●区議会第2回定例会 田中一般質問 最終
2019.6.7
私は、日本共産党渋谷区議団として、区長に質問いたします。
1.区民のいのちとくらしにかかわる社会保障について
区民のくらしはますます困難になっており、「年金は毎年減るのに、医療や介護の負担は増える一方。預金を取り崩しているが、将来が不安」と悲鳴が上がっています。
いまこそ、くらしを支える社会保障の充実が必要です。日本共産党は、減らない年金にして、低年金者全員に、年間6万円を上乗せする。国保料を抜本的引き下げ、障害児・者の福祉・医療を無料にするなどを提案。必要な2兆4千億円は、消費税増税でなく、大企業や大金持ち優遇税制の見直で確保します。
一方、安倍政権は参議院選挙後に、年金受給開始年齢を68歳以上に引き上げ、介護は、要介護1・2の生活援助サービス等を介護保険から外し、利用料は原則2割に引き上げ、ケアマネジメントに利用者負担を導入。医療は、75歳以上の窓口負担を2割に値上げしようとしています。東京民主医療機関連合会の調査では、経済的理由等による「手遅れ死」が昨年一年間で13件も発生しています。これ以上の社会保障の改悪は、区民の生存権を奪うもので、絶対に許せません。
区長は、政府に対して、社会保障の大改悪を中止し、くらしに希望を持てる社会保障へと転換するよう求めるべきです。また、安心して医療に係れるよう、区として75歳以上の住民税非課税世帯の医療費窓口負担を無料にすべきです。合わせて区長の所見を伺います。
2.高齢者福祉・介護保険の充実について
(1)第一に、だれもが安心できる地域包括ケアの構築のために
①まず、地域包括支援センターの体制強化は、焦眉の課題です。すべての高齢者の尊厳を大切にし、その人らしく生きるための支援をすることは福祉の増進に責任を負う区の責務です。その中心的役割を果たすのが地域包括支援センターです。
ある地域包括の職員は、「一人で30~40件の要支援者を担当するが、相談者に相応しいケアプランを作り、介護給付に結びつけるまでには相当の労力が必要。総合事業も書類作成に時間がかかり、その他にも相談業務や様々な会議もあり大変」と職員の増員を訴えています。
わが党区議団が毎回求める中で、今年度から4か所の地域包括支援センターの職員を増員したことは評価しますが、まだまだ不十分です。地域包括支援センターの職員をさらに増員すべきです。区長の所見を伺います。
②介護・福祉サービスを利用していないすべての高齢者の訪問・支援について
高齢者だけの世帯が増え、困難を抱えたまま孤立するケースが増えています。本町の70代のご夫婦から、「隣に住む一人暮らしの姉が認知症で、くらしが崩壊している」との相談を受け、直ちに介護サービスにつなげました。このご夫婦も病弱のため、自分たちのことがやっとで、姉の支援はできなかったと話されていました。私は、高齢者の孤立化を防ぎ、早期に介護・福祉サービスにつなげる区の責任の重さを痛感しました。
わが党区議団は、介護・福祉サービス等の利用の無い、高齢者全員を、社会福祉士等の専門職が直接訪問して、生活実態に即した支援につなげている港区の「ふれあい相談員」制度を紹介し、その実現を求めてきました。文京区、豊島区、練馬区なども、地域福祉コーディネーターが同様の支援をしています。当区の、民生委員や見守りサポートによる訪問活動は重要ですが、高齢者の複雑な困難を見極め支援につなげるには、福祉の専門職の知識と経験が不可欠です。
介護・福祉サービスを利用していないすべての高齢者を直接訪問、支援する専門職を地域包括支援センターごとに配置すべきです。区長の所見を伺います。
(2)第二に、高齢者の尊厳を守る介護・高齢者福祉の充実
①区型介護サービスについて
高齢者の自立を支えるために、区が独自に介護サービスを上乗せする区型介護サービスのヘルパー派遣事業は、全国に誇る福祉施策です。しかし、区型介護サービスの利用を認定限度額の範囲内に制限し、さらに総合事業を実施しない事業所では使えなくするなど、この3年間で予算を28%3869万円も削減しています。限度額を超えた方や総合事業を実施していない事業所を利用している方は、サービスが受けられなくなりました。
区型介護サービスの利用制限はやめるべきです。区長の所見を伺います。
②緩和サービスAについて
政府は、要支援者の生活援助と通所の介護を介護給付から外し、自治体任せの総合事業にしました。渋谷区では、要支援者の生活援助介護と通所介護を国基準より2~3割安い単価で無資格者に担わせる緩和サービスAを導入しました。実施以来3年経っても、無資格者による担い手は確保できず、資格のあるヘルパーが安い単価で緩和サービスAを提供しています。実際、今年1月末現在での在宅サービスセンターの通所介護利用者は、緩和サービスAが3247人ですが、資格のあるヘルパーが担っています。
結局、無資格者による生活援助サービスでは、自立を支援する良質な介護は保障されず、資格のあるヘルパーが担えば、事業所は赤字になるのですから、緩和サービスA事業の破綻は明らかです。これ以上、介護事業所と介護職員に負担を負わせてはなりません。
直ちに、緩和サービスAはやめて、国基準に戻すべきです。まして、本区でも認定者の約3割を占める要介護1・2まで保険給付から外せば、介護保険制度は崩壊します。国に対して、要介護1・2の保険外しはやめるよう求めるべきです。合わせて、区長に伺います。
③介護保険料・利用料について
