9月10日、区議会第3回定例会の初日の本会議で、トマ孝二区議会議員が、日本共産党区議団としての代表質問を行いました。
二〇一九年第三回区議会定例会 代表質問 苫 孝二 議員
私は、日本共産党渋谷区議団を代表して、区長に質問します。
1.国政問題について
(1)10月からの消費税10%増税について
消費税の8%への増税いらい、消費不況がつづいており、こんなときに増税を強行すれば国民の暮らしも日本経済も大破綻になります。複数税率は、混乱が予想され、プレミアム商品券についても「2万円の購入費を工面することは困難だ」など怒りの声が出されています。
8月31日の読売新聞の世論調査では、消費税増税に賛成は36%、反対は63%となっています。国民の多数は、消費税10%を認めていないのです。
消費税を増税しなくても社会保障拡充の財源はつくることができます。日本共産党は、大企業や大金持ちに、中小企業やサラリーマンなみの課税をすれば7兆円の財源ができることを提案しています。
区長は、区民の営業と生活を守る立場から、政府に対し、10月からの消費税増税の中止を求めるべきです。区長の見解を伺います。
(2)平和憲法・第9条を守ることについて
安倍首相は、7月の参議院選挙で、自衛隊を憲法に書き込む改憲を訴えました。安保法によって海外での武力行使が可能となった自衛隊を憲法に明記すれば、戦争放棄、戦力不保持の第9条は死文化し、日本は、ふたたび戦争する国になってしまいます。
参議院選挙では、自民党が過半数割れとなり、改憲勢力が3分の2割れの審判が下されました。朝日新聞の7月の世論調査でも、安倍首相の任期中の改憲に反対が46%で賛成の31%を大きく上回っています。まさに、国民の多くは、安倍改憲に反対し、第9条を遵守することを求めているのです。
幡ヶ谷一丁目在住の86歳の方から「小学校2年から6年の夏休みまで戦争でした。8月15日は、いつまでも戦争のことが語りつがれ、忘れてはいけないと思います」と、平和の願いが寄せられています。
区長は、憲法第9条を守ることを表明すべきです。見解を伺います。
(3)核兵器廃絶について
8月6日、広島市の平和祈念式典で子どもの代表は、「昭和20年8月6日。血で染まった川、がれきの山、皮膚がはがれた人、たくさんのなきがら、見たくなくても目に飛び込んでくる、地獄のような光景が広がったのです。私たちは、大切なものを奪われた被爆者の魂の叫びを受け止め、次の世代や世界中の人たちに伝え続けたい」と誓いました。
被爆者の訴えが世界を動かし、核兵器禁止条約が国連で採択され2年がたちました。現在、署名国は70、批准国は26カ国となっています。唯一の戦争被爆国である日本政府は、直ちに核兵器禁止条約に署名、批准すべきです。ところが、安倍首相は、平和祈念式典後の被爆者との懇談会で、条約の批准を求めた被爆者の声を拒否したことは到底許されるものではありません。
(1) 区長は、核兵器の非人道性についてどう認識しているのか、伺います。
(2) また、平和首長会議の一員として、政府に対し、核兵器禁止条約への署名、批准を求めるべきです。区長の見解を伺います。
いま被爆者の平均年齢は82歳を超えており、子どもたちに戦争の悲惨さ、ヒロシマ・ナガサキの被爆の実相をしっかり伝えていくことが重要になっています。
(3) 区長は、先頭に立って被爆地を訪問するとともに、小・中学生をヒロシマ・ナガサキに派遣し、平和学習をすすめるべきです。区長の見解を伺います。
2.区長と政治姿勢について
(1)暮らし福祉第一の区政について
渋谷区の責務は、地方自治法で明記されているように、住民福祉を増進し、生活を向上させることです。そのためには福祉の街づくりが必要です。保育園など子どもの施設、特別養護老人ホームなど高齢者や障がい者施設の増設は、地域の建設業や商業などの中小業者を活性化させ、新たな雇用を生み出します。福祉人材の確保は、災害に強いまちづくりにもなります。
しかし、長谷部区長の四年間は、区民には、国民健康保険料や介護保険料の引き上げ、学校給食費の値上げなどの負担増、障がい者福祉タクシー券の削減や生活保護世帯の夏冬の見舞金の廃止、富山臨海学園や山中高原学園の廃止など福祉・教育を切り捨てるものでした。
