牛尾まさみ議員は、10月8日に開かれた区議会第3回定例会決算特別委員会で、2019年度渋谷区一般会計決算、国民健康保険事業会計決算、介護保険事業会計決算、後期高齢者医療事業会計決算に反対の討論を行いました。
2020.10.9 田中正也
私は日本共産党渋谷区議団を代表して、認定第1号 令和元年度渋谷区一般会計決算に反対の立場から討論をいたします。
コロナ禍の体験によって、人間は一人では生きていけない、社会の力で支える国と自治体の公の責任が欠かせないことが明らかになり、経済効率最優先の政治の転換が求められています。一方、菅政権は立憲主義を破壊し、格差と貧困を拡大させた安倍政権を継承すると表明し、「自助、共助、公助」をスローガンに、自己責任を押し付けようとしています。また菅政権が行った日本学術会議の任命拒否は、憲法23条の「学問の自由」を侵害し、日本学術会議法にも反し、国民の権利の侵害するもので到底許されません。直ちに任命拒否の理由を明らかにし、拒否した6人を任命すべきです。わが党は、立憲主義を破壊し、新自由主義を押し付ける菅政権を倒し、野党連合政権を実現するために全力を尽くします。
区民のくらしは、わが党区議団の2019年のくらし・区政アンケートで、生活が「苦しい」、「苦しくなった」が65%と、消費税増税や社会保障の改悪によってますます深刻になっていた中で、区政に求められるのは、悪政の防波堤として、区民のくらしと福祉を守ることでした。ところが2019年度決算は、区民を守るどころか、大企業の儲け最優先に区民の税金や財産を提供する一方で、くらしや福祉を切り捨て、区民負担増を押しつけて、貯め込みを70億円も積み増し、1079億円に増やすなど、自治体本来の役割を投げ捨てており認められません。
反対の第1の理由は、負担増や削減で区民のくらし福祉、区民を後退させたことです。
(1)負担増
国民健康保険料は、15年連続の値上げで、年収400万円の40代夫婦と子ども2人の世帯の保険料は、49万4902円で収入の12%を超えています。党区議団のアンケートでは、国保加入者の85%が保険料の負担が重いと答え、「子どもの教育費がかさむ中で高い国保料はひどすぎる」など怒りの声が寄せられました。すでに負担の限界を超えている国保料を値上げすることなど到底認められません。
全国知事会も求めているように、1兆円規模で公費負担を増やせば、保険料を協会けんぽ並みに引き下げることができます。国に求めるべきです。区としても、一般会計からの繰入を2億8千万円増やして、子どもの均等割りを半額にするとともに、低所得者の保険料を減額すべきです。
また、小中学校の給食費を値上げしたことは、子育て支援の強化と義務教育の無償の原則に逆行するもので絶対に認められません。この値上げによって保護者の年間負担額は、46,740円、中学年が49,470円、高学年が52,200円、中学生が61,476円と重い負担となりました。
いま学校給食の無償化を求める世論と運動は全国に広がり、82自治体で無償化しています。給食費の値上げを中止するとともに、3億7000万円で実施できる学校給食費の無償化を直ちに実施すべきです。
(2)福祉・教育切り捨て
高齢者の尊厳を守るために、区が独自に介護サービスを上乗せする区型介護サービスの区独自のヘルパー派遣事業は、全国にも誇るべき施策です。しかし、区は、高齢者の自立のために上乗せしてきたサービス利用を介護認定限度額の範囲内に制限するとともに、単価の低い緩和サービスAに置き換えたために、予算が大幅に削減され、新年度も401万円、4.7%も削減しています。国が要支援に続いて要介護Ⅰ、Ⅱの生活援助を介護給付から外そうとしているもとで、高齢者の自立した生活を維持するために必要なサービスが受けられるようにすることは区の責務です。区型介護サービスの利用制限はやめるべきです。
区は、障がい者の社会参加や病院への通院などに活用されてきた福祉タクシー券を、2015年度から月額4,600円から3,500円に減額し、さらに2019年度は、42人分882万円の予算を削減しています。障がい者からは、「通院の負担が増えた分、生活を削らなければならなくなった」との声が上がっており、障がい者のいのちとくらしを守るために支給額を月4,600円に戻すべきです。
生活保護制度は、憲法25条の生存権をすべての国民に直接保障する最後のセーフティネットです。ところが国は、貧困が広がり国民生活が悪化しているのに合わせて、生活扶助費を2018年度から3年間で最大5%も削減しています。渋谷区の場合、高齢単身世帯で1カ月4000円・約5%、40代夫婦と小・中学生の子ども2人の世帯では、1カ月9,260円・4.5%もの減額です。猛暑の夏も冷房代を節約し、冬の寒さでも暖房もつけずにガマンしているのが生活保護世帯の実態です。国の扶助費削減に反対するとともに、区として総額2160万円あれば復活できる夏冬の見舞金を元に戻すべきです。
この年度末に、直接雇用していた学校図書専門員を一方的に解雇し、派遣に切り替えたことは許されません。子どもたちに読書の楽しさを教え、豊かな成長を育む図書司書は、文部科学省の方針通り常勤の正規職員として雇用すべきです。
