第3回区議会定例会、最終本会議で、すがの茂団長が、平成29年度渋谷区一般会計、同国民健康保険事業会計など3会計決算に反対する討論を行いました。
私は日本共産党渋谷区議団を代表して、認定第1号2017年度渋谷区一般会計歳入歳出決算に反対の立場から討論いたします。
安倍政権の経済政策によって格差と貧困はますます拡大し、一部の富裕層と大企業は史上空前の儲けをあげ、大企業の内部留保は425兆円を超えています。一方実質賃金は年換算で18万円も下がり、個人消費も減少し、年収200万円以下のワーキングプア層は1132万人にのぼっています。その上、社会保障費の「自然増」削減はこの間合計3兆3千億円にのぼり、医療費負担増、年金削減、介護サービス取り上げ、生活保護切り下げなど国民の生存権を脅かし、将来不安を増大させ、ここでも格差と貧困を拡大させるものであり、許されません。
こうした悪政のもとで区民の暮らしは深刻です。区内では、2017年1年間の中小企業の倒産が113件、その失業者は767人、生活保護は2,909世帯3、238人国民健康保険料の滞納世帯は26%、就学援助の認定者は、中学生で30.3%、課税所得200万円以下の人は42%にのぼるなど依然、深刻な事態が続いています。
党区議団が、2017年にとりくんだ「区政とくらしアンケート」では、くらしが「悪くなった」「悪いままで変わらない」が62%を超えており、「子どもの教育費、親の介護、自分の老後、すべてが不安」など、区民の切実な声が多数寄せられました。区長は区民に寄り添うべきです。 2017年度決算はそうなっていないため認められません。
反対理由の第1は、憲法の生存権、個人の尊厳など生かさず、自治体の役割を放棄し、政府の悪政から区民の暮らし、福祉、教育、子育てを守る決算になっていないからです。
区長は、就任後、全国でも優れた区型介護サービスと障害者福祉タクシー券を削減し、生活保護世帯の冬の見舞金を廃止するなど、2015年度だけでも、約2億2439万円の福祉を切り捨ててきました。
区型介護サービスは、介護保険制度で不足しているサービスを区独自で上乗せし、区民の自立を支えてきました。
ところが区は、この事業を緩和サービスAに置き換え、利用上限を超えた人は対象外にしたため、2017年度の時間延長は2014年度に比べ65%も減少、高齢者世帯援助は51%も減少させました。2017年度決算では、前年度より2000万円も削減し、3億5091万円もの不用額を出したことは認められません。
次に、特別養護老人ホームの増設です。
政府は介護離職者ゼロ掲げていますが、介護離職者は10万人に上る深刻な事態です。
本区の今年4月の特別養護老人ホームの待機者は434人で、つばめの里・本町東が開設されましたが、10月の待機者は442人と増えています。要介護4の母親を介護する家族からは、「兄弟が仕事を休み順番に介護しているがもう限界」との声が寄せられています。2021年に、高齢者ケアセンター跡地に84床が増設される予定されていますが、待機者は解消できません。代々木2・3丁目国有地、幡ヶ谷2丁目都営住宅跡地など、国有地・都有地を早急に取得するとともに、ケアコミュニティ原宿の丘など区有施設を活用して、増設すべきです。
次に、生活保護についてです。
今、国や自治体に求められていることは、貧困と格差の克服です。国は、2013年に最大10%の生活扶助基準を引き下げ、さらに今回最大5%引き下げるという貧困打開に逆行し、憲法25条の生存権を保障する姿勢すらないのです。区長は、国に対して生活保護基準削減をやめ、基準額を引き上げるよう求めるべきです。
区は、生活保護世帯に対する4000円の見舞金を、冬に続き夏も廃止しました。これによる影響を受けた世帯は2883世帯に上ります。これまでも低い生活保護費を補うため区独自の施策である夏、冬の見舞金制度は、健康で文化的な最低限度の生活を営む上で重要な施策です。特に、近年の猛暑により生命を脅かす危険があるわけですから,クーラーなどの光熱水費としても支援すべきです。夏冬の見舞金は、2300万円余で復活できます。低所得で暮らす区民のくらしを守るために復活すべきです。
