第3回区議会定例会、最終本会議で、秋元ひでゆき議員が行った、「渋谷区立校外学園条例を廃止する条例」に対する反対討論を行いました。
議案第62号 渋谷区立校外学園条例を廃止する条例につきまして、私は日本共産党を代表し反対の立場から討論をいたします。
反対の理由は、富山臨海学園、山中高原学園の2施設を明確な理由を表面化させずに廃止決定がなされ、それは当区のこれまでの校外学習の歴史や伝統を否定し、学校教育としての責任、社会教育の責任を放棄することになるからです。
当区の臨海学園の歴史は、昭和14年から始まっています。戦争による中断はありましたが、昭和25年に大蔵省からの払い下げにより取得した土地で岩井臨海学園を開始、その後昭和30年から富山臨海学園として実施しており、昭和39年にはぜんそく等の小学生を対象にした富山健康学園を開始しています。
この68年という時間の中で、毎年多くの子どもたちが臨海学園を体験し、H29年度には区内全18校、904人の生徒が自然に恵まれた、貴重な海の資源の環境の中で、健全な心身の育成をはかり、集団的宿泊生活を行いました。
山中高原学園も、昭和31年から始まった長い歴史と伝統をもつ、自然あふれる区の貴重な山の資源です。子どもたちの感想文を読めば、いかにこの施設での校外学習が実りあるものかが理解できます。「きれいな富士山をみることができ、風穴見学やキャンプファイアーなど元気いっぱい活動し、山中湖の大自然を思いっきり味わうことができました。」
「酪農体験でのバターづくりと富士山レーダードームで非日常の体験ができました。ぶどうを一年間は食べなくても良いくらい食べた。山中で学んだことを学校生活に生かしたい」と子どもたちは感想を述べています。
昨年度は、1596人の子どもたちが大自然の中、移動教室や宿泊訓練を行いました。
私がこの2施設について、廃止の計画があることを知ったのは今年2月に、文教委員会で取り上げられた「宿泊的行事の見直し」の報告と予算審議の段階です。そこには、今後始まる新学習指導要綱を実施する上で、校外学習を行う小中学校の宿泊行事の対象の中に、この2施設が含まれていませんでした。
その報告の中で、主に3点、宿泊的行事の課題が載せられていました。特に若い教員の指導力不足、荒天時のプログラム実施、今後重視する教育目的であるアクティブラーニングとの関連性についてです。
この3点、どれもが2施設の廃止とは結びつかず、廃止の理由とはなりません。
1点目の教員の指導力不足については、この長い年月の中でむしろ、管理者、ベテラン教員、地元協力者が経験の蓄積と努力で伝統を築きあげてきたのではないでしょうか。若い教員のフォローは、外部指導員の補助をつけたり、研修を行うなどで可能であり、何ひとつ見直しの理由にはなりません。2点目の荒天時のプログラムに関しても、経験や協力を生かし実施されており、子どもたちや保護者からの不満は耳に届いてはいません。
山中移動教室の体験についてある小学校教員は、学校便りで「自分で課題を見つけて解決すること、自然から何かを発見すること、集団生活の中で協力することなどは、これからの生活でも大切にしてほしいことです」と、感想を述べています。これはまさに、アクティブラーニングは常日頃、渋谷区の教育の現場ではすでに実行されていることを証明しているのではないでしょうか。
こうしたことから、文教委員会での集団宿泊的事業の見直しと今回の2施設の廃止とはなんら結びつかず、教育現場から廃止の声は出ていないため、廃止の理由にはあたりません。
代替施設とする施設が提案されていますが、妙高に海は無いなどの理由のほか、現状の提案のままでは区内の子どもたちが優先される保証は無く、体験できるオプションの中身、料金もまだ決まっていないため、保護者負担が今以上にかかるか否かの検討もできていない段階で廃止する計画だけが先行することは、保護者に対し、あまりに無責任です。
さらに、これまで2施設は子どもたちや保護者だけではなく、社会教育施設としても多くの区民、団体が利用してきました。代替施設として提案された施設は直営ではないので、当然、一般利用はできません。これは、区の社会教育の機会を奪うものであり、社会教育の責任すら放棄するものです。
施設の安全性についても確認したところ、富山臨海学園は、海に近い施設ですが、千葉県が元禄時代の大津波などを想定して作ったハザードマップをみても、高波2メートルのエリアにも入っておらず、設置自治体の南房総市からは近接する介護施設とともに、特段危険性の指摘は出ていません。自然災害時は、近くの高台にある練馬区の施設を一時避難所とし、さらに高台の避難ビルが避難所として指定されています。
そして、議案書には、廃止の理由は何一つ触れられておらず、委員会審議でも廃止についての明確な説明はありませんでした。明確な理由も無いまま2施設を廃止することは区民の多数が納得できません。そうしたことから、採算や効率化の元に廃止を決定したとの推測は容易に立つはずです。そうであれば、なおさら許されることではありません。社会教育施設は、子どもや保護者の目線に立ち、広く意見を聞きながら慎重に検討すべきです。
これまで半世紀以上にわたり、多くの先人の努力や工夫で渋谷の校外学習の歴史と伝統を築き上げ、区民の大事な思い出が詰まった富山臨海学園、山中高原学園を廃止することは、また一つ、大きな渋谷の財産を無くすことであり、許されない。と最後に申しあげまして反対討論を終わります。