2021.11.26最終
私は日本共産党渋谷区議団として、区長に質問します。
1、気候危機対策と持続可能なまちづくりについて
最初に、気候危機対策と持続可能なまちづくりについてです。
日本でも猛暑や数十年に一度と言われる豪雨など、毎年のように地球温暖化による自然災害に見舞われています。気候危機を打開するためには、2030年までに温室効果ガスの排出を10年比で半減し、50年までに実質ゼロにして、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて1・5度以内に抑え込むことがどうしても必要です。
イギリスのグラスゴーで開かれた第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議、「COP26」では、採択した合意文書で、パリ協定で努力目標だった1.5度に気温上昇を抑えることが世界の共通目標になり、石炭火力発電の削減やさらなる目標の引き上げを求める内容も盛り込まれました。
岸田首相は、石炭火力発電に固執して国内で9か所も建設を進めようとしており、COP26の演説には、世界の環境団体で作る「気候行動ネットワーク」から、2019年に続き、2回連続で不名誉な「化石賞」が送られました。日本政府に求められているのは、世界の流れに沿って2010年比で42%と低い2030年までの削減目標を引き上げ、石炭火力と最悪の環境破壊をもたらした原発からの脱却を決断することです。
日本共産党は、気候危機打開2030戦略を発表し、40%の省エネと、再生可能エネルギーの比率を5割に引き上げることで、2030年までに2010年比で5割から6割の二酸化炭素排出量の削減ができると提案しました。火力発電でのエネルギー効率の引き上げや、製造業での廃熱利用で、大幅な省エネを進めること、また、日本の再生可能エネルギーの潜在力は現在の電力需要の5倍もあり、2030年までに50%、50年までに100%をまかなうことは十分可能です。コロナで落ち込んだ経済も、省エネ、再エネを重視したグリーンリカバリーを進めれば、新たに254万人の雇用を生み出す経済効果も見込めます。
世界では、海面上昇の影響が深刻な島国から、「国土が沈みつつある」「すべての経済活動を失ってしまう」と悲痛な訴えが出され、日本の若者もグラスゴーに行ったり、石炭火力発電所や国会前に集まり、「このままでは今の若い世代が政策を決める立場になる前に気候危機が来る」など、一刻の猶予も許されないと、世界の若者とともに行動に立ち上がっているのです。
区長は、気候危機打開の緊急性を切迫感をもって受け止めているのか、うかがいます。そして、国に対し、二酸化炭素削減目標の引き上げと石炭火力と原発からの撤退を求めるべきです。見解をうかがいます。
政府は昨年10月、2050年までに脱炭素社会を実現し、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標にする「カーボンニュートラル宣言」を発表しました。地方自治体も次々と「2050年ゼロカーボン宣言」をおこない、今年の10月末には40都道府県287市12特別区140町村の479自治体と1年間で3倍に増えました。
脱炭素にむけた各自治体の施策も加速しています。港区は4月に環境基本計画を策定し、11月には区内の電力を100%再生可能エネルギーとすることを掲げ、再エネを供給する事業者と企業や区民の契約を後押しする施策を開始しました。23区では、太陽光発電やLED照明に17区、断熱窓など住宅の省エネ化に14区など、区民やマンション管理組合、事業者に対して、19区が何らかの助成を実施し、区民、事業者ぐるみの取り組みを進めています。
ところが渋谷区は、2050年ゼロカーボン宣言もしておらず、2027年度までの二酸化炭素削減目標は31%で、東京都の38%と比べても低いままです。わが党の田中議員の質問で目標の引き上げを問われても、2年後に検討すると表明しただけで、具体的な施策は区民への啓発だけで、気候危機の中にある当事者としての認識はまったく感じられません。
