3月25日の区議会本会議で、田中まさや議員が「渋谷区組織条例の一部を改正する条例」に、トマ孝二議員が、渋谷図書館を廃止するための「渋谷区立図書館条例の一部を改正する条例」に、それぞれ反対する討論を行いました。
●議案第3号 渋谷区組織条例の一部を改正する条例
私は、日本共産党区議団を代表して、ただいま議題となりました。議案第3号渋谷区組織条例の一部を改正する条例に反対の討論を行います。
本案は、渋谷区組織条例にデジタルサービス部、産業観光文化部、生涯活躍推進部、まちづくり推進部を新設し、財務部を廃止するとともに、これにともなって各部の所掌事務を移動または整理するものです。
反対理由の第1は、組織改正によって、渋谷区の組織の在り方を、いっそう大企業の儲けに奉仕する体制にしようとしていることです。
今回の組織改正では、デジタルサービス部を創設し、デジタルサービス推進担当課を新設、スマートシティ推進室を経営企画部から移管することで、自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、行政サービスの質の向上を図るとしています。
政府と財界は一体となって新自由主義経済政策をすすめ、国民のいのちと生活を守ってきた規制を緩和し、格差と貧困をひろげてきました。渋谷区でも容積率の緩和などで渋谷駅周辺再開発などの大規模開発をすすめ、PFI/PPPなどで公共サービスや空間を民間営利企業に利活用させ、大企業の儲けに奉仕しています。
さらに政府は、個人情報をもうけの種にした「ビッグデータ利活用」を成長戦略として位置づけ、官民データ活用推進法やデジタル改革推進法と自治体DXによって、行政手続きや業務のオンライン利用を原則化し、国や自治体保有の個人情報を民間企業が活用できるようにしました。自治体DXについて、経済産業省のガイドラインは、「業務そのものや組織、プロセスなどを変革し競争上の優位性を確立する」と定義しており、データの利活用が優先され住民サービスの後退や、個人情報の保護も後回しにされかねません。
今回の組織改正は、財界戦略に沿って個人情報の利活用による大企業の利益追求を可能にする体制を構築するものであり認められません。まず個人情報やプライバシー権保護のルールを確立すべきです。
デジタル化は利便性の向上の面で必要ですが、デジタル化が自体が目的となり、住民サービスが後退する事態が起きています。中小企業の持続化給付金の申請は、オンラインに限られたため、インターネットを使用しないかできない個人零細事業などの利用に大きな障害となりました。渋谷区でも、コロナワクチン接種の予約で、インターネットを利用しないかできない高齢者などが予約しにくいという事態がすでに発生しています。
渋谷区の責任は、すべての区民に等しく福利を受ける権利を保障するために、だれ一人取り残さず行政サービスを提供することであり、デジタルを利活用できない区民への支援こそ重視すべきです。
今回の組織改正は、渋谷区の組織を、個人情報の利活用による大企業の利益追求に奉仕する体制をくるもので認められません。
反対理由の第2は、図書館、社会教育館を生涯活躍推進部へ、美術館、郷土博物館・文学館、文化財保護を産業観光文化部へ、それぞれ教育委員会の所管から区長部局へ移すことです。条例案の付則では、「図書館、郷土博物館・文学館、美術館及び社会教育館の設置、管理及び廃止に関する」権限を「教育委員会」から「区長」に変えています。つまり、すべての権限を教育委員会からはずし、区長が握るものです。
これでは、社会教育のための施設を、区長の独断で、施設や事業の改廃や、他施設との複合化・共用化、有料化もできることになり、あらゆる人の学びの機会を広く無料で保障する社会教育の視点より、産業振興や儲け、効率化が優先され、区民から社会教育や文化・教養・教育の機会を奪いかねません。
質疑の中で、今回の条例改正の中に、これまで同様社会教育の機会が保障されることを担保する条項はないことや、23区の中で、図書館や社会教育館、美術館などを区長部局に移している区はないとこも明らかになりました。
すでに、長谷部区政は、区民や青少年の大切な施設である富山臨海学園や山中高原学園、新島青少年センターを廃止し、今度は、トップダウンで渋谷図書館まで廃止しようとしています。これまで教育委員会の所管にある社会教育の施設については、教育委委員会で、教育的な視点から集団的に熟議して決めていたものが、今回の組織改正によって区長のトップダウンで決められることになります。
国会が根拠法の改正の付帯決議で「公共社会教育施設が国民の知る権利、思想・表現の自由に資する施設であること」に「格段の配慮」を求めたのは、社会教育の視点が後回しにされる危険性を指摘したものに他なりません。