区は2018年度、財政削減のために富山臨海学園と山中高原学園を廃止したため、子どもたちの校外学習の施設がなくなりました。小学生が行っていた海水浴について、この年度新年度に実施した学校はなく教育環境が後退しました。富山臨海学園は復活させるべきです。
さらに新島青少年センターも廃止するなど許されません。撤回し、区が建て替えるべきです。
第2の理由は、子育て支援や教育、福祉の充実を求める区民の声に応えていないことです。
コロナ禍で少人数学級の重要性が共通認識となっています。全国知事会など三地方団体や小中高と特別支援学校の校長会も、政府に申し入れを行い、政府の来年度予算でも要求しています。本区では、小学校10、中学校2クラスの35人以上学級を解消し、20人学級を準備すべきです。
「安心して働き続けられるよう認可保育園を増やして」との保護者の願いは切実です。ところが2019年4月に認可保育園に入れなかった子どもは602人でした。このうち0~2歳児が556人と深刻であり、待機児解消は喫緊の課題です。
この間、区は本町第二保育園など区立保育園を次々と廃園し、さらに「多様な保育」を待機児対策の受け皿にしようとしています。しかし、保護者の願いは質の確保された認可保育所であり、コロナ禍でも開園し、保護者の就労を支えてきたのが区立保育園です。一方、政府の進める多様な保育の一つである企業主導型保育は、保育士の一斉退職や突然の休園が相次いでいます。保育士の確保など質の確保された保育園を早急に整備して待機児を解消するために、区立を中心に認可保育園を増設すべきです。
全産業平均より7万円から10万円も賃金月額が低い保育士の処遇を改善することは、すべての子どもに質の良い保育を保障するためにも、認可保育園を急速に整備するうえでも早急に取り組まなければなりません。国、東京都に対し抜本的な補助額の増額を要請するとともに、区独自施策として月額1万円の補助制度を実施すべきです。
子どもの医療費の中学生までの無料化は、保護者や小児科医などの粘り強い運動で実現しました。保護者の経済的負担軽減のため、9800万円でできる高校生までの子どもの医療費無料化を実施すべきです。
特別養護老人ホームの待機者は今年4月現在304人、今年10月には386人に増加、最長4年維持用待たなければならない深刻な事態です。しかし増設予定は84床のかんなみの杜渋谷だけです。代々木2・3丁目の国有地の定期借地による活用、幡ヶ谷2丁目の都営住宅跡地を早期に取得するとともに、ケアコミニュティ原宿の丘の再整備の際にも特養整備を進めるべきです。
また、高齢者が所得に関係なく、安心して医療に係れるよう、4億4千万円余で実現できる住民税非課税世帯の医療費窓口負担の無料化を実現すべきです。
これらの切実な願いは、この年度の繰越や基金の活用で十分実現できます。区民の願いに背を向けた決算には認められません。
第3の理由は、大企業の儲け最優先にし、福祉の増進を目的とする自治体の役割を変質させ、投げ捨てているからです。
コロナ禍のもとで、区政でも大企業の儲けを最優先に、雇用などの規制緩和や社会保障や公の責任を後退させ格差と貧困をひろげてきた新自由主義政策の転換が求められています。
長谷部区長は「基本構想」で「成熟した国際都市づくり」を掲げ、大企業が進める渋谷駅周辺再開発への巨額の税金投入や宮下公園整備事業、区庁舎建て替え計画を民間資金の活用手法で進めることでグローバル大企業の儲けを最大にする区政の転換が求められています。
渋谷駅周辺再開発事業は、グローバル企業を呼び込むためのインフラ整備であり、すべての開発事業に東急グループが加わる大企業のための事業であり、総額83億円もの区民税金を投入する事業です。この年度は渋谷駅南口北側自由通路整備や南口北側自由通路などにこの年度5億8千万円、市街地再開発事業として、道玄坂一丁目駅前地区の渋谷フクラスの建設に7億7500万円を投入しました。住民や中小業者を追い出して、大企業の儲けのための大規模開発に税金を投入することは止めるべきです。また、ステップアップ事業で、美竹第二庁舎跡地を民間の営利事業のために使わせることは認められません。区民の願いである福祉施設の整備などに使うべきで、美竹公園は区立公園として整備すべきです。
宮下公園整備事業は、区民の公園を三井不動産に貸し出し、三井不動産は商業施設とホテルで大もうけをあげる事業です。実際、この定期借地契約は、市場価格より190億円以上値引きするなど三井不動産の儲けのために奉仕してきました。さらに商業施設の屋上の宮下公園を、三井不動産と西武造園に指定管理させることで、公園管理でも儲けをあげさせるものです。一方、開設した宮下公園は、「ホテルの前庭のようだ」「都市公園なのに24時間365日使えない」「災害時に避難できない」「ホームレスを排除したことは人権侵害だ」など区民から批判が上がっています。都市公園の役割を後退させて、大企業の儲けに奉仕することは認められません。
さらに北谷公園の整備にパークPFIを導入し、東急不動産に整備させ、カフェなどで儲けをあげさせようとしています。この事業でも、住民への説明会も、今定例会まで議会への報告も行わないまま整備事業が進められていることは認められません。
