牛尾まさみ議員は、渋谷区令和4年度一般会計予算、同国民健康保険事業会計予算、同後期高齢者医療事業会計に、それぞれ反対する討論を、いがらし千代子議員が、「国民健康保険料を引き上げないことを求める請願」に対する賛成討論を行いました。
2022.3.25 牛尾
私は、日本共産党渋谷区議団を代表して、議案第15号 令和4年度渋谷区一般会計予算に反対する討論をおこないます。
新型コロナウイルスの感染第6波では、オミクロン株により介護・障がい者施設だけでなく学校、幼稚園、保育園などにも感染が広がり、感染者数も死者数もこれまでを大きく上回りました。感染のピークは過ぎたとはいえ、今も収束の見通しは立っていません。区民のいのちと健康が脅威にさらされ、くらしや営業はかつてなく深刻な影響を受けており、今ほどいのちとくらしを守る自治体の役割が求められているときはありません。
ところが、区長が提出した新年度の予算案は、コロナ対策はもっぱら、国や東京都まかせで、区民のくらしや営業を直接支援する区独自の施策はありません。
また、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料を引き上げてくらしを圧迫し、渋谷図書館を廃止して教養や文化の拠点を奪おうとしています。その一方で、渋谷駅周辺再開発への多額の税金投入や、公園や区有地を使った営利事業を拡大するなど、自治体本来の役割を放棄するもので認められません。
日本共産党渋谷区議団が提出した予算修正案は、1211億円の基金を活用して、コロナ禍で困窮する区民や中小事業者を支援することをはじめ、予算の約5%の使い方を切り替えれば、多くの区民の願いが実現できることを示しました。以下5点にわたって予算に反対する理由を述べます。
第1に、新型コロナ対策が極めて不十分であるからです。
当区のコロナ対策は、感染が拡大してから国や都の施策に基づいて補正予算を組むやりかたで、日ごろからの感染症に対する備えがありません。新型コロナ感染症が今後も続くことは明らかであり、いつ感染拡大が起こっても対応できるようにすることが求められています。
●検査の抜本的拡充
ワクチン接種とPCR等検査について、新型コロナの感染拡大を防ぐためには、予防と診断を抜本的に拡充することが求められています。しかし、予算で検査費用を削減していることは認められません。希望するすべての区民に対し、ワクチン接種を安全、迅速に受けられる体制づくりを国や都と連携してすすめるとともに、PCR等検査の抜本的拡充が必要です。介護施設や障がい者施設、学校や幼稚園・保育園などでの感染拡大を防ぐための定期的検査ができるようにすべきです。また、感染状況に即して無症状の人を含め、いつでも誰でも無料で検査できるようにすべきです。
●区民、中小業者への支援
区民、中小事業者への支援では、低所得者や子育て世帯のくらしを守り、小規模零細事業者が事業を続けられるように、国や都の支援の届かない人たちにきめ細かい支援を行うことが必要です。しかし、予算には区独自の直接支援はなく認められません。足立区が実施したように、基金を活用して世帯所得が200万円以下の世帯に対する10万円の給付金を支給すべきです。
●保健所の体制強化
保健所の体制強化では、新年度の保健師の定数を1人しか増員しておらず、全く不十分です。今後の新型コロナや新たな感染症に備えて、常勤の保健師を増員するとともに、墨田区のように保健所で検査が実施できるよう、検査技師の配置などの体制強化をはかるべきです。
第2に、区民が必要とする認可保育園や特養ホームの増設に背を向け、渋谷図書館など福祉・教育を切り捨てていることです。
区長はこれまで、山中高原学園、富山臨海学園、新島青少年センターなど、教育や青少年のための施設を次々と廃止してきましたが、新年度からは、区立渋谷図書館を廃止し、区が各地域に図書館をつくってきた方針を転換して公共施設の統廃合に踏み出し、区民が求める施設の増設にも背を向ける姿勢を続けていることは許されません。
●渋谷図書館の廃止
渋谷図書館は区民の教養と文化のための大切な社会教育施設で、子どもからお年寄りまで年間5万3千人が利用していますが、区は改修も建て替えもせずに廃館することを決め、運営経費を全額削除していますが認められません。廃止を知った区民からは、「子どものための施設が次々となくなっているのに図書館まで廃止するなんて納得できない」「憩いの場、学びの場を区民から取り上げて何に変わるのでしょうか。絶対に必要です」などの声が寄せられ、本定例会には、5764人もの廃止の見直しを求める請願が寄せられています。区民をはじめ多くの人々が利用している渋谷図書館を廃止する理由はなく、存続して住民や利用者の意見をふまえて今後のあり方を検討すべきです。
