2018年第3回区議会定例会・決算特別委員会で、トマ孝二区議会議員が、決算特別委員会で、平成29年度渋谷区一般会計、同国民健康保険事業会計など3会計決算に反対する討論を行いました。
私は、日本共産党渋谷区議団を代表して、ただいま議題となりました認定第1号・平成29年度渋谷区一般会計・認定第2号・同国民健康保険事業会計、認定第3号・同介護保険事業会計、認定第4号・同後期高齢者医療事業会計の各歳入歳出決算について、反対の立場から討論いたします。
日本共産党渋谷区議団は、平成29年度の予算編成にあたり、長谷部区長に対し、区民生活が困難な時だからこそ、区民の声に耳を傾け、暮らしを応援し、福祉を優先する自治体本来の役割の発揮を求めました。
しかし、区長は東急などの大企業のための渋谷駅周辺再開発、庁舎建て替え、宮下公園の再整備など、大企業優先の施策を推進する一方、13年連続で国民健康保険料を引き上げるなど、福祉施策を後退させたことは認められません。
以下、各部ごとに指摘していきます。
【経営企画部】
基本構想推進事業費として8169万円が全額、電通東日本への委託料として執行されました。内訳はAI「渋谷みらい」に3865万円、年末カウントダウンと盆踊りに1008万円などです。
とりわけ、基本構想をPRするとして年末カウントダウンを利用したわずか30分のイベントに864万円余を支出し、さらにカウントダウンには一般職員74人が動員され職員の人件費から158万円が支出されています。
自治体としての渋谷区の役割は、区民の暮らしと福祉の向上であり、基本構想についてもこのことを中心の柱として、全区民を主役としてすえるべきであるにもかかわらず推進事業として実施されたのはAI、専用サイト、ワークショップ、カウントダウンなどへの多額の税金投入であり認められません。
新庁舎等整備事業費として、仮庁舎のリース代4億5664万円と新庁舎整備事業に1億7640万円の合計6億3304万9874円を執行しています。
また、庁舎等整備事業に支出した金額は、25年度から29年度までで総額34億1021万9100円もの多額の税金投入となっており、前区長の「渋谷区役所はタダで建てる」との言葉はまったく事実無根であると言わざるを得ません。
H29年度の新庁舎整備事業は、予算を上回る執行となっていますが、これは予算に見込んでいなかったガイドサイン計画業務委託を㈱日本設計に770万円で追加委託したためであることが明らかになり、今年6月に実施された入札の不透明性にかかわる重大な問題です。
さらに、29年度の決算審査の中で、データ改ざんが発覚したカヤバの免震装置が新庁舎に採用されていたことが明らかになりましたが、新庁舎は区が直接建設していないため、その実態についても対策についても三井不動産の調査を待たなければならないという重大な問題であることを合わせて指摘するものです。
【総務部】
公契約条例にかかわる29年度労働報酬審議会の予算は、4回分36万円が計上されていましたが、執行は下限額を決定した、たった1回の開催に留まっており、実態把握はされていません。実際、29年度改修工事が行われた代々木八幡区民施設では、27人の労働者にアンケートをした結果、労働報酬下限額を上回った労働者はたった3人で、8割以上の24人は下限額を下回っていたことが明らかになりました。公契約にかかわる事業に従事したすべての労働者の賃金が確実に労働報酬下限額を下回らないよう請負業者から賃金台帳を提示させるよう改善すべきです。
【危機管理対策部】
災害対策として、防災計画策定3ケ年計画の2年目として1833万円が支出されていますが、この間の地震、集中豪雨、猛暑、台風など自然災害による被害は想定を超える甚大なものとなっています。
防災計画は、こうした実態を踏まえ、何よりも区民の命と財産を守る立場から予防に重点を置き、地震でも燃えない、倒れない家屋と地域環境を目指す対策を第一に抜本的に見直すべきです。
29年度の執行の中で、帰宅困難者対策費として2893万円が支出されていますが、アート性を求めキャストなどの矢印に多額の税金を投入するやり方は見直すべきです。
区民部
●河津さくらの里しぶやは、指定管理料を含む運営費として1億2191万円、改修工事費として2283万円など、総額で1億4714万3690円が支出されました。年間利用者は8837人で利用率も63%と前年度を下回り、二の平渋谷荘の93%と比較しても著しく低くなっています。「区民からも遠くて不便、二か所も保養所はいらない
などの声が上がっている施設に、毎年1億円を超える運営費と、老朽化した施設の維持改修に数千万円の経費をかけることは税金の無駄遣いであり、廃止すべきです。
都市整備部
●渋谷駅周辺整備調整事業には7つの事業で4億7266万円が支出されましたが、渋谷駅北口自由通路整備事業が3億1300
円とその多くを占めています。また、市街地再開発事業として、繰越明許となっていた道玄坂1丁目地区の再開発に1160万円が支出されました。渋谷駅北口自由通路には、2026年度までに総額で40億円程度が投入される予定です。道玄坂1丁目地区の市街地再開発事業には2019年度までに20億円の補助総額となります。さらに桜丘口地区第一種市街地再開発事業に80億円、南口北側自由通路に20億円など区と国の補助金総額は160億円が投入されます。東急グループをはじめ、大企業中心の渋谷駅周辺再開発事業への税金投入は中止すべきです。