2030年までの目標をやりきるための期間はあと8年間しかなく、区民や事業者とともに行動することが求められています。区長は、直ちに2050年ゼロカーボン宣言を行ない、削減目標を引き上げるべきです。
また、区施設での省エネ・再エネを率先してすすめるとともに、太陽光パネルや断熱材普及のための助成を実施し、再生エネルギーについての支援窓口の開設など、早急に具体的施策を進めるべきです。あわせて区長の見解をうかがいます。
次に東京一極集中と大型開発によるまちづくりの見直しについて
政府は、都市再生政策を「成長戦略」と位置付け、グローバルな都市間競争に勝ち抜く国際競争拠点都市をめざし、タワーマンション・複合ビルが乱立する‟東京大改造“を進行させ、渋谷でも大規模再開発が次々と計画されています。こうしたまちづくりは、東京一極集中をますます加速し、人々の移動を促進して「密」をつくり、コロナにも弱く、ヒートアイランド現象を引き起こし、住環境を悪化させるなど、持続可能な都市政策に逆行するものです。
再開発はビル建設自身で二酸化炭素を排出するだけでなく、整備されるビルの稼働で数十年にわたって大量の二酸化炭素を排出し続けます。最新の開発計画の渋谷二丁目西地区では床面積1平米あたり年間51キログラムの二酸化炭素を排出するとされ、32万2千平米のビル床が整備されれば、年間約1万6千トンとなり、明治神宮の3倍の樹木を消滅させることに匹敵します。また、渋谷駅桜ケ丘口でも25万5千平米の巨大再開発が進められ、区も美竹の旧庁舎跡地に再開発を呼び込もうとしています。今後も再開発を進める方針を切り替えなければ、二酸化炭素の排出量は加速度的に増えることになります。
渋谷駅桜丘口や渋谷二丁目西地区、美竹をはじめ、区内で進められている、東京一極集中を加速し、温暖化対策にも逆行する大企業のための再開発はやめて、持続可能なまちづくりに転換すべきです。区長の見解をうかがいます。
2、子育て支援について
次に子育て支援について伺います。
・認可保育園の増設と保育の質の向上について
今年4月、どの保育施設にも入れない児童数はゼロとなりましたが、認可園を希望した子どものうち312人は入園できませんでした。現在、来年4月からの認可園の入園申込が行われていますが、新年度の新設園が一つもないため、募集定員は、0歳児は514人と昨年比で3人増となったものの、1歳児は531人、2歳児は107人に減少し、昨年と同じ0歳児556人、1歳児642人、2歳児143人の応募があれば、認可園に入れない子どもが、低年齢児を中心に昨年を上回って発生し、どの保育施設にも入れない子どもも生まれかねません。
認可保育園への入園を保障するのは児童福祉法に定められた区の責務です。区長はすべての希望する子どもが入園できるよう、認可保育園の増設を行うべきと考えますが、見解をうかがいます。
渋谷区にとって保育の質の向上が課題となっていますが、保育の質を決定的に左右するのは職員の配置です。国が定めている認可保育園の保育士配置基準は、0歳児で子ども3人に1人、1、2歳児で6人に1人、3歳児で20人に1人、4、5歳児で30人に1人となっています。しかし、2~30人の子どもをひとりの保育士が見る保育では、一人ひとりの子どもに寄り添った保育はできず、配置基準通りの保育士では人手が足りないというのが保育現場の実態です。
海外の保育士配置基準は、3歳以上ではニューヨーク州やイギリスで7~9人に1人、フランス、ドイツでは13人に1人となっており、日本の基準はあまりに低いと言わざるをえません。
区内の認可園は、待機児解消を優先して開設された施設も多く、保育室の広さも面積基準ぎりぎりで子どもが詰め込まれ、園庭のない保育園は、区立で18園中9園、認定こども園で12園中9園、私立では40園中31園で、7割にものぼります。近くの公園で遊ばせようとしても、1人の保育士が20人、30人の子どもを連れていくことはできず、各園の自助努力で人手をやりくりしているのが実態です。
保育の質を高めて、子どもの健やかな成長を保障するために、国に保育士配置基準と面積基準を引き上げるよう求めるとともに、子どもの外遊びを保障するために、区として園庭の確保を支援したり、園庭のない保育園に保育士を加配すべきと考えますが、区長の見解をうかがいます。
