トマ孝二区議会議員は11月25日、第4回区議会定例会の2日目の本会議で、日本共産党渋谷区議団を代表して、長谷部区長と五十嵐教育長に質問しました。
●第4回定例会・代表質問
2021.11.25
私は、日本共産党渋谷区議団を代表して、区長、教育長に質問します。
先に行われた総選挙で市民連合と護憲野党は、安保法制の違憲部分の廃止と立憲主義の回復、核兵器禁止条約の批准、エッセンシャルワーカーの処遇改善、最低賃金の引上げや消費税減税と税負担の公平化、気候危機対策、ジェンダー平等などの共通政策を掲げ政権交代を目指しました。日本共産党は、この政策の実現へ全力を尽くすものです。
1.区民のいのちと暮らしにかかわる国政問題について
(1)憲法第9条について
質問の第1は、区民のいのちと暮らしにかかわる国政問題、平和憲法第9条についてです。
先の総選挙で自民党は、自衛隊の憲法第9条への明記や緊急事態条項の新設など「戦争する国づくり」のための「改憲4項目」を公約に掲げました。選挙後、岸田首相は、「党是である憲法改正を積極的に進めたい」と発言、日本維新の会は、来年の参議院選挙の投票日に改憲の国民投票を実施すべきだと主張しています。
米中対立が激化する中で、安保法制にもとづく自衛隊の参戦体制の強化、「敵基地攻撃能力の保有」の検討と大軍拡など「戦争する国づくり」への危険な動きが強まっています。
こうしたやり方は軍拡競争を招き、破壊的衝突を引き起こしかねません。いま求められているのは、憲法第9条を生かし、対話によって紛争を解決する平和外交です。
区長は、憲法第9条は大切だとの認識を示していますが、こうした危険な動きに反対し、平和憲法第9条を守るよう政府に求めるべきです。見解を伺います。
(2)核兵器禁止条約への署名・批准について
2点目は、核兵器禁止条約についてです。
核兵器禁止条約が今年1月に発効し、人類史上で初めて核兵器を違法とする国際法が成立しました。唯一の戦争被爆国であるわが国では、世論調査で7割が条約に賛成しており、600を超える地方議会が条約参加の意見書を政府に提出しています。ところが岸田政権は、危険な「核抑止論」に固執していることは重大です。
いま、北大西洋条約機構に参加しているノルウェーが核兵器禁止条約第1回締約国会議にオブザーバー参加すると表明、ドイツでも同条約への参加を主張する党が総選挙で勝利するなど、核兵器のない世界への流れは強く大きくなっています。
区長は、国に対して第1回締約国会議にオブザーバー参加するとともに、条約に署名、批准するよう求めるべきです。
また、子どもたちに戦争の悲惨さや被爆の実相を伝えるため、小中学生の代表を広島、長崎に派遣すべきです。合わせて区長の見解を伺います。
2.新型コロナ感染症対策について
第2に、新型コロナ対策についてです。
(1)100年に一度の災害にふさわしい区の対策について
今年8月、新型コロナ感染症が深刻な事態となり、入院できず、自宅で死亡する人が250人にのぼるなど危機的な状況となりました。渋谷では、これまで1万198人が感染し、24人が亡くなっています。
日本共産党区議団が行った「くらしと区政アンケート」には、「発熱しているのに検査が受けられない」「陽性になった家族が入院できず、同居せざるを得ない」などの不安の声が寄せられています。また「50年続けてきた飲食店だが廃業を考えている」「コロナで失業したが、新しい職場が見つからない」など56%の人が「生活が苦しい」と回答しています。それだけに、区民の実態に即した支援策の強化が求められています。
しかし、今議会に提出された補正予算の区独自のコロナ対策は、感染防止グッズの配布とライブハウスへの空気清浄機の支給などに2億5600万円を計上するだけで、困難に直面している区民への直接支援はありません。
区には、いま1100億円のため込んだ基金があります。区民から「渋谷区には、お金があるのに、なぜ区独自の感染対策や区民への支援が少ないのか」と怒りの声が上がっています。区長は、この声にどうこたえるのか、伺います。基金を活用して、感染防止対策の強化、医療機関や中小業者、区民への支援を実施すべきです。区長の見解を伺います。
(2)PCR等検査の拡大と安全・迅速なワクチン接種について
2点目は、PCR等検査の拡大強化とワクチン接種についてです。
当区では高齢者で87%、全体で76%が2回接種を受けていますが、世界でも日本でも接種をした人が感染しています。
第6波を防ぐためにはPCR等の検査を徹底していくことが大事です。政府は、新たに、健康上の理由などによってワクチン接種が受けられない人や感染拡大がみられるときに無症状者の検査をするとの方針を出しましたが、対象者を絞るなど不十分です。無症状の感染者を発見するために広く積極的な検査が必要です。
900人を超える区民から、感染拡大を防止するため陽性者を早期発見し、子どもたちや家族が安心できるよう学校等でのPCR検査を実施してほしいとの陳情が出されています。
区長は、学校、保育園、幼稚園、職場、家庭、繁華街などで、PCR検査や抗原検査が無料で、何度でも行えるよう政府に求めるとともに、区としても実施すべきです。見解をうかがいます。
