祉、子育て支援を最優先すべき区の予算が、逆に区民の暮らしを苦しめるものになっているからです。
1点目は、区民に負担増を押し付けていることです。
いま、生存権と個人の尊厳、幸福権など憲法で保障されている社会保障としての国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療事業に対して政治がどういう姿勢で取り組むかが問われています。ところが区は、2018年度、国保、介護、高齢者医療の3つの保険料を同時に値上げしようとしています。国保料は年収400万円の40代夫婦と子ども二人の4人世帯では、1万4,155円の値上げで49万102円になり、年収の12.5%が国保料だけで消えてなくなります。介護保険料は、第7期の基準額は、年額7万1520円と、第6期保険料に比べ3,960円、5.86%の値上げです。後期高齢者医療保険料は、1人当たり15万5329円で、今年度に比べ9,243円の値上げになります。
区民からは、「とんでもない、とても暮らしてゆけない」との声が寄せられています。当然の声です。年金は4年連続で削減され、毎日の食事代を切り詰めて生活しているのが区民の実態です。
政府や区は、社会保障制度の「持続」可能性のためと言いますが、社会保障の向上のために財源を確保するのが政治の責任ではないですか。安倍政権下で社会保障関係費の自然増削減は1兆6千億円以上に上る一方、大企業と富裕層への減税は3年間で4兆円以上となっているのです。当区でも、2018年度の一般会計への繰り入れを、国民健康保険と介護保険合わせて17年度に比べ約6億円削減しながら、区民には負担増を押し付け、一方で渋谷駅周辺再開発には、11億円の税金を投入して、大企業奉仕をしています。さらに862億円もの貯め込みもあります。財源がないわけではありません。
格差と貧困が深刻な中で、大企業優先の予算から区民の暮らしを応援のための予算に抜本的に転換すべきです。そうすれば、わが党が提案している国保料の低所得者や多子世帯、介護保険料・利用料の低所得者への負担軽減、75歳以上の非課税世帯の医療費無料化は、約6億円で実施できます。
2点目は、高齢者、障がい者、生活保護世帯にとって欠かせない、福祉施策の廃止、切り下げが容赦なく行われていることです。
区長就任以来、障がい者の福祉タクシー券の削減、高齢者の区型介護サービス対象者の廃止、削減、生活保護世帯の夏・冬の見舞金の廃止など約2億3000万円以上の福祉施策が切り捨てられてきました。さらに、2018年度では、区型介護サービスの予算が2924万円と、2017年度と比べ、22%の大幅削減。利用要件を改悪し、介護給付限度額を超える利用を認めず、本人負担額の引き上げなどによって、サービス利用を大きく制限してきました。その上、総合事業を行わない事業者には区型サービスを提供させないことは許されません。そもそも区型介護サービスは、高齢者が自立した生活を送れるよう、介護保険で足りない部分を、区が独自の介護サービスを行うもので、区民の声と運動で実現した全国に誇る制度です。これを後退させることは、福祉の増進を本旨とする自治体の責任を投げ出すもので許されません。
福祉タクシー券の利用者からは、「月額1100円の支給額が減らされて、3500円では、月2回通院するのにタクシー代の持ち出しが大きい」と訴え、生活保護世帯からは「見舞金は、冷暖房の光熱費に充てていたのに」と区の冷たさに怒っています。
福祉施策の切り捨てが当事者の尊厳を傷つけるものであり認められません。元に戻すべきです。
特別養護老人ホームの待機者は、昨年10月現在で461人と依然深刻です。2018年度から、つばめの里・本町東に100床が開設され、2021年度高齢者ケアセンター跡地複合施設に84床が計画されていますが、これだけでは待機者は解消できません。家族介護の負担を一刻も早く軽減するために、代々木2・3丁目の国有地の早期取得、その他の国有地・都有地の活用で、早期に待機者をゼロにすべきです。
3点目は、子育て支援が不十分なことです。
保育園の待機児童の解消に向けて取り組まれていることは一定前進していることは認めます。しかし、2018年度の認可保育園入園希望者は 申し込み数1856人の中で、第一次希望の待機児となった子どもは648人です。「このままでは、仕事をやめざるをえない」といった声があふれています。待機児解消は、子どもの発達と安全を守る上からも、保育の量と質の両面から保証できる区立保育園の増設を中心に行うべきです。渋谷の保育の中核を担っている区立保育園は守らなければなりません。渋谷保育園と笹塚第二保育園を区立保育園として存続させるべきです。