今議会には、昨年度の繰越金60億円を都市整備基金に積み増す一般会計補正予算が提案されており、都市整備基金と財政調整基金の総額は、1008億8千万円という莫大なものとなります。
基金を積み増すのではなく、切り捨てた福祉を元に戻すとともに、学校給食の無償化をはじめ、子ども医療費を高校生まで拡大すること、75歳以上の医療費無料化など、暮らし応援・子育て支援、教育の充実などの施策に使うべきです。区長の見解を伺います。
(2)渋谷駅周辺再開発事業について
渋谷駅周辺再開発事業は、グローバル大企業を呼び込むためにアジアヘッドクォーター特区などを活用し、長年住み続けて来た住民や飲食店を追い出して進められている大企業のための再開発で、総額166億円もの税金が投入されようとしています。
大企業のための渋谷駅周辺再開発事業への税金投入は中止すべきです。区長の見解を伺います。
(3)スタートアップ・エコシステムについて
区長は、先の発言で「スタートアップ・エコシステムの拠点都市」に参加すると表明しましたが、これは地方自治体と大学、民間企業などが協力して海外起業家の招致をすすめる財界戦略に従うものです。区長は、検討組織を立ち上げると言いましたが、国は、そのために自治体が、関連予算を組み、担当部署も設けるとしています。わが党区議団は、基本構想で、高度な国際競争力を備えた街をめざすとしたことに対して、それは日本経団連と安倍政権が進める「日本再興戦略」にもとづいて、グローバル大企業の儲けに奉仕するものだと批判してきました。今回のスタートアップ・エコシステムはまさに財界戦略そのものです。
「スタートアップ・エコシステムの拠点都市」参加はやめるべきです。区長の見解を伺います。
(4)公園整備事業について
(1)宮下公園整備事業は、三井不動産に宮下公園を34年間貸しつけて商業ビルやホテルを建設させて大もうけをさせるものです。建設現場を見た区民からは、「とても公園とは言えない、巨大な商業施設だ」との怒りの声が寄せられています。わが党区議団は、この事業に反対するとともに、定期借地料を190億円も値引きし、235億円にしたことについて、三井不動産が最初に提案した金額に合わせるために、さまざまな手立てで値引きし、ホテルは不動産鑑定さえも行っていないことを指摘してきました。
改めて、なぜホテルの不動産鑑定をしなかったのかその理由を明らかにすべきです。また、宮下公園整備事業の定期借地料について区は再鑑定をすべきです。合わせて、区長の見解を伺います。
(2)長谷部区政は、公園面積の12%を営利活動に活用できる条例をつくり、さらに公園全部を指定管理にして営利企業にもうけさせようとしています。北谷公園は、公園内の飲食店、売店で収益をあげさせるパークPFI制度を使って参加企業の公募をおこない、東急電鉄を 代表企業とするグループが選定されました。
北谷公園をはじめとした都市公園を、民間資金で整備させ儲けさせる手法はやめるべきです。区長の見解を伺います。
(5)小規模企業・商店街振興策について
2014年に成立した「小規模企業振興基本法」は、小規模企業を、地域経済の活性化並びに地域住民の生活向上及び交流を促進し、地域社会に貢献していると評価しました。東京都もその役割を位置づけ、同趣旨の条例を制定しました。
当区は従業員20人以下の小規模企業が全事業所数の87%を占めており、小規模企業の街でもあります。いま長引く消費不況のもと、区内の小規模企業はきびしい経営環境で、2018年の中小企業の倒産は103件、負債額134億円、職を失った従業員は454人となっています。
(1)当区としても小規模企業振興対策を区政の中心課題として位置づけ、施策を総合的に推進するため、小規模企業振興基本条例を制定すべきです。区長の見解を伺います。
(2)私の地域の商店街では、高齢者のための宅配事業を行っています。商店街振興策と同時に買い物難民対策としても、生鮮食品など生活に不可欠な小売店舗を誘致するための助成制度や空き店舗を借り上げ貸し出す制度を創設すべきです。また商店街の高齢者への宅配事業への助成制度を実施すべきです。合わせて区長の見解をうかがいます。
(3)商店街の街路灯に対する補助金は2分の1です。商店街を支援する立場から、全額補助にすべきです。区長の見解をうかがいます。
(6)住宅簡易改修事業について