●認可保育園の増設
認可保育ある園は、今年4月入園申込みで、ゼロ歳児53人、1歳児54人が募集定数を上回り、入れない子どもが出ることは明らかです。来年度の認可保育園の整備はわずか1件で、ゼロ歳児も、1歳児も各6人しか増えず、すべての希望者に認可基準の保育が保障されていないのに保育実施義務を放棄することは認められません。ただちに今後の増設計画をたてるべきです。
●特別養護老人ホーム増設
特養ホームの入所待機者は昨年10月時点で430人もいるのに、区は代々木二・三丁目の国有地の取得を断念したまま、新たな増設計画を示していないことは許されません。定期借地権での活用や、幡ケ谷二丁目の都営住宅跡地や本町一丁目の警察寮跡地の取得、ケアコミュニティ原宿の丘の再整備など、あらゆる手法を駆使して特養ホームを整備すべきです。
●区型介護サービスの削減
区型介護サービスは、国が制限した軽度者や同居家族がいる世帯のサービスを区独自に提供し、高齢者の生活を支える全国に誇れる制度です。区長は、区分限度額を超える利用を認めず、総合事業の緩和サービスに置き換えて年々削減し、新年度も492万円削減していることは認められません。
●低所得者向けの施策
生活保護や家賃補助などは、低所得であっても人間らしい生活を営めるようにするための、区民にとって命綱の制度です。区は生活保護の夏冬の見舞金を廃止したまま復活しようとせず、住宅扶助の基準では3分の1近い受給者が家賃の全額を賄えていないのに、特別基準を適用せず、生活費を削って家賃に回している事態を放置していることは許されません。区民生活の底上げを図るため、生活保護の法外援護の見舞金を復活し、住宅扶助の特別基準を適用すべきです。また、昨年度で若者や子育て世帯向けの家賃補助制度が終了したにもかかわらず、予算にはあらたな補助制度の実施はなく認められません。区営住宅の増設と、終了した家賃補助制度を復活し、住み替え家賃補助の補助額を引き上げて、低所得者が区内で安心して住み続けられるようにすべきです。
第3に、子育て支援の充実など区民の切実な願いに背を向け、福祉増進の役割を放棄していることは認められないからです。
●少人数学級の推進
少人数学級の効果が広く認められ、長年の関係者の運動に押されて、国は小学校の35人学級の段階的実施に踏みきりました。渋谷区では新年度7人の教員を増員すれば小中学校全学年での35人学級が実現できます。速やかに実施し、さらに30人以下学級へと少人数学級を推進すべきです。
●高校生までの医療費無料化
高校生までの医療費無料化は、東京都が来年度からの実施を打ち出し、当初の3年間は補助額の全額を助成することを決めました。保護者からも強い要望が出されており、全国的にも高校生までの無料化が主流になりつつあります。東京都の実施を待つことなく、区として速やかに実施を決断すべきです。
●小中学校の給食無償化
小中学校の給食無償化は、憲法第26条の義務教育無償の原則にもとづく要請であり、子育て支援の施策として、全額無償が80自治体、一部実施が138自治体となっています。学校給食は、子どもたちが食に関する正しい知識と望ましい食習慣が身につくよう教育の一環として実施されているものだけに、ただちに無料化すべきです。
第4に、コロナで苦しむ区民に背を向ける一方で、財界戦略に従い国際競争力を高め、大企業のもうけを最優先にするとともに、無駄遣いの施策を温存しているからです。
●渋谷駅周辺再開発
渋谷駅桜丘口地区再開発は、多くの住民や小規模事業者が追い出され、東急中心の再開発になっていますが、新年度は27億8600万円が計上され、23年度には29億8400万円が見込まれています。また、駅街区北側自由通路に5億6千万円、南口北側自由通路にも1億5200万円が投入されます。大企業中心のまちづくりのために多額の公金をつぎ込むことは認められません。
●ステップアップ事業、パークPFI
区の美竹第二庁舎と区立美竹公園を、東京都の旧児童会館跡地と一体の敷地として、民間に定期借地させ、営利事業を展開させるステップアップ事業や、北谷公園に続き恵比寿南一公園をパークPFI手法で整備しようとしていますが、これらは、民間事業者の資金で区有地や公園に施設を作らせ、営利事業を営むことを可能にするものです。区は新年度、玉川上水旧水路緑道公園でもパークPFIの検討を継続しますが、大企業の利益のために区民の大切な財産である公有地を差し出すことは認められません。
●スマートシティ推進