保育の必要な全ての子どもに良好な保育を保障するために、区の公共施設、国や都有地の活用や都の制度も活用して民有地の借り上げを行うなど、認可保育園の増設で待機児ゼロを早期に実現すべきです。
保育士は、子どもの育ちに責任を負う専門職であり、処遇改善は待ったなしの課題です。しかし、2016年度の国の調査では民間保育士の賃金は全労働者の平均より月額約11万円低く、昨年平均は21万5800円であり、政府が、2017年度に保育士の賃金を6000円程度引き上げ、経験をつんだ保育士・職員については4万円の給与改善を行い、東京都もキャリアアップ補助などを行っていますが極めて不十分であり、依然として全産業平均を大きく下回ったままです。
当区では、宿舎借り上げ事業を行っていますが、区内在住限定など条件があります。国や都は、保育士の処遇改善のために抜本的な予算の増額が求められています。区としても、保育士の処遇改善のために、独自に賃金上乗せをすべきです。
新年度の給食費は小学生の平均49698円、中学生で61824円と重い保護者負担となっており、2億7千万円で実現が可能な給食費の無償化に踏み切るべきです。また、高校生までの医療費無料化を実施するべきです。
いじめや不登校、教師の多忙化を解消し、一人一人の子どもの成長に寄り添えるよう教員を加配し、35人学級に踏み出すべきです。
子どもの貧困の問題は深刻な社会問題です。就学援助の新入学学用品費の単価を国の要保護基準同様に引き上げるとともに、小学生の入学前支給を早急に実現させるべきです。さらに就学援助の対象を要保護基準の1.5倍に拡大して、経済的支援を強化し、子どもの貧困対策に正面から取り組むべきです。
反対理由の第2は、自治体の本旨である住民福祉の向上、住民が主人公を歪め、公共財産等を大企業に提供するなど、大企業の利益と大型再開発を優先し、推進する予算になっているからです。
区が設立する一般社団法人渋谷未来デザインは、「基本構想」を推進し具体化するシンクタンクの役割を果たすため、産官学民連携を促進し、公共空間の新しい活用を推進するなどを目的に、これらの民間企業に公共財産などを活用させ儲けを上げさせるための組織です。
実際、渋谷未来デザインは、法人パートナーとして参加を予定しているNTTドコモ、東急電鉄、日建設計、みずほ銀行、京王電鉄など株式会社10社以上を協業パートナーと位置づけ、これらの企業が1000万円ずつ支出し、協働により事業を行う場合は、これらのパートナー企業と優先的に行わせ、利益をあげさせることを保障しています。
一方、渋谷区は法人設立に当たって7000万円の拠出金だけでなく事務局として4人の職員派遣を提案しその人件費まで税金で賄おうとしていますが、区民に全く説明はなく、議会のチェックも全くできないしくみです。また法人が実施する事業は、企業の利益のために公共財産をどのように活用するのかとの視点で進められ、自治体本来の目的である区民の福祉の増進と区民のくらしは全く度外視されています。
「産官学民連携事業」を全区的に拡大し、区民の共有財産とその運営、区民と地域が作り上げてきた街を大企業の儲けのために提供することは、地方自治体の本来の役割を投げ捨てることで認められません。
宮下公園整備の予算として、合計5259万円が計上されています。公園維持管理費は、三井不動産の18階建てのホテルを建てるために、三井不動産への便宜を図るものです。
三井不動産は今年1月に事前に近隣のみに配布した説明会の案内を持参しなければ入場さえ認めないという区民排除の説明会を行い、区はこれを容認するなど、この手法が区民参加を保障できない手法であることは明らかです。
三井不動産の利益のために、区民の憩いの場である公園を、三井不動産に34年以上貸し出し、商業施設やホテルでもうけさせる手法はやめて、宮下公園整備は区民や専門家の参加の検討会を設置すべきです。
区は「新宮下公園等整備事業は、渋谷区が今後、推進する公園に関する⺠間企業との連携事業第一弾となる」として、民間企業による公園整備をさらに拡大し、昨年は神泉児童遊園地を民間事業者により改修させましたが、隣接する東急グループが所有するホテルの前庭のように使えるようにしています。結局、民間資金による公園整備は、区民不在で貴重な共有財産である公園を大企業の利益のために差し出すことで、認められません。
総額90億円の区民の税金を投入して、東急グループなどのための渋谷駅周辺再開発事業には、道玄坂1丁目駅前地区市街地再開発事業に7億7480万円など、2018年度は11億円を超える開発のための税金投入を予定しています。住民の暮らしを守ることが第一の自治体として、大企業中心の再開発への税金投入はやめ、区民のくらし・福祉を優先させるべきです。