庁舎建て替え事業も、三井不動産レジデンシャル等は、区民の土地に建てた39階505戸の分譲マンションを販売することで、211億円の権利金や建設費を差し引いても大儲けすることになります。区民の土地で、一部の大企業にもうけさせることは自治体のやるべき仕事ではありません。
昨年区が、区民の税金7000万円を投入し4人の区職員を派遣して設立した一般社団法人渋谷未来デザインも関わって、「ササハタハツまちづくり」やその延長として「西参道プロジェクト」でファッション関係などの企業が参入する基盤整備をすすめようとしています。来年度予算では、「公共空間利活用の知見を深める」として、区の職員3名から5名を一週間程度、欧米の複数の都市を視察する予算まで計上し、区が一体となって大企業の儲けのためのプロジェクトづくりを推し進めようとしています。渋谷未来デザインは、昨年、代々木公園にサッカースタジアムを建設する構想を打ち出しましたが、こうした渋谷未来デザインの運営にね、区民や区議会が関与し、チェックすることもできません。
財界戦略の旗振りをして、大企業の儲け最優先に区民の税金や財産を使いながら、区民や議会は排除する手法は、住民福祉の増進と住民参加を基本とする地方自治体の在り方に反しており認められません。
羽田新飛行ルートについては、新飛行ルートの撤回を求める発言が次々と出されました。「計画は誰がつくったのか」の質問に国は、「日本再興戦略で打ちだされた」と財界戦略であることを明らかにしました。
大企業の儲けのために、区民の安全や環境が犠牲にされてはなりません。きっぱり撤回を求めるべきです。
反対理由の第4は、不要不急の無駄遣いの予算だからです。
以上、2019年度渋谷区一般会計決算に反対する討論とします
以上
私は日本共産党渋谷区議団を代表して、認定第2号令和元年度渋谷区国民健康保険事業会計決算、認定第3号、同介護保険事業会計決算、認定第4号、同後期高齢者医療事業会計予算に反対する立場から討論いたします。
国民健康保険事業会計
新年度の国民健康保険料は、一人あたり5,865円の引上げで、13万9067円となります。その一方で、一般会計からの繰入れ金の削減は、5億2946万円にも上ります。つまり一般財源を削減したことが、保険料の値上げにつながっているのです。
国民健康保険は、憲法25条の生存権を保障する重要な社会保障制度です。一方、加入世帯は、非正規雇用労働者や失業者、年金生活者などが増え、財政負担能力が少なく、相対的に給付が多いという構造的問題があることは、政府も認めています。その結果、事業主負担のある協会けんぽに比べて、1.7倍もの保険料が国保加入世帯に重くのしかかっているのです。国民の命の平等を保障するためには、国保への公的負担を拡大することがどうしても必要です。だからこそ、全国知事会も、1兆円の公費負担を増やして保険料を引き下げることを求めているのです。
岩手県宮古市では、保険料軽減分をこの繰入金で補てんして新年度から子どもの均等割り保険料をゼロにしました。千代田区でも繰入金をほとんど減らさずに保険料を昨年に続き引き下げています。
納税者の理解が得られないとして、一般財源からの繰入れを減らし、高額な保険料を国保世帯に押し付けることは、社会保障の否定であり、こうした予算は断じて認めるわけにはいきません。
また、国保料が高くて払えない滞納世帯は3割近くに上っており、差し押さえは307件に達します。生活費非課税の立場で、生活費への差し押さえはやるべきではありません。
介護保険事業会計
介護保険料は、2018年度からの第7期計画で3,960円引き上げられ、基準額が年額7万1520円となりました。わが党区議団のアンケートでも91%が保険料負担が重いと回答しているように、年金削減などで苦しむ高齢者に重くのしかかっています。実際、普通徴収の保険料収納率は、今年2月現在77%で前年より低下しています。
また、介護度別の利用限度額に対するサービス利用率は、要支援1が約38%、要支援2が36%など低い利用率となっています。
また要支援者を介護給付から外し、無資格者に安い単価で担わせようとする緩和サービスAは、介護事業者に負担を押し付け、結局はサービスの後退を招くことになります。緩和サービスAはやめて、要支援者の介護サービスの報酬を国基準に戻すべきです。
後期高齢者医療事業会計
新年度の後期高齢者医療保険料は、高齢者を差別し高い保険料を押し付けるこの制度に反対する国民の強い世論で設けられてきた元被扶養者などへの軽減特例が、10月から完全に廃止され、年金収入80万円以下の人の保険料は、平均月380円の負担が1130円へ3倍に増えます。軽減の廃止で9割軽減だった方は722円の、8.5割軽減だった方は541円の負担増となります。区内の高齢者の46%は所得ゼロというなかで、保険料を引き上げることは認められません。そもそも、医療にかかる機会が多い高齢者だけを別の保険制度に囲い込み、高い保険料と給付抑制を押し付けるこの制度は廃止すべきです。
以上、3事業会計予算に反対する討論とします。