さらに、この間削減した障害者の福祉タクシー券を4600円に戻すとともに、廃止した特定疾病患者福祉手当などを復活し、精神障害者の福祉手当を実施すべきです。
次に、子育て支援です。2017年度、区は保育園の定数を809人拡大し、認可保育園6園、認定こども園1園を開設するなど前進面は評価しますが、待機児は今年の10月で267人と依然として解消していません。
今、区民が求めているのは質の高い保育です。ところがこの間の拡大はいずれも民間業者によるものです。区立保育園は保育士の障がいじ児加算や2階加算など渋谷の保育の質をリードする役割を果たしています。また正規の保育士確保も安定しています。北区では、区立保育園の増設がスピード感を持って対応でき、かつ保育士確保でも応募は定数の5倍に及んでいるのです。区はこの間、区立保育園を5園廃園してきたことは区民の願いに反するものです。待機児解消は、区立保育園を中心に認可保育園の増設でゼロを早期に実現すべきです。また私立保育園などとの公私格差を是正し、区独自に賃金引き上げの補助制度を実施するとともに、家賃補助制度の対象を拡大すべきです。
次に 子ども医療費の無料化拡大について。中学生まで、のべ2万3597人が活用しています。区民からは、高校生までの拡大の声が強く上がっています。現在、全国で高校生まで無料化している自治体は、378自治体、都内では、千代田区、北区などで実施しています。高校生は怪我をする割合が高く、都の調査でも医療費の負担が出来ないことから治療を見送った高校生がいることが明らかになっています。当区では、8000万円で実施できます。高校生までの医療費無料化を実施すべきです。
次に、 学校給食について。当区の学校給食費は、小学生が平均年額4万9000円、中学生が6万2000円であり、教育費の中でも大きな負担となっています。給食、食育が知育、徳育、体育の基礎をなすとされています。義務教育は無償が原則です、現在、一部実施を含め144の自治体で無償化が行われています。3億4000万円で実施できます。給食費の無償化を行い、保護者の経済的負担軽減を行うとともに、子どもたちの食育を充実させるべきです。
当区には区民の福祉増進させる財源は十分あります。2017年度までに、ため込んだ基金は、862億円です。2015年からの3年間では、288億円増やし、2018年度には、922億円に上っています。当区議団が当初予算に予算修正案を提案した約100項目はいずれも区民の切実な要求であり、区民負担を軽減し、福祉を拡充するものであり、総額約16億円で実施できます。区長は、自治体本来の責務を果たすべきです。
反対理由の第2は、政府、財界の方針に従い、大企業最優先の税金の使い方と区民不在の政治姿勢を推し進めているからです。
区長は、この間公共施設の整備や運営管理を民間資金の活用、民間委託で進める方針を打ち出しています。この方針は、財界の要求で、「国際競争力」の名のもとに「世界で一番企業が活躍しやすい国を標榜し、大企業には、大型開発や減税、規制緩和、公共サービスの市場化で儲けの場を拡大する一方、国民には社会保障の切り捨てや消費税増税などで貧困と格差を拡大した「アベノミクス」を区政の場に持ち込むものです。実際、日本経団連は、官民連携のもと重点的、効率的に都市インフラ整備するため、財政負担を極力抑えつつ、PFI,PPPの積極活用をと提言しているとおり、区長の方針は財界の要求に沿って区政を大企業の儲けの場に変えるもので、認められません。その具体例が庁舎建て替え、渋谷駅周辺再開発事業、新宮下公園整備事業などです。
庁舎建て替えでは、財界が求めるPPPの手法を全国に先駆け導入し、区民の財産を三井不動産などに差し出し、庁舎、公会堂の建て替え分譲マンション建設が一体の事業でもあるにもかかわらず、分譲マンションの収益など資金計画の全容を明らかにせず、なぜ、定期借地料が211億円なのかその根拠を区民にも、議会にも明らかにせず秘密主義をとり続けています。そのうえ、庁舎等整備事業に支出した金額は、2013年度から2017年度までで仮庁舎の経費が、30億9308万円余、新庁舎の経費が3億1713万円余、総額34億1021万9100円もの多額の税金投入となっており、前区長の「渋谷区役所はタダで建てる」との言葉はまったく区民を欺くものです。区民の財産を三井不動産に提供し、儲けさせる手法は、区民不在であり、認められません。