建設業者の支援と区民に快適な住まいを提供する住宅簡易改修事業の実績は、スタートした2013年度は104件・726万円でしたが、2018年度は35件、270万円と減少しています。既存不適格の住宅や一度補助をうけた住宅でも必要な場合は、再度補助すること、住まいを兼ねている店舗の場合は店舗の改修も対象にするなど制度を拡充するとともに補助額も引き上げるべきです。区長の見解を伺います。
3.国民健康保険料について
(1)国民健康保険料の引き下げについて
(1)当区の今年度の保険料は、15年連続で引き上げられ、保険料通知書が届いた6月14日から28日の間に保険料に関する抗議や苦情、問い合わせは昨年を上回る891件もありました。
年収400万円の40代夫婦と子ども二人の世帯では、49万4,902円と給料の1.5カ月分もの高い保険料となりました。同じ世帯でも協会けんぽ加入者の保険料は23万7,252円です。国保加入者はその2倍以上の保険料です。低所得者にあまりにも高すぎると思いませんか、区長の認識を伺います。
(2)国民健康保険の加入者は74歳までの高齢者や失業者、非正規労働者など所得の低い人が多くを占めているうえ、被用者保険のような事業主負担がありません。そのため、国も公費による相当の負担が必要と認めてきました。ところが1984年度以降、国保への国の負担を次々と引き下げてきた結果、国保会計に占める国の負担は、約5割から2割にまで減ってしまいました。だからこそ、全国知事会は国に1兆円の負担を求めているのです。1兆円を投入すれば、協会けんぽ並みの保険料に引き下げることができます。区長は国に対し、国保に対する負担を増やすよう求めるべきです。見解を伺います。
(3)昨年度から、国保財政の都道府県化が実施されました。国はこれに合わせて、区市町村が行っている一般会計からの法定外繰り入れを解消することを求め、都の国保運営方針では6年間で解消することが示されています。
渋谷区はこの方針に従って、一般会計からの繰り入れについて、2017年度予算では11億7千万円だったのを今年度は3億5600万円に減らしてしまいました。さらに区長はこの繰り入れをなくそうとしています。そうなれば、4人家族で7万2千円もの引上げとなり、過酷すぎて払えなくなります。区長は、一般会計からの繰入れについて「国保加入者以外の納税者の理解を得られない」と言っていますが、低所得者や生活困難になった区民のために税金を使うことこそ、社会保障であり、自治体の役割ではありませんか。区長の見解を伺います。そして、区長は、国保制度が社会保障の制度だと認めるのなら、一般財源を活用して、国保料を引き下げるべきです。区長の見解を伺います。
(4)千代田区では、一般会計からの繰り入れをほぼ維持することによって、昨年度から2年連続で保険料を引きさげています。また、23区の保険料は子どもが一人増えるごとに5万2200円も高くなります。この均等割を軽減する自治体も全国で25に広がっています。当区でも、こうした区の努力でできる保険料軽減策を実施すべきです。区長の見解を伺います。
4.高齢者福祉・介護について
(1)介護保険について
(1)政府は、2021年度から始まる第8期介護保険事業計画で、ケアプラン作成の有料化、要介護1・2度の生活援助サービスの保険給付はずし、介護施設の室料徴収の拡大など、いっそうの負担を利用者や家族に押し付けようとしています。いまでも、「保険あって介護なし」、「介護崩壊」の事態です。高齢者の尊厳と介護を守るために、国に対してこれ以上の介護制度の改悪を中止するよう求めるべきです。区長の見解を伺います。
(2)国が要支援者を介護保険給付から外して、総合事業に移し、区は、要支援者の生活援助訪問介護と通所介護に「緩和サービスA」を導入しました。国基準の7~8割の安い単価でサービスを無資格者に担わせようとしましたが、人材が確保できず、資格を持ったヘルパーが安い単価で担っています。そのしわ寄せは介護事業者の経営悪化や介護職員の低賃金となり、利用者はこれまでのサービスが継続できないなど深刻な状況に陥っています。
「緩和サービスA」は止めて、国基準に戻すべきです。区長の見解を伺います。