渋谷区のかけがえのない社会教育の場を奪いかねない組織改正は認められません。社会教育館、図書館、郷土博物館・文学館、文化財保護は、教育委員会にとどめるべきです。
以上、反対討論とします。
●議案第43号 渋谷区立図書館条例の一部を改正する条例
議案第43号 渋谷区立図書館条例の一部を改正する条例について、私は日本共産党渋谷区議団を代表して、反対の討論を行います。
私が、本条例に反対する理由の第1は、地域の宝もので、文化・教養・教育の拠点である渋谷図書館を廃止することは許されないからです。
渋谷図書館は、大正4年(1915年)に渋谷区で最初につくられた図書館で、昭和52年(1977年)に現在の東1丁目に移転改築され、昨年度は1日200人、年間53700人が利用する図書館です。
利用者や住民にとって渋谷図書館は、静かな環境で本や資料を閲覧し、学ぶことができる。子どもたちは、児童室で好きな本を読むことができるかけがえのない施設となっています。
区立図書館について、条例の第1条で「区民の教養・調査研究、レクリェーション等に資する」と定められています。その大切な施設である渋谷図書館を一方的に廃止することは、条例に反し、区の責任を放棄するもので、断じて認められません。
反対理由の第2は、区が渋谷図書館の廃止理由に挙げた老朽化の責任は区にあり、廃止の根拠として成り立たないからです。
渋谷図書館の廃止理由について、長谷部区長は突然、エアコンが故障し修理不能、建物が老朽化し、雨漏りしているなどとしています。
しかし、渋谷図書館がこうした状況になっていることについて、長谷部区長は、区議会はもとより、利用者や住民に一切しらせず、突然廃止を打ち出してきたのです。このやり方は、あまりにも乱暴で道理がなく、区議会は全会派一致で継続審議としました。また、地元住民は渋谷図書館を存続してほしい、という声をあげたのです。
今回の渋谷図書館を廃止するという事態が起こったのは、屋上防水工事を30年もせず、雨漏りを発生させてしまった区の施設管理に責任があります。この責任にほうかむりし、利用者・住民に負担や不便をかけ、挙句の果てに廃止を強行することは行政として許されないことです。
どんな公共施設でも、老朽化すれば、休館して、改修や建て替えるのが当たり前です。老朽化は条例上の廃止の根拠として成り立ちません。この条例こそ廃案にすべきです。
改めて、長谷部区長の区民の大切な文化施設である図書館を廃止するという姿勢が厳しく問われています。
第3の理由は、区長のトップダウンで、住民の声を無視して廃止を強行することは認められないからです。
区民の共有財産である渋谷図書館について、現状を利用者や地域住民に知らせ、どのように改善していけばよいか、話し合いを進めていくべきですが、そうしたことも行わず廃止することは、利用者、住民無視の暴挙と言わなければなりません。
今議会で長谷部区長は、渋谷図書館について、突如、広尾中学校を建て替えて、そこに図書館を設置すると発言しました。委員会の質疑では、広尾中学校の図書館の設置自体今年1月に決められたことが明らかになりました。当然、広尾中学校に今年入学する新1年生は、まったく知らされないまま学校を選択し、区長の提案した計画通り進めば、中学3年生の受験期は、仮設校舎での不自由な生活が余儀なくされることになります。子どもや学校関係者、住民にとってこれほど理不尽な話はありません。
しかも広尾中学校の建て替え自体が、関係者の合意形成が得られるかもわからず、図書館存続のロードマップと言えないもので、区民を欺くものです。
廃止条例が提案されて以来、日本共産党区議団には、存続を求める多数の声が寄せられています。「渋谷図書館は立地が良く、行くことが楽しみでした。コロナ禍で収入が減ったり、失業を余儀なくされ本を買う余裕のない人が多いと思います。そんなとき本に出合うことができるヒントや元気をもらえると思う場所です」「渋谷図書館は、30数年前から子どもたちが利用し、また孫たちも利用していた図書館です。親として子どもの成長を喜び安心して通わせられる場所でした。ぜひ、地域住民から文化的施設を奪わないでください」などの声が多く寄せられています。
また、今議会に5764人という大勢の方から「渋谷区立図書館の廃止条例見直しを求める請願」が提出されており、100年の歴史があり、利用者が多く、地域の宝ものである渋谷図書館を存続してほしいという願いが込められたものです。
今回の条例は、利用者、住民の願いに反し、区民の大事な文化・教養・社会教育の施設を区長の独断で廃止するもので、まったく道理のない条例であり、どう考えても認めることはできません。否決すべきです。
以上、反対討論とします。