次に、渋谷駅周辺整備調整事業には7つの事業で4億7266万円が支出されましたが、渋谷駅北口自由通路整備事業が3億1300万円とその多くを占めています。渋谷駅北口自由通路には、2026年度までに総額で40億円程度が投入される予定です。道玄坂1丁目地区の市街地再開発事業には、2019年度までに20億円の補助総額となる見込みです。さらに、桜丘口地区第一種市街地再開発事業に80億円、南口北側自由通路に20億円など区と国の補助金総額は160億円が投入されます。自治体の役割である区民のくらしを優先するためにも、東急グループをはじめ、大企業中心の渋谷駅周辺再開発事業への税金投入は中止すべきです。
次に、新宮下公園整備事業については、6月22日に三井不動産と借地料を34年10カ月、235億2100万円とする定期借地契約が結ばれました。
契約金額の正当性の根拠となっている2015年8月31日付で行われた「新宮下公園の事業用定期借地権設定にかかわる地代鑑定評価」に基づく年額地代について、A社は5億9200万円、B社が5億9900万円でした。これに対し、三井不動産が提案していた金額は年額6億300万円でした。区が専門家より得た鑑定額より三井不動産の提案額が上回っていることから、契約は問題ない、というのが区の主張です。
しかし、我が区議団が行った再鑑定で、専門家は、路線価は区が行った鑑定時より24%上昇、ホテルの鑑定額は60億円以上の価値があると指摘しており、全体の評価額は426億324万円で約190億円もの開きが生じていることがあきらかになりました。このことから、区民からは異常な安値で契約したのではないかとの批判の声が上がっています。
地方自治法では、自治体が所有する不動産を処分するときには、適正な価格での処分を求めており、「適正な対価なくして」処分する際には、議会の議決が必要とされています。しかし、「契約」に際し、そのような議会の議決はされていません。再鑑定すべきです。
区は定期借地料の鑑定以降の二年間に路線価が24%も上昇し、18階建てのホテルの鑑定も行わず、借地料が大幅に安いことを知りながら、再鑑定もせず、議会に報告も議決もせずに契約を結んだことは認められません。
新宮下公園整備計画は、一貫して区民不在で三井不動産の利益のために34年10カ月もの間、公園用地を自由に使わせ、3層の商業ビルと18階建てのホテルで大儲けをさせる計画であり、区民の財産を特定の大企業に差し出すことにほかならず認められません。新宮下公園整備計画は区民参加のもとで一から検討し直すべきです。
反対理由の第3は不要不急の事業があるからです。
基本構想推進事業費として8169万円が全額、電通東日本への委託料として執行されました。内訳はAI「渋谷みらい」に3865万円、年末カウントダウンと盆踊りに1008万円などです。 とりわけ、基本構想をPRするとして年末カウントダウンを利用したわずか30分のイベントに864万円余を支出していますが、さらにカウントダウンには一般職員74人が動員され職員の人件費から158万円が支出したことは認められません。
河津さくらの里しぶやには、指定管理料など運営費と老朽化の施設改修工事費として、総額で1億4714万3690円が支出されました。年間利用率も63%と前年度を下回り、二の平渋谷荘の93%と比較しても著しく低くなっています。区民からも「遠くて不便、二か所も保養所はいらない」などの声が寄せられており、党区議団のアンケートでは「廃止すべき」が7割以上に上っています。毎年1億円を超える支出を行うことは、税金の無駄遣いであり、廃止すべきです。
区長の2017年度決算は、区民の暮らし福祉を守り、充実させるどころか、政府・財界が進める大企業が活躍できる国際競争力の強化、自治体を市場開放させるなど大企業の儲ける場に変質させ、利益、効率を第1にする新自由主義のトップランナーとして、庁舎建て替え、渋谷駅周辺大開発、新宮下公園再整備など大企業最優先の税金の使い方を推し進める一方で、区民には、くらしの限界を超える国保料の値上げなど負担増と福祉の切り捨てを押し付けるものであります。こうした決算は、自治体の役割を放棄するもので認められません。