・子ども医療費の高校生までの無料化について
出産や子育てにかかる重い自己負担が、コロナ禍で一気に表面化し、非正規などの不安定な雇用を増やしてきた政府の責任が問われています。18歳以下の子どものいる世帯への給付金にとどめず、未来を担う子どもたちが健康で健やかに成長するための経費を、社会全体で支えることが求められています。
厚労省は9月7日に、令和2年度の乳幼児等医療費に対する援助の実施状況についての調査結果を発表しました。それによると、全都道府県と市区町村が実施していることに加え、高校生までの医療費無料化は、入院のみ実施を含めると前年度から84ふえて799自治体、46%にひろがり、この1、2年で過半数を超える見通しとなっています。都道府県では福島、静岡、鳥取県が入院、通院とも、茨城県が入院医療費の、23区では、千代田区が通院、入院とも、品川区と北区が入院医療費の無料化を実施しています。
共産党区議団のくらし・区政についてのアンケートには、「子どもが高校、大学生になって学費が高いうえに医療費負担が大きく感じられ、つらい」という声が寄せられています。
すべての子どもが安心して医療にかかれるよう、子どもの医療費無料化を国の制度として実施するよう迫り、東京都にも対象年齢の引き上げを求めるとともに、区として高校生までの医療費無料化を実施すべきと考えますが、区長の見解をうかがいます。
・出産助成金の増額について
現在、各種健康保険から支給される出産育児一時金は42万円で、渋谷区の出産助成(ハッピーマザー助成)を満額受けても52万円までしか賄えません。区内の平均的な出産費用は、約61万円で、10万円近い自己負担となっており、差額ベッド料がかかれば、さらに重い負担がのしかかります。
港区では、出産助成額の上乗せを求める区民の声にこたえて、区内の出産費用平均額が73万円かかることを調査して把握し、出産費用助成金の上限額を18万円から31万円に引き上げて、73万円までの出産費用について、自己負担がなくなるよう助成を拡大しました。
当区でも、差額ベッド代を含めた出産費用の実態を調査し、出産助成金を実態に見合ったものに増額すべきと考えますが、区長の見解をうかがいます。
・子育て世帯、若者向けの家賃補助について
住宅は、すべての生活の基盤となるもので、安心して住み続けられる住居を保障することは、区民の人権を守る自治体の責務となっています。
とくに渋谷区では、地価が高いため、安心して住み続けるための居住支援が強く求められています。当区では、バブルの時代に区民が住み続けられるよう家賃補助制度を実施しました。また、2010年度には定住・少子化対策として、単身、夫婦や子育て世帯に3万円から5万円を助成する家賃補助制度を実施しましたが、区は翌年には単身向けを廃止し、世帯向けについても2014年度からは新規募集を中止したため、昨年度末で定住家賃補助の期間が終了しました。
非正規で働く若者や子育て世代にとって、家賃負担の重さは区内で住み続けるうえで最大の障害になっています。コロナ禍で雇い止めになった寮住まいの若者は、国の家賃支援給付金も受けられず、職とともに住まいを失うことになります。また、当区の出生数は、2019年をピークに再び減少に転じていることからも、若者や子育て世代の家賃補助は、渋谷区にとって喫緊の課題です。
23区では、千代田、新宿、目黒、豊島、北の各区で、子育て世帯向の家賃補助や転居などに対する助成を行っています。当区でも若者や子育て世帯向けの家賃補助を復活すべきと考えますが、区長の見解をうかがいます。
また、区は、地域活性化住宅として、アクティブ住宅新橋に子育て世帯に対する定期使用住宅を設けていますが、使用期限が残りわずかとなった世帯から、「コロナで収入が減り、転居するための費用が賄えなくなっている」という悲痛な声が寄せられています。
コロナ禍で収入が減少した期限付き入居世帯に対しては、使用期間について実態に即した柔軟な対応をするよう求めます。区長の見解をうかがいます。