また、渋谷駅周辺整備事業の中で、渋谷未来デザイン会議設立業務として、全額日建設計への委託費で6117万円が支出されました。2018年4月に一般社団法人として設立された渋谷未来デザインは、渋谷駅周辺だけでなく区内全域を出資した大企業の儲けの場にして、区の資産を活用した事業などを優先的に請け負わせ、大儲けさせる組織です。このような税金投入は、特定の企業をもうけさせるもので認められません。
土木部
●宮下公園整備事業は、6月22日に三井不動産と借地料を235億2100万円とする定期借地契約が結ばれました。区は定期借地料の鑑定以降の二年間に路線価が24%も上昇し、ホテルの鑑定も行わず、借地料が大幅に安いことを知りながら、再鑑定もせず、議会に報告せず、議決もないまま契約を結びました。今年になって党区議団が行った、契約時の路線価や18階建てのホテルを含む施設計画を前提とした鑑定との比較では、区が契約した定期借地料が190億円も安いことが判明しました。決算審議でも路線価の上昇を考慮せず、ホテルを前提としていない鑑定のまま、なぜ契約したのかについては一切答えませんでした。
決算では新宮下公園整備費とし総合事業支援業務委託としてURリンケージへの委託料2252万円が執行されました。また、当初予算にはなかったホームレスの追い出しなどのために、総額5652万1755円を予備費を流用して支出したことは認められません。
新宮下公園整備計画は、区民不在で三井不動産の利益のために34年8カ月もの間、公園用地を自由に使わせ、3層の商業ビルと18階建てのホテル開設で大儲けをさせる計画であり、区民の財産を特定の大企業に差し出すことは認められません。新宮下公園整備計画は区民参加のもとで一から検討し直すべきです。
●区立神泉児童遊園地の改修は、民間資金による公園整備手法を使い、事前に区民への説明も周知もないまま進められました。公園と隣接のホテルとの間にはいまだにフェンスも設置されず、ホテルの前庭のようにして使用することも可能になっています。子どもの遊び場、区民の憩いの場となっている公園整備の費用を民間事業者に持たせることと引き換えに、事業者に都合の良いように整備させることは、認められません。
【子ども家庭部】
認可保育園のH29年10月時点での待機児は375人、H30年10月で267人と、待機児解消は依然として喫緊の課題です。区立保育園は渋谷の保育の質をリードする存在であり、ベテランの経験の蓄積を若手に受け継ぐ施設で区の財産ともいえます。H29年度は、待機児解消に向け前進した年でしたが、区立保育園の設置はありませんでした。待機児ゼロをかかげ、区立保育園を中心に認可保育園を増設すべきです。
民間保育施設の職員は、他業種よりも賃金が低いと言われ、処遇改善がいくつか行われましたが、宿舎借り上げ支援事業は対象が、区内在住の保育士・看護士のみと限定されています。対象を拡げるとともに、全保育士の賃金引き上げのために区としても補助すべきです。
子ども医療費の無料化は、のべ2万3597人が利活用しましたが、現在、中学生までです。高校生は怪我をする割合が高く、都の調査でも医療費の負担が出来ないことから治療を見送った高校生がいることが明らかになっています。千代田区、北区同様に医療費無料化を高校生まで拡大し、子育て世帯を支援すべきです。
【教育振興部】
学校給食について。義務教育は無償が原則で、食育でもある学校給食の費用が無償化されていません。現在、一部実施を含め144の自治体で無償化が行われています。給食費の無償化を行い、保護者の経済的負担軽減を行うとともに、子どもたちの食育を充実させるべきです。
教員が生徒一人ひとりに寄り添う教育は、人格の育成を育む役割である学校教育の根幹です。29年度は小中学校で、6人の増員で35人学級の実現が可能でした。教員の増員を都に求めるとともに区独自に教員を加配し、35人学級を早急に実現すべきです。
【生涯学習・スポーツ振興部】
西原スポーツセンターは、渋谷区のスポーツを通じた社会教育の場です。H29年度は、個人・団体合わせてのべ37万2千人の利用がありました。自治体の役割は、区民の健康増進であり、その上でも当施設はとても重要な施設です。ところがH30年度、指定管理者による運営に変わり、有料講座が増えました。民間任せになると採算重視のプログラムが中心となります。参加人数の多い少ないに関係なく高齢者や障がい者、誰もが気軽に安価で楽しめる教室やプログラムを実施する、健康増進のための施設にするためにも直営に戻すべきです。
【福祉部】
区型介護サービスは、29年度3億5091万円もの不用額を出しています。区が27年度から単価を引き下げ、さらに緩和サービスAに置き換えたために、利用数が激減しています。時間延長サービスは、26年度10585件が29年度は65%、高齢者世帯援助は4226件が51%など軒並み減少しています。