以上、一般会計決算の認定に反対する討論といたします。
私は、日本共産党渋谷区議団を代表して認定第2号2017年度国民健康保険事業会計歳入歳出決算、認定第3号同介護保険事業会計歳入歳出決算、認定第4号同後期高齢者医療事業会計歳入歳出決算に反対の立場から討論いたします。
まず、国民健康保険事業会計です。
国民健康保険料の値上げは、2017年度で13年連続となります。年収300万円の30代夫婦と子どもの3人世帯で29万8000円、年収400万円の30代夫婦と子ども2人の4人世帯で41万円にもなり、すでに負担の限度を超える保険料になっています。区民からは怒りの声が寄せられています。非正規雇用の区民は「月9万円の生活費で保険料は年5万3000円。預金を取り崩すたびに不安が募る」と訴えています。このように、国保料を払うために預金を取り崩さなければならないこと自体異常なことです。そもそも、国民健康保険は、憲法25条の生存権を保障し、すべての国民が必要とする医療を受けられるようにするための国民皆保険の根幹をなす制度です。すべての加入者が無理なく払える保険料にする責任は国と地方自治体にあります。
まず、区長は、毎年繰り返される高い保険料の悪循環を断ち切り、「協会けんぽ」並みの保険料、例えば、年収400万円4人世帯で年額約23万円程度に引き下げるため、国に対し、国保の総会計に占める国庫負担割合を50%に引き上げること。東京都には、保険料軽減の財政措置の増額を強く求め、また、区独自に当面、一般会計からの繰り入れを増額すべきです。2017年度の繰り入れ金額は11億7073万6千円です。これを活用すれば保険料の引き下げができたにもかかわらず、7億7161万円余を活用しなかったことは認められません。
また、多子世帯の負担軽減対策も、独自に実施すべきです。さらに、2017年度の差し押さえは、前年度10件から150件に激増するなど徴収強化と保険証の取り上げが行われています。区民の生活実態を見ない強引な保険料の取り立てや保険証の取り上げはせず、国保法第44条にもとづく減免制度を拡充すべきです。
次に、介護保険事業会計についてです。
当区の介護保険制度の理念は、高齢者の尊厳を守り、住み慣れた地域で安心して、自立した生活を送ることができることです。
ところが、2017年度から要支援者を保険給付から除外し、自治体任せの総合事業が本格実施されました。区が実施した緩和サービスAは、訪問介護では12時間の研修を受けた無資格者のヘルパーを従事させることを認め、介護報酬は国基準の8割に下げる、通所介護では国基準の7割に下げたのです。区内の介護事業者からは、これまでの利用者のことを考えると赤字覚悟で受け入れていると語っています。
そもそも、訪問介護は利用者の持つ病気や障害などの知識を理解し対応する専門性が求められているのに、緩和サービスAはその専門性が求められていないのです。港区などは、従来の制度を継読し利用者の立場で介護サービスをおこなっているのです。緩和サービスAは止めて、要支援者の介護サービスの報酬を国基準に戻すべきです。
次に、高い保険料の問題です。第6期の保険料も高く区民からは「年金が下がり、物価は上がりとても苦しい」との声が寄せられています。2017年度の滞納者は、1472人、普通徴収者の約20%に上り、高齢者の暮らしを苦しめています。決算では、介護保険給付費の不用額は12億円以上に上り、繰越金は6億8638万円もあるのです、高齢者の暮らしを守るため重い保険料の負担軽減を拡大すべきでした。また、7期の保険料は値上げを行うべきではりませんでした。
最後に、後期高齢者医療事業会計です。
2017年度の保険料は、国の制度改悪により、特例軽減の見直しが行われ、扶養をされていた人の9割軽減が7割に縮小され、20万円以下の所得割軽減も5割から2割に縮小されました。また、高額医療費の負担限度額が引き上げられ、区民1241人が負担増になりました。さらに、給付でも8月から高額医療費の負担限度額が引き上げられ、窓口負担が押し付けられたことは認められません
所得が低く給付の多い75歳以上の高齢者だけを囲い込む後期高齢者医療制度は、世界に類のない差別医療であり、廃止すべきです
以上、3事業会計決算の認定に反対する討論とします。