2022年第3回定例会一般質問
2022.9.9
私は日本共産党渋谷区議団として、区長に質問します。
⑴こどもの権利条約と子育て支援について
①子どもの権利条約について
日本の子どもの貧困率は13.5%、ひとり親家庭では48.1%に達しています。ところが日本の子ども関連予算はGDP比1.65%で、3%超のイギリスやスウェーデンの半分程度にすぎません。日本政府も批准している、子どもの権利条約の「生命、生存、成長の権利」、「最善の利益」、「意見の尊重」、「差別の禁止」の4原則に沿った子育て支援の強化は待ったなしです。
国が来年度から施行する「子ども家庭庁設置法」には、「子どもの権利条約」という文言すらなく、国連が子どもの権利をまもる独立機関として設置を勧告している「子どもコミッショナー制度」は盛り込まれていません。
区長は、政府に対して、子どもの権利条約の立場で、子育て関係の予算と子どもの支援体制を抜本的に拡充するよう求めるべきです。所見を伺います。
東京都は昨年4月に「東京都こども条例」を制定し、条例をわかりやすく伝えるため小、中、高校生ごとにハンドブックやこどもHPを作成し、子どもにかかわるテーマごとに、当事者が参加する「こどもシンポジウム」を開き、実際の施策に活かしています。
第1回定例会にわが党が議員提案したように、渋谷区でも「こども条例」を制定し、こどもが意見を言える場を広く確保し、政策に活かすとともに、「渋谷区こどもコミッショナー制度」を創設すべきです。区長の所見を伺います。
②子育て支援について
住民が強く要望し、わが党区議団が求めてきた高校生の医療費無料化が来年度から実現しますが、内閣府の2021年の報告書によれば、過去1年間に必要な食糧が買えなかった経験は全体の11.3%、母子世帯では32.1%に達します。親の経済的格差が子どもに影響する「貧困の連鎖」を断ち切る行政の責任が引き続き問われています。
子ども食堂を運営している方から「昼間だけの運営では、保育園の迎えで遅くなる子どもには届けられない。支援の必要な子どもすべてに届くことが必要だ」と、支援の強化を訴えられました。
中野区では2020年に実施した「実態調査」をもとに、子どもの貧困対策を区の「基本計画」に盛り込み、総合的対策を進めています。
子育て支援の抜本的強化のために、まず、区内の子どもがおかれている経済的状態を把握する、「子どもの貧困実態調査」を行うべきです。区長の所見を伺います。
シングルマザー世帯の平均年収は200万円で公的支援などを加えても348万円にすぎず、子どものいる世帯の平均707万円の半分以下で、コロナ禍と物価高で、さらに貧困が拡大しています。
シングルマザーを様々な支援につなげるためのワンストップ相談窓口に、常勤の女性相談員を配置するとともに、区独自の助成を行うべきです。区長の所見を伺います。
③ヤングケアラー支援について
国が2021年度に行ったヤングケアラー実態調査では、小学生から大学生の5~6%が家族の世話をしていると答えています。家事に加え、両親などの見守りや外出時の付き添いなどのために、遅刻、欠席が増え、授業中の居眠りなどの学校生活、友人関係、本人の健康への悪影響が指摘されています。
ヤングケアラーの多くは、自分がケアするのが当然と考えているだけに、学校などと連携して現状をリアルに把握し、踏み込んだ支援を行うことが求められます。
区として、こどもが家事にかかわる時間などの実態調査を行うとともに、介護、サポート、生活など複合的な問題に対応し必要な支援につなげるワンストップ相談支援窓口を設置し広く周知すべきです。区長の所見を伺います。
①認可保育園の待機児解消について
児童福祉法第24条は、保育を必要とする子どもを保育所で保育することを、自治体の責務としています。区長は、第2回定例会の答弁で349人の子どもが認可園に入れなかったと答えましたが、区の今後の整備計画は定数30人規模の1園しかありません。10月1日の認可園の空き状況は、0歳児で2園4人しかなく、年度途中に生まれた子どもはほとんど待機児になっているのが実態です。
すべての認可保育園を希望する子どもが入園できるよう、来年度に向けて認可保育園を増設すべきです。区長の所見を伺います。
長年家庭的保育で公的保育を補完してきた未認可保育室は、東京都の誘導で多くが認証保育所になっています。その際に、区は未充足加算を打ち切りました。子ども・子育て新制度では、実際に保育した人数に対してしか保育料が支給されないため、定員割れは保育所の運営を困難にしています。
ある認証保育所は、「子どもが減っても、家賃や人件費の支出は変わらず、このまま定員割が続けば、廃園せざるを得ない」と苦境を訴えています。
国と都に対し、認証保育所が定員割れしても施設を維持し、職員を減らさず運営できるよう、保育定数を考慮した保育料の支給に切り替えるよう求めるとともに、区として、認証保育所に対する未充足加算を実施すべきです。区長の所見を伺います。
②保育の質の確保について
日本の保育基準は、3~5歳児の保育士配置基準は75年前のままで、子ども30人に保育士1人です。世界的には、ノルウェーの子ども14人に1人をはじめ、20人程度に1人の保育士配置が当たり前です。子どもの豊かな成長は、保育者と子どもの豊かなコミュニケーションによって保障されるからです。
わが党区議団のくらし・区政アンケートには、「保育士一人当たりの子ども数は、いまの数字ではとても回りません。現場を見て欲しい。給料が少ないから保育士は増えず、目が行き届かず、事故が増えます」と、保育士からの訴えが寄せられました。区長は、この声に正面から答え、区として保育の質を確保するために全力をあげるべきです。