反対理由の第3は、不要不急の事業に固執し、特定企業や団体に便宜供与をする予算となっているからです。
第二の保養所、河津さくらの里しぶやに、2018年度は、1億8902万円が計上されています。そもそも区民要望もない中で耐震診断も行わず取得を強行したことが大問題です。この間も耐震強度不足の東館の建替えなど多額の改修費が毎年のようにつぎ込まれてきましたが、今後もさらに莫大な改修費などに税金が投入されることになります。
2016年度の年間利用者数は9244人で、監査報告の中でも利用率の低さが指摘されています。今年度の1月までの利用者数は前年度を下回っており、「遠くて不便」「交通費が高くて利用できない」と区民からの声が多く、わが党の区政アンケートでは7割が「廃止すべき」と回答しています。河津さくらの里しぶやは廃止すべきです。
また東急電鉄に、旧恵比寿住宅を年間240万円、旧桜ケ丘保育園の土地を年間570万円という格安で5年更新で貸しています。区民の財産を破格の安値で企業に貸し出すことはやめるべきです。
また、NPO法人おやじ日本に区施設を無償で提供していることは、区民の財産を一任意団体に使わせて、便宜供与と疑惑をもたれるようなやり方はやめるべきです。
以上、2018年度渋谷区一般会計予算に反対する討論とします。
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私は日本共産党渋谷区議団を代表して、議案第21号平成30年度渋谷区国民健康保険事業会計予算、議案第22号、同介護保険事業会計予算、議案第23号、同後期高齢者医療事業会計予算に反対する立場から討論いたします。
まず、国民健康保険事業会計です。
2018年度の国民健康保険は、都道府県が財政運営の責任主体となる新制度の下での保険料改定です。しかし、区民の生活を圧迫する高い保険料、値上げを繰り返す国保の構造問題は何ら解決しないばかりか、さらなる負担増と徴収強化を迫るものとなっていることは認められません。
2018年度の保険料は14年連続の値上げで、今年度と比較して一人当たり、医療分と後期高齢者支援金分の合計で3,508円、介護分で2,633円の値上げとなり、区民のくらしを破壊するものであり認められません。
また、国は一般会計からの繰り入れをなくすことを求めており、毎年、繰り入れを減らせば、今後6年間にわたって保険料が上がり続けることになります。
千代田区で来年度保険料の値下げしたように、保険料の決定は区独自でできるにもかかわらず、法定外繰り入れを3億7800万円削減し、保険料を値上げしたことは許されません。国と都に対して、財政負担の引き上げを求めるとともに、区として一般財源を投入して、保険料の引き上げはやめるべきです。
そのうえ、保険料の強制的な徴収をすすめ、未納者に対して、資格証などを交付して保健所を取り上げることは許されません。
憲法25条に定める社会保障と指定の国民健康保険制度の本旨に反する予算は認められません。
次に、介護保険事業会計についてです。
2018年度から3カ年の第7期保険料基準額は、年額7万1520円と、第6期保険料に比べ3,960円5.86%の値上げしたことは認められません。
また、緩和サービスAの導入によって、実際には資格を持ったヘルパーが、安い単価で担わざるを得ず、そのしわ寄せは介護事業所の経営困難をもたらし、利用者のサービスが継続できない事態が起こっています。緩和サービスAは中止し、国基準で実施すべきです。
地域包括ケアの中核となる11か所の地域包括支援センターをすべて拠点センターとして位置づけ、区が責任をもって、医療・福祉・介護のネットワークを構築するために専門職員を増員し、無差別・平等の地域包括ケアを実現すべきです。
最後に、後期高齢者医療事業会計です。
2018年度は保険料の改定が行われ、均等割が900円上がって43300円になり、所得割率は8.80%に0.27%引き下げられましたが、賦課限度額が5万円上がって62万円となったため、当区では1人当たりの年間保険料は15万5329円で、今年度に比べ9,243円の値上げになります。国は今年度から低所得者対策として行ってきた所得割の保険料軽減措置を廃止し、責任を後退させています。
所得が低く給付の多い75歳以上の高齢者だけを囲い込む後期高齢者医療制度は、世界に類のない差別医療であり、廃止すべきです
以上、3事業会計予算に反対する討論とします。