介護保険料は、2018年度から3,960円引き上げられ、基準額が年額7万1520円となりました。わが党区議団のアンケートでも91%が保険料負担が重いと回答しています。実際、普通徴収の保険料収納率は、今年2月現在77%で前年より低下しており、利用限度額に対する利用率は、要支援1が約38%、要支援2が36%など低くなっています。
区の介護保険料、利用料の軽減制度については、すべての住民税非課税世帯に、預貯金制限なしで実施すべきです。区長の所見を伺います。
(3)第三に、特別養護老人ホームです。
10月現在、待機者は442人と依然として深刻です。しかし増設計画は84床の高齢者ケアセンター跡地複合施設だけで、そこもけやきの苑・西原の大規模改修の際の代替施設とする計画でその間は待機者を受け入れられません。区長は、民間で特養の整備を進めると言っていますが、神宮前に整備予定の地域密着型特養29床以外には計画はありません。そもそも地価が高い渋谷区でしかも介護職員不足の中で、民間任せでは待機者解消は進みません。
区の責任で直ちに特別養護老人ホームの増設計画をたて、ケアコミニュティ原宿の丘の再整備の際にも特養を整備すべきです。代々木2・3丁目の国有地、幡ヶ谷2丁目の都営住宅跡地、本町1丁目の警察寮跡地などを早期に取得し、特養など福祉の複合施設として整備すべきです。区長の所見を伺います。
(4)第四に、介護職員の処遇改善について
現在、介護職員の賃金は全産業平均より約8万円も低く、福祉の仕事に魅力を感じながら、低賃金などを理由に、働き続けられない深刻な事態が続いています。区内の訪問介護事業所では、介護士不足のため利用者を断らなければならない事業所も出ています。ある区立の特別養護老人ホームでは、介護士が16人も欠員で、派遣で対応している。利用者は、寝返りの回数が減り「褥瘡」ができたと話しています。区長は、こうした実態をつかんでいるのですか。どう対応しようとしているのか伺います。
政府は、消費税増税と引き換えに、「勤続10年以上の介護福祉士に月8万円賃上げ」するとしていますが、介護士の平均勤続年数は6年で、しかも賃上げの判断は事業所任せのため、多くの介護士には処遇改善にならないとの懸念が広がっています。
いま求められているのは、すべての介護職員に対する賃金の引上げです。区として、区内の介護施設や介護士の賃金を引き上げるための助成制度を作るべきです。また、保育士と同様に介護職員にも、区独自に宿舎借上げ助成制度を実現すべきです。区長の所見を伺います。
3.障がい者福祉の充実について
すべての障がい者は個人として尊重され、権利の主体として、自立した生活をする権利を保障する障がい者権利条約の立場で、障がい者福祉を充実することが求められます。
(1)難聴者への支援について
聴覚に障害のある方は、全国で約600万人、区内では約1万人以上に達すると考えられます。なかでも70歳以上の高齢者の半数は加齢による難聴と言われています。ところが現在、補聴器購入助成の対象者は、障害者手帳が交付されている約24万人といわれており、ほとんどの方が助成を受けられません。
難聴になると、家庭の中でも社会的にも孤立しやすく、人との会話や会う機会が減り、ひきこもりや認知症のリスクが高まることから、早期の補聴器の使用が求められます。
いま補聴器は高額のため、補聴器購入助成制度を創設する自治体が広がっています。23区内でも、千代田区は、年齢制限を設けず片耳の聴力レベルが近距離での会話に支障がある40デシベル以上の方に、購入費用の9割、上限25000円を助成しており、中央区や大田、豊島、江東、墨田、葛飾の各区は65歳以上に助成や現物支給を実施しています。
本区でも、難聴者への補聴器購入助成制度を創設すべきです。また23区では渋谷区だけが、軽度・中等度難聴児への補聴器購入助成制度を実施していません。直ちに実施すべきです。また、難聴児の早期発見、早期支援につながる「新生児聴覚スクリーニング」の検査費用を無料化すべきです。それぞれ区長の所見を伺います。
(2)移動支援について
すべての障がい者に、移動支援を保障する必要があります。本区では、今年度から通所や余暇活用にも拡大していますが、要綱には保護者が「就労により送迎が困難」であることなど、保護者の事情によっては利用できないと障がい者とその家族から訴えられています。必要なすべての方が移動支援を利用できるように「保護者」要件をなくすべきです。区長の所見を伺います。
区は、障がい者の社会参加や病院への通院などに活用されてきた福祉タクシー券を、月額4,600円から3,500円に減額しました。障がい者からは、「通院の負担が増えた分、生活を削らなければならなくなった」との声が上がっています。
障がい者のくらしを守るために支給額を元に戻すべきです。区長の所見を伺います。
(3)障がい者支援施設の運営費助成と処遇改善について
精神障がい者支援事業所では、自立支援法の報酬改定によって運営費が大幅に減少し、定員を減らした施設も出ています。区は140万円の予算で、自主製品の普及活動に対する助成制度を始めましたが、障がい者の生活の場を運営するために必要な費用を、施設の努力で差別することは、障がい者の尊厳を傷つけるものです。障がい者支援施設の必要な運営費については全額助成すべきです。区長に所見を伺います。
また、障がい者施設の職員の処遇は、極めて低い水準です。職員は、「結婚して、家庭を持っても働き続けられる賃金が必要です」と訴えています。障がい者支援施設で働く職員の賃金の引き上げのために、区独自に運営費に職員の賃金上乗せ加算をすべきです。区長の所見を伺います。
以上