3~5歳児の保育士配置基準を抜本的に引き上げるよう国に求めるべきです。また、京都市などのように、区独自に保育士の加配をすべきです。
2歳児以上の面積基準は終戦直後の1948年から改善されておらず、一人当たり畳一畳分のままです。国に対して、面積基準を引き上げるよう求めるとともに、区として、定数に余裕のあるところに助成し、定員を減らして面積基準を引き上げるべきです。区長の所見を伺います。
今年7月、区内で3ヶ所の認可保育園を運営しているグローバルキッズが、豊島区などで保育士数を水増しして、施設運営費を不正受給していたことが明らかになりました。全国でも、株式会社の運営する保育園で、運営費を役員報酬など保育園の運営以外に使う一方で、職員人件費を低く抑えたり、届出数以下の保育士しか配置していないなどが問題になっています。
認可保育園は原則、都による年1回以上の実地検査が義務付けられていますが、2020年度の実施率は4.3%にとどまっています。当区でも昨年度の検査は、都と区の合同実施が1件、区独自が10数件で、実施率は2割程度です。これでは、保育の質を確保する責任を区も都も果たせません。国は、実地検査を緩和しようとしていますが、保育の質の確保に逆行します。
国に対して、実地検査の緩和をやめるよう求めるべきです。都に対し、実地検査を抜本的に増やすよう求め、区独自の検査も増やして、認証保育所なども含めすべての保育園で年1回の実地検査ができる体制を確保すべきです。また、保護者からの相談や要望、苦情を受け付ける相談窓口を設置すべきです。区長の所見を伺います。
③保育従事者の処遇改善について
国は、保育士の処遇改善として、今年2月から月9000円の処遇改善加算を実施しています。保育現場からは、「専門職に相応しい処遇改善を」「全産業平均より8万円も低く一桁違う」など、抜本的引き上げを求める声が出されていました。
区内では、私立50園中48園で国の処遇改善加算を利用したと聞きましたが、肝心な引き上げ額は「各園での対応に委ねる」として、明らかにしていません。実際の平均賃上げ額はいくらなのか、また、区として、独自に保育士の処遇改善のための助成を実施すべきです。区長の所見を伺います。
2.気候危機打開について
⑴渋谷区環境基本計画について
気象庁は今年6~7月の高温を異常気象と認定しました。世界的にも異常高温、熱波、洪水、渇水など、地球温暖化を原因とする異常気象がいのちやくらしを脅かしており、COP26で掲げた2030年までにCO2排出量を世界平均45%削減することは、人類の存亡にかかわる喫緊で死活的な課題です。
日本が掲げる2013年度比46%の削減目標は、2010年度比に直せば42%で欧米の50%~60%台の目標に比べて異常に低く、先進国の責任を放棄するものです。CO2を大量に排出する石炭火力を9基も新設し、7基の原発を再稼働させ、新型炉をつくるなど、本気で再生可能エネルギーへの転換をしようとしない姿勢は許されません。
区長は、国の目標は綿密な算定根拠があると容認していますが、将来の世代に無責任な姿勢を改め、国に対して、2030年目標を50%以上に引き上げるとともに、石炭火力と原発から撤退するよう求めるべきです。所見を伺います。
気候危機打開は、全区民、事業者の協力を必要とする大事業です。23区中20区が行った2050年カーボンニュートラル宣言を直ちに行い、わが党区議団が提案しているように区として地球温暖化防止条例を制定すべきです。
渋谷区環境基本計画の改定では、2030年までのCO2削減目標を46%から50%以上に引き上げるべきです。また、若者会議に加えて公募で住民の年齢、職種の構成を反映した気候区民会議を設置して、区民全体が参加・協力できるようにすべきです。所見を伺います。
具体的施策として、庁舎をはじめ学校などの区有施設を2030年までに100%再エネ化、公用車とハチ公バスのEV化を進めること、東京では、建物関連のCO2排出量が7割を占めており、大型開発には「ZEB」(ゼロ・エネルギービル)を求め、厳しく規制すること、東京都の区市町向け補助事業も活用して、中小事業者や家庭部門の省エネ・再エネ化を促進する施策を大胆に進めることを提案します。区長の所見を伺います。
3.神宮前周辺の再開発について
神宮外苑再開発計画では、神宮球場と秩父宮ラグビー場を移転・建て替えして、高さ185メートルと80メートルの超高層ビルの新設で、神宮外苑を象徴するイチョウ並木の一部を含む樹木556本が伐採され、軟式野球場やゴルフ練習場など市民が利用しているスポーツ拠点も失われます。渋谷区民や多くの市民が、神宮球場と秩父宮ラグビー場の保存、改修を求める陳情を都議会に提出しており、ユネスコの諮問機関の日本イコモス国内委員会は、都市計画決定を前提に、ラグビー場を現地改修するなどの対案を示しています。
区長は、神宮外苑再開発計画について、超高層ビルの建設をやめ、神宮球場とラグビー場を現地改修するよう、都に求めるべきです。所見を伺います。
この再開発と並行して都がURに開発させている「北青山3丁目地区まちづくりプロジェクト」に隣接する神宮前3丁目2番の方々から、開発地との境界にある通路は、住民生活や緊急車両の通行に使われているため、1.5mに狭めず現状の幅員で再整備してほしいとの要望が出されています。
区長は、都と開発事業者に対して、区民の要望を直接伝えるべきです。所見を伺います。