スマートシティ推進事業には、渋谷区の様々な情報を官民で利活用するためのシティダッシュボードの整備などに1億1725万7千円が計上され、交通調査、コミュニティバス、放置自転車などの情報を活用するとしています。政府が成長戦略として描くスマートシティは、営利企業とともに個人情報を官民で利活用するもので、住民のプライバシー権の侵害や監視社会に道を開くものです。個人情報の利活用については、自己コントロール権を確立し、住民合意を前提にして行うべきです。
●河津さくらの里しぶや
河津さくらの里しぶや運営として、運営費に1億2073万3千円、施設維持管理費に157万8千円が計上されています。今年度の利用者はコロナ禍の影響で1月までの宿泊者は2869人にまで落ち込みました。無駄遣いがいよいよ明らかになっているのに、新年度予算には、駐車場に大型バスが出入りできるようにと、隣地の土地購入を検討するための鑑定評価の経費71万6千円を計上していることは、無駄遣いを拡大するもので認められません。この施設は廃止すべきです。
第5に、区民や議会に説明し、意見を聞くこともなく、トップダウンの区政運営をすすめているからです。
区長は、渋谷図書館の廃止について、住民や利用者に対する説明会も行わず意見も聞かず、議会にも報告しないまま、廃止をトップダウンで決め、廃止条例を議会に提出しました。昨年の第4回定例会で住民への説明が一切ないなどとして議会が表決をせず、継続審議にしても、今定例会での所信表明で一切の説明も反省の言葉もありませんでした。
また、代表質問への答弁の中で、学校関係者への事前の説明も了解もないまま、突然広尾中学校の建替えの際に複合化する方針を表明しました。
区長が示した方針通りに建て替えが進められれば、今年、広尾中学校に入学する生徒は、高校受験を控えた3年生になった時から旧青山病院跡地に建設予定の仮設校舎に移らなければなりません。学校選択制の希望校を申し込む際には、全く知らされないまま、不便な仮設校舎で受験生としての生活を送らなければならなくなるなど、子ども達を無視した建て替えが新たな矛盾を拡大しています。
区民に重大な影響を与える施策をトップダウンで決めることは、住民自治の原則に反し、区民の区政に対する信頼を損ねるもので認められません。区長の姿勢を改めることを強く求めるものです。
以上、令和4年度渋谷区一般会計予算に反対する討論とします。
私は日本共産党渋谷区議団を代表して、ただいま一括議題となった3議案のうち、議案第16号 令和4年度渋谷区国民健康保険事業会計予算、議案第18号 同後期高齢者医療事業会計各予算にそれぞれ反対の討論を行います。
はじめに国民健康保険事業会計予算についてです
予算案で示された新年度の保険料の値上げは、医療分の均等割が3300円、賦課限度額が3万円で低所得者ほど重い負担増になります。年収400万円の40代夫婦と学齢期の子ども2人の世帯では7041円の値上げで52万6311円となり、収入の13%を占め、協会けんぽ加入世帯と比べて2・3倍に格差はますます広がります。また、保険料の滞納率は23・14%にのぼっており、誰もが無理なく払える保険料にすることが強く求められています。
国保料は被保険者の実態をふまえて区市町村が決定することになっており、コロナ禍の住民の生活を考慮して、都内では立川市、稲城市が新年度の保険料を据え置くことを決定しています。また、保険料の据え置きは23区の区長会でも提案されたと聞いており、コロナ禍の区民生活を考えれば、実施すべきでした。
新年度から、未就学児の子どもの均等割保険料が半額に軽減されることは、保険料の軽減を求める世論と運動にこたえるものとして評価するものですが、そもそも、他の医療保険制度にはない人頭割の保険料であるだけに、さらに進めて対象年齢を18歳までに引き上げ、保険料を無料にすべきです。
国保の被保険者には自営業者や非正規雇用の労働者など、低所得の方が多く、暮らしはコロナ禍でいよいよ厳しさを増しています。社会保障としての国民健康保険制度の否定につながる保険料引き上げの予算案は認められません。
次に、後期高齢者医療事業会計予算についてです。
令和4・5年度の保険料率は、均等割が2300円、所得割が0・77%、賦課限度額が2万円、それぞれ引き上げられることにより、渋谷区では、平均で2万4667円増の18万9739円となる大幅な引き上げになる見込みです。
また、今年10月から、課税所得が28万円から145万円の高齢者の窓口負担が2倍に引き上げられ、対象となる全国で370万人、区内で約4400人の高齢者にとっては、負担増で医療がうけにくくなります。高齢者からは「生活と健康をてんびんにかける選択が迫られる」と怒りの声が上がっています。
後期高齢者医療制度は、制度発足の直前に厚労省の幹部が「医療費が際限なく上がっていく痛みを、後期高齢者が自分の感覚で感じ取っていただくことにした」と語っているように、高齢者に際限のない負担増を押し付け、痛みを強いる社会保障の名に値しない制度です。東京都後期高齢者医療広域連合が示した保険料算定の見通しでは、今後団塊世代が75歳になって急速に給付が増えていくことが予想され、ますます保険料の値上げが苛酷になっていきます。