質の確保された介護サービスを提供し、介護事業所や従事者を守るためにも、26年度以前の単価に戻すべきです。
今年4月の特別養護老人ホームの待機者は434人で、つばめの里・本町東が開設されましたが、10月の待機者は442人と増えています。平成32年には、高齢者ケアセンター跡地に84床が増設されますが、待機者は解消できません。待機者ゼロの目標を明確にして、代々木2・3丁目国有地、幡ヶ谷2丁目都営住宅跡地など、国有地・都有地を早急に取得して、増設すべきです。
障がい者の社会参加をはじめ、病院への通院などに活用されてきた福祉タクシー券が27年度から月額4600円だった支給額が、1100円引き下げられ、3500円とされました。障がい者のくらしを守る大切な制度を安心して利用できるよう利用料を4600円に戻すべきです。
また、多くの区で精神障がい者福祉手当が支給され始め、東京都も、今年度から精神障がい者の医療費無料化に踏み出すことを決めています。障がい者団体からも実現が求められており、早急に実施すべきです。
ギリギリの生活をしている生活保護世帯に対する冬の見舞金4000円を、平成28年度に廃止したのに続いて、この年度は2883世帯に支給されていた夏の見舞金も廃止したことは、区民福祉の増進に背を向けることで認めせれません。
夏冬の見舞金は、2300万円余で復活できます。国が扶助費を今後6年間で6%も削減しようとしている中で、低所得で暮らす区民のくらしを守るために復活すべきです。
【健康推進部】
平成29年度は、がんによって死亡した区民は467人と死亡原因の1位であり、がん検診の受診率の向上が求められます。受診機会を増やすため、身近な医療機関で検診が受けられるよう拡大すべきです。また前立腺がんも対象にすべきです。
28年度の場合、要精密検査が求められた597人の内、実際に検査したのは463人であり、要精密者全員が再検査を受けることが求められています。要精密者全員が安心して再検査が受けられるよう再検査を無料にすべきです。
この年度、民泊条例制定の準備のため、民泊のあり方検討会が設置され、12万2500円が執行されました。条例制定前、区内3000軒ともいわれた民泊は、今年9月現在、届出は395件であり、多くの違法、脱法民泊が存在していますが、対応は困難です。そもそも文教地区や木造密集地域での民泊営業は認めるべきではありませんでした。
国民健康保険事業会計。
29年度の国民健康保険料は13年連続の引き上げで、1人当たりの年間保険料は介護分を含めて15万2345円となり、7313円の負担増となりました。40代の子ども2人の4人世帯では、年収500万円以下の場合、収入の1割を超える保険料となっています。その一方で、区の一般会計からの繰り入れは、11億7073万6千円の予算をたてながら、7億7161万円余が執行されず、保険料軽減に有効に活用されていません。区として子どもの均等割軽減を実施するなど、加入者が無理なく払える保険料に引き下げ、低所得者の申請減免の収入基準を引き上げるよう特別区長会で主張すべきです。また、国保の責任を後退させてきた国や都に公費負担を増やすよう求めるべきです。
この年度は徴収が格段に強化され、前年度と比較すると、短期証発行が733人から931人に、いったん窓口で全額を支払わなければならない資格証明書の発行は33人から57人へと増え、差し押さえは10件から150件に急増しました。高い保険料を押し付け、強制的に取り立てることは認められません。
【介護保険事業会計】
平成29年度から要支援者の介護サービスを介護保険からはずして、自治体任せの総合事業が本格実施となりました。その結果、総合事業の予防訪問介護は、15,269件、予防通所介護は、9,868件となりました。
しかし、総合事業の緩和サービスAの介護報酬は、訪問介護で約2割、通所介護で約3割も国基準サービスより引き下げられているのに、資格のあるヘルパーが担っているために、緩和サービスAに置き換えられた介護報酬の減額分は、すべて介護事業者に押し付けられ経営を困難にしています。
緩和サービスは止めて、要支援者の介護サービスの報酬を国基準に戻すべきです。
平成29年度の普通徴収の保険料の滞納者は、1,472人と普通徴収者の約2割に上っており、高齢者に重い負担となっています。平成29年度の介護保険給付費の執行率は90.33%、不用額は12億円以上となり、介護保険事業会計の繰越は6億8638万円余となりました。高齢者のくらしを守るために、介護保険料の負担軽減を拡大すべきでした。
後期高齢者医療事業会計
29年度の保険料は、国の制度改悪により、保険料特例軽減の見直しが行われ、元被扶養者の9割軽減が7割に縮小され、20万円以下の所得割軽減も5割から2割に引き下げられたことにより保険料が引き上げられました。また、給付でも、8月から高額医療費の負担限度額が引き上げられ、窓口負担増が押し付けられました。
そもそも、医療費が多くかかる75歳以上の高齢者だけを他の医療保険から離脱させて強制的に囲い込み、高い保険料を押し付ける制度自体が社会保障の理念に反するものです。この制度は廃止してもとの老人医療制度に戻すべきです。