(3)区内の介護現場では人手不足が深刻化しています。必要な職員を確保できないため、土日のヘルパー派遣が出来なくなった、施設が開設できない。また、事業所の一部閉鎖や廃業などの事態が起こっています。その原因は、介護労働者の賃金が全産業労働者の平均賃金より9万円も低く、正規の訪問介護労働者の月額平均賃金は21万1732円で、非常勤の訪問ヘルパーは正規の半分程度と言われています。
政府は、「勤続10年以上の介護福祉士に月額8万円の賃上げをする」としていますが、介護労働者の平均勤続年数は6年で、しかも3年以内で離職する人が6割もいるため、全体の処遇改善になりません。
介護労働者が希望をもって働くことができ、人材不足を解消するために、区長は政府に対し、全ての介護労働者の賃金引上げを求めるとともに区としても独自に、賃金の引き上げをはかるべきです。また、区長は先ほど、保育士に実施しているように家賃補助を介護労働者でも実施すると答弁しましたが、いつから、どういう内容で実施するのですか。区長の見解を伺います。
(2)特別養護老人ホームの増設について
ことし四月一日現在の待機者は417人で、きびしい事態が続いています。高齢者ケアセンター跡地に84床のホームが建設中であり、神宮前に29人入所の民間のホームがつくられます。しかし、それらが完成しても300人は取り残されてしまいます。ある人から「母は重い認知症で、自宅での介護はとても困難で特養への入所を願っていました。だけど入れないまま亡くなりました。」ときかされました。
早急に、代々木二・三丁目の国有地、幡ヶ谷二丁目の都営住宅跡地などを取得し、特別養護老人ホームをはじめとする複合施設として整備すべきです。とくに、代々木二・三丁目の国有地は特養ホームをはじめ、保育園、障害者グループホーム、高齢者住宅など、福祉の総合施設として、区が直接整備することを明確に示して、政府と交渉すべきです。合わせて区長の見解を伺います。
(3)高齢者の住宅問題について
今年の区営高齢者住宅のあき家待ち登録者募集には、世帯用5戸に対し、56人、単身者用は15戸に対し215人の応募がありました。
70歳以上の高齢者を受け入れるアパートはほとんどありません。多くの高齢者は安心して住める区営住宅に入りたいと願っています。しかし、現在は、恵比寿西の都営住宅跡地複合施設の計画しかありません。
(1)高齢者住宅増設計画を策定し着実に進めていくべきです。また、東京都に都営住宅の増設を求めるべきです。合わせて区長の見解を伺います。
(2)現在、都営住宅の新入居者の浴室は都が整備していますが、既に入居している人が浴室を取りかえる際は、自己負担です。同じ入居者なのにあまりにも不公平です。既に入居している人の浴室の取りかえは都が負担するよう求めるべきです。区長の見解を伺います。
5.羽田空港新飛行ルートについて
(1)羽田空港の増便による区内の低空飛行問題について
国土交通省は、8月8日、羽田空港新ルートについて「関係自治体から理解を得られた」として、2020年3月29日から南風時午後3時から午後7時のあいだに、約130本の航空機が都心上空を航行すると発表しました。
区民の請願を受けて当区議会は「国が進めている羽田空港の機能強化に伴う新飛行計画は落下物や騒音、大気汚染など区民生活に大きな影響が想定される」などとして「羽田空港増便による都心低空飛行計画の見直し等を国に求める意見書」を全会派一致で議決しました。
私たち区議団は、さる7月29日、長谷部区長に対し、東京都が30日に開く「羽田空港の機能強化に関する都および関係区市連絡会」に参加するにあたって区議会や住民説明会で出された声を十分に示すとともに「地元の理解は得られていない」ことを明確に表明することを求める「要望書」を提出しました。しかし、当区は「関係区市連絡会」でまったく意見を表明しませんでした。
(1) これは、区民や区議会の意思を踏みにじった裏切り行為と言わなければなりません。どうして意見を言わなかったのか、区長の見解を伺います。
区民の不安はまったく解消されておらず、現在私たち区議団がおこなっている区政アンケートでは、「平穏な市民生活を脅かす新ルートは絶対反対」「説明会は納得のいくものではなく不安だけが残りました。転居も考えています」などの声が相次いで寄せられています。
(2) 区長は、危険な羽田空港新飛行ルートの開設について撤回を求めるべきです。見解を伺います。