国民の医療を守る国と自治体の役割を発揮するため、この制度を廃止して元の老人医療制度に戻し、国や都の負担を増やして、高齢者が安心してかかれる医療保険制度を構築すべきです。
以上、国民健康保険事業会計予算および後期高齢者医療事業会計予算に反対する討論とします。
私は日本共産党渋谷区議団を代表して ただいま議題となりました国民健康保険料を引き上げないことを求める請願に 賛成の立場から討論します。
本請願は渋谷社会保障推進協議会ほか36団体から提出されたものです。請願者は、毎年値上げされ高すぎる国保料に、加入者から通知が来るたびに「払えない」「払ったら生活を維持するのが困難」などの声があがり、2021年度の滞納世帯率も25%を超え過酷な実態になっているとのべています。また、2年に及ぶコロナ禍で営業も雇用も暮らしも厳しい状態が続いていることから、高すぎる国保料を引き上げないこと、国保料の抜本的な改善と均等割りを軽減するための財政措置を国と都に求めること、18歳までの子どもの均等割りの軽減を国に求めることの3点を求めています。
請願に賛成する理由の第1は、2年余りになる新型コロナウイルス感染拡大による売り上げや収入減少、非正規雇用の人たちの失業などが増加している中で区民生活をさらに圧迫する 国保料の値上げは認められないからです。
わが党区議団が昨年秋から今年の初めまで行った区民アンケートでは、56%の人が生活は苦しくなったと答えています。年金暮らしの高齢者からは、年金の受取額は毎年減らされ続け、そこから介護保険料や国保料を払ったら生活がなりたたないとの怒りの声や、シングルマザーでダブルワークをしていた方からは、収入が半分になってしまい子供に我慢をさせているのがつらい、など深刻な実態が寄せられています。
区長提案の2022年度の保険料の値上げは18年連続となり、その内容は医療分と支援金分の合計で、所得割を0.1%引き下げるものの、均等割りで3300円引き上げるため、区民一人当たりの保険料は、5272円値上げの139,091円となり、23区平均の131,813円より7,278円高くなっています。結果として当区では、未就学児のいる世帯を除くほとんどの世帯が引き上げとなり、低所得者により重い負担がかかるのです。
都内では自治体独自の財源で立川市と稲城市が保険料を値上げせず、据え置きました。当区の保険料据え置きに必要な額は、2億7267万円です。21年度の繰越金を活用すれば実現できるのです。
賛成理由の第2は、子どもに均等割りを課しているのは、国保だけでほかの医療保険にはありません。子どもが一人増えるごとに保険料が増えることは、子育て世帯に重い負担となっており廃止すべきだからです。
長年子育て世帯の人たちが子供の均等割りをなくしてほしい、との声を全国であげ続けた結果、全国の首長も国に対して財源措置を求め2022年度から未就学児の均等割りの半額を国2分の1、都・区が4分の1ずつ公費負担することとなりました。
しかし、渋谷区で18歳以下の子供の加入見込みは、3887人でそのうち半額軽減になる子供は1440人で、残りの2447人は大人と同じ55,300円の均等割りを負担することになるのです。実際年収400万円の夫婦2人と学齢児2人の4人世帯の国保料は前年度より7041円の値上げで、52万6311円となり、協会けんぽの228,830円の2.3倍にもなっています。18歳以下の子供たちの均等割りをなくすことは、1億1202万円で実現できるのですから実施すべきです。
賛成理由の第3は、国民健康保険制度は国民皆保険制度の根幹であり、国と地方自治体が最優先すべき社会保障制度だからです。
国民健康保険法の第1条目的では、国保事業の健全な運営を確保することをもって社会保障および国民保健の向上に寄与するとしています。また、国、都、区の責務として、国は、国保事業の運営が健全に行われるよう必要な措置等を積極的に推進する。都は、安定的な財政運営等について中心的役割を果たすと規定されています。しかし、国の国保に対する国庫負担割合は、2005年まで40%だったものが2006年から2011年まで34%に、さらに2012年から現在では32%に削減しているのです。元に戻すべきです。とりわけ2022年度の国保料値上げの大きな要因は、急拡大した新型コロナウイルス感染症の医療費の増大で、国保で賄うのではなく23区区長会が求めたように106億円のコロナ医療費分は、公費で負担すべきで保険料を値上げすることは認められません。以上賛成討論とします。