当区では、12月から3回目のワクチン接種を実施します。1回目のワクチン接種のさいは、応募者が殺到し、数分でインターネットの受付は終了、電話での受付は長時間待たされるなど混乱が起きました。
3回目の接種については、電話回線を増やし、段階的に接種券を送付するとしていますが十分とは言えません。身近な出張所や地域包括支援センターで、相談・予約できる窓口を設置すべきです。区長に見解を伺います。
(3)保健所と医療体制の強化について
3点目は、保健所と医療体制強化についてです。
この夏の感染爆発で当区の保健所も土日出勤や深夜までの残業など危機的な状況でした。他部署からの応援をはじめ派遣の看護師も含めて102人の体制にしましたが、8月の残業時間は多い人で80時間に達し、区民からは、「発熱しても保健所に連絡が取れなかった」「陽性反応が出ても、保健所の指示がなかなかこなかった」などの声が寄せられました。
墨田区では、「第5波」でも、重症者、死亡者ゼロでした。それは保健所をいち早く100人体制にし、地域の病院との連携でコロナ病床を確保し、訪問診療体制を整備、すばやく抗体カクテル療法を実施したからです。また、港区では家庭内感染を防ぐためホテルを借り上げ、陽性者を保護しました。
「第6波」や新たな感染症に備え、保健所の保健師を正規職員として増員すべきです。また、区独自に病床の確保や訪問診療体制の整備、ホテルの借り上げなど、感染拡大に備えた医療体制を整備すべきです。合わせて、区長の見解を伺います。
(4)中小業者、文化芸術関係者や区民への支援について
4点目は、区内の中小業者や区民への支援についてです。
私たちのアンケートでは、営業で困っていることの1位が「収益が減った」で65%、「国や都の支援金が不十分、届かない」が37%、「廃業・閉店を検討」が22%に達しており、「音楽コーディネートの仕事をしているが、コロナ禍で取引先が海外のため補償もなく困っている」などの切実な声が寄せられています。
ところが岸田政権が打ち出したコロナ対策は、住民税非課税世帯に10万円支給は、減収しても年収が100万円以上は対象外、持続化給付金はこれまでの半額など不十分です。また、支援金をマイナンバーカード普及の手段にしていることは、認められません。
第2回定例会で私は、落語家や俳優などへの支援を求めましたが、区長は、政府や都に必要な支援を求める。区としての「支援策についても検討」すると答弁しました。
区長は、国や都に対してどんな支援を求めたのか、区としてのどんな支援策を検討しているのか伺います。直ちに経済的支援を実施すべきです。また、政府に対して、持続化給付金は増額し支給方法を改善し、家賃支援給付金の再支給を求めるとともに、区独自にコロナで収入が減っている中小業者に対して、新宿区や港区などのように固定費の支援を行うべきです。見解を伺います。
アンケートでは、くらしが苦しい原因は、新型コロナの影響による「賃金・給料の減少」や「失業・倒産」が36.8%と多数です。じっさい、ボーナスや賃金の減少が広がり、原油価格の上昇などによる物価高、教育費や住宅ローンなどもあり、生活悪化は深刻です。
区として減収した区民への助成を実施すべきです。またアルバイトなどがなくなり、生活が困難で学費も払えない区内在住の学生に対する独自の給付金を実施すべきです。見解を伺います。
3.暮らし、福祉、教育最優先の区政への転換について
(1)大企業奉仕を改めよ
第3に、大企業奉仕の区政を改め、くらし、福祉、教育最優先の区政に変えることについてです。
コロナ禍で、多くの区民や中小業者が苦しんでいるにもかかわらず、区は、大企業のもうけのための渋谷駅周辺再開発に今年度8億6300万円、総額93億円もの税金を投入、一部の民間企業のもうけを支援するスタートアップ事業やビッグデータを活用して大企業のもうけを支援するスマートシティ推進事業に合わせて2億2千万円を計上しています。その一方、国保料を値上し、新島青少年センターを廃止し、学校給食無償化など区民の願いには背を向けています。地方自治体の責務は、住民福祉の増進であり、大企業を支援することではありません。
大企業に奉仕する区政はやめて、住民福祉を優先する区政に転換すべきです。区長の見解を伺います。
(2)ケア労働者の処遇改善について
2点目は、介護職員や保育士などの処遇改善についてです。
2020年の厚生労働省の調査では、フルタイムの平均月給は、全産業平均が30万7700円に対して、介護施設職員は23万9800円、保育士24万5800円でした。
当区の特別養護老人ホームでは、低賃金で、若手職員が相次いで退職するという事態が起きており、欠員も埋まらず、残った職員はさらに過重労働となり、新たな退職者を生み出す悪循環に陥っています。私立認可保育園では、保育士が定着しないと言われています。
岸田政権は、介護職と保育士の賃金を月額9千円引き上げる方針ですが、まだ6万円近くの差がありこれでは格差是正になりません。
区長は、介護職員や保育士が将来に希望をもって働くことができるよう、政府に対し、利用者負担を増やさないで全産業平均まで賃金を引き上げるよう強く求めるとともに、区として賃金引上げの補助を実施すべきです。見解を伺います。
(3)国保料の引き下げについて
3点目は、国民健康保険料の引き下げについてです。
今年度の保険料は17年連続で引き上げられ、40代で年収400万円の夫婦と子ども2人世帯は、年間51万9270円となっています。昨年度より1万1949円の値上げで、給料の1.5ヶ月分もの重い負担です。そのため滞納世帯は25.4%で実に加入世帯の4分の1に上っています。
特に問題なのは、国保制度にしかない均等割制度で、子どもの均等割保険料は一人5万2千円にもなります。政府は来年度から、未就学の子どもに限って均等割保険料を半分にするとしていますが、所得のない子どもにまで保険料を課すことは許されないことです。
子どもの均等割を廃止するよう政府に求めるとともに、区として無料にすべきです。見解を伺います。
国保料が高すぎる要因は、政府が国保会計の50%を占めていた国庫負担を引き下げたことにあります。
区長は、全国知事会が求めているように1兆円の負担金の支出で、協会けんぽ並みに保険料を引き下げるよう、政府に求めるべきです。また、区独自に財政支援をおこなって保険料を引き下げるべきです。見解をうかがいます。
さらに、コロナによる国保料軽減については、2019年の収入との比較で実施し、休業した場合の傷病手当金は、事業主も対象にするよう政府に求めるとともに、区独自に実施すべきです。見解を伺います。
(4)特別養護老人ホームの増設について
4点目は、特別養護老人ホームの増設についてです。
10月1日現在の特養老人ホームの待機者は430人に上っており、その中には5年近く待つ人がいます。私たちのアンケートでは、充実してほしい高齢者福祉施策は38%が、特別養護老人ホームの増設で、住み慣れた地域で介護を受けたいと願っています。
区長は、特別養護老人ホームの増設をただちに実施すべきです。そのため、幡ケ谷2丁目の都営住宅跡地の取得、代々木2、3丁目の国有地の活用などを求めるべきです。また、神宮前地域に見込んでいた民間特養計画が中止となっています。ケアコミュニティ・原宿の丘の建て替えの際に整備すべきです。見解を伺います。
4.教育について
第4に、教育についてです。
(1)渋谷図書館について
1点目は、渋谷図書館の廃止についてです。
渋谷図書館は、大正4年(1915年)に渋谷区で最初につくられ、昭和52年(1977年)9月に現在の赤レンガの図書館として整備されました。座席数は133席で、区内の図書館では2番目に広く、年間5万3709人が利用しています。
図書館は、図書、記録その他必要な資料を収集、整理、保存する文化・教養施設であり、子どもから高齢者、在勤、在学者など、だれでも無料で閲覧し、利用できる社会教育施設です。だからこそ、当区としても、身近で重要な施設として、この間、本町図書館、臨川みんなの図書館、笹塚こども図書館を設置して現在の10館に増やし充実してきたではありませんか。
この間、渋谷図書館が休館していることも、修理が困難になっていることも議会にまったく報告されていません。教育委員会は、渋谷図書館の廃止について、いつ、どのような議論をしたのか。また図書館の意義と渋谷図書館が果たしている役割についてどう認識しているのか、教育長に所見を伺います。
文化・教養施設としてかけがえのない役割を果たしている渋谷図書館について、ボイラー修理にもエアコン設置にも多額の費用がかかるなどを廃止の理由にすること自体が、自治体の責務を放棄するもので、許されません。また地域住民や利用者に何ら説明せず、意見も聞かないでいきなり廃止することは、あまりにも区民無視、教育・文化切り捨ての暴挙です。
渋谷図書館の廃止は、断固撤回すべきです。区長の見解を伺います。
(2)学校給食の無償化について
2点目は、学校給食の無償化についてです。
学校給食は、子どもたちが食に関する正しい知識と望ましい食習慣が身につくよう教育の一環として実施されています。
渋谷区の学校給食費は、中学生で年間6万1476円となっています。中学生2人と小学生2人の保護者は、「毎月2万円以上の給食費はとても大変です。ぜひ無償化してほしい」と強く望んでいます。
憲法第26条の義務教育の無償にもとづき、また子育て支援として、現在、小中学校の給食を無償にしている自治体は全国で完全実施80、一部実施138に広がっています。
コロナ禍で貧困が広がる中で、学校給食無償は切実に求められています。私たちの試算では、約4億1千万円あれば実施できます。
区長は、学校給食無償に踏み出すべきです。見解を伺います。
(3)少人数学級について
3点目は、小中学校全学年での35人学級実施と30人学級をめざすことについてです。
政府は、国民の運動に押され、小学校は、2025年度までに段階的に全学年を35人学級にしますが、現在の小学3年生以上と中学生は卒業するまで少人数学級を経験できません。コロナ禍で大きなストレスを受けている子どもに寄り添うことは喫緊の課題であり、多くの保護者から、直ちに全学年での実施を求める声が広がっています。
区長は、区内の全小中学校でただちに35人学級を実施し、30人学級に向けて準備を進めるべきです。見解を伺います。