第3回定例会 一般質問
2023.9.22 牛尾
私は日本共産党渋谷区議団として区長に質問します。
1、まちづくりについて
都市計画審議会で議論されている神南二丁目・宇田川町地区の都市計画は、老朽化し耐震性にも問題がある渋谷ホームズを第一種市街地再開発事業の手法を使って建替え、公共貢献として神南小学校を再開発事業者が建替えるものです。提案によれば、現在14階・延床面積2万949㎡の渋谷ホームズは、地上34階、高さ約150m、延床面積約7万3900㎡の超高層マンションになります。
この計画は、区の協力なくして成り立ちえません。区は、渋谷ホームズと区役所・神南小前の区道を廃止して、610㎡をマンションの敷地に提供し、容積率も神南小学校から150%を移転し、指定容積率の2倍の1000%を認めます。
8月23日の都市計画原案意見交換会には60人を超える区民が参加し、反対意見が多数出されました。
区役所のメインエントランスに通じる区道がなくなることについては、「タクシーや車で区役所に行くときに降車する場所がなくなってしまう」「道路に代わるひろば空間は、所有者の都合で自由に使えなくなる」などと批判の声が上がりました。
区長は、区道廃止による利便性の喪失について、どのように考えているのか、伺います。
計画では、区道の廃止によって、建替え後の渋谷ホームズは神南小との敷地境界からわずか8m、公会堂側は10mの場所に、150mの高さまで途中階での壁面後退もなく建ちます。マンションの窓は開放型なのに、落下物防止の庇(ひさし)も植栽帯もありません。これは文科省の小学校施設整備指針にある「健康的かつ安全で豊かな施設環境の確保」にも背くものです。
説明会参加者からも、風害、落下物や盗撮の危険、威圧感が増すなど、神南小学校の教育環境や、周辺環境の悪化が指摘されています。共産党区議団の区民アンケートでも、「元々の住民の生活、子ども達の安全が何より最優先」「公共事業と民間事業は別々に。民間に手を貸すことになることはすべきでない」などの声が寄せられています。
区長は、神南小学校の教育環境の悪化についてどう考えているのか、また神南小学校は教育環境を最優先に、独自に建替えるべきと考えますが、あわせて区長の見解を伺います。
また、区道廃止や神南小の容積率移転で、小学校の建て替え費用の軽減よりも、区民が失う利益の方がはるかに大きいと指摘する意見もあります。
建替え後のマンションの建ぺい率は、高度利用地区の指定や総合設計制度を利用したこれまでの開発の中で最大の60%、敷地に対する総面積は1596%と突出し、利益最優先の計画です。住民が行った鑑定評価では、渋谷ホームズ敷地の評価額は480億円から914億円へ434億円も跳ね上がります。
再開発準備組合が結成された2017年4月以降だけで、33件の住戸が売買され、購入者の中には事業協力者の東急不動産や、清水建設の系列会社である清水総合開発なども含まれています。この計画で大儲けするのはデベロッパーと開発利益を狙う投機筋の企業です。
区道の廃止や神南小学校の容積率移転は一時のものではなく、将来にわたって区に制約となります。開発事業者の利益のために区民の財産である区道を提供したり、神南小学校の容積率を移転することは区の便宜供与にほかならず、渋谷ホームズと神南小学校の一体開発は区民の利益を損ねるものでやめるべきと考えますが、区長の見解を伺います。
2、気候危機対策について
グテレス国連事務総長は7月「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と警告しました。また、国連気候変動枠組み条約事務局は、9月8日に温暖化ガス排出量が、「1・5度目標」を達成できる水準に達しておらず、各国があらゆる分野で目標を引き上げる「システム改革」に取り組むべきだと指摘する報告書を発表しました。
地球温暖化が異常な猛暑の原因であることは明らかで、気候危機打開への取り組みが急務となっています。2030年まであと7年しかなく、日本政府は、ただちに石炭火力からの撤退と再生可能エネルギーへの抜本的転換を決断すべきです。
日本共産党は、思い切った省エネと再エネの推進で2030年までに二酸化炭素排出量を最大で6割削減するとともに、254万人の雇用と205兆円の投資を生み出す「気候危機打開の2030戦略」を発表し、地方でも、省エネと再エネを推進することを提案しています。
渋谷区は、2050年ゼロカーボン宣言も行わず、環境基本計画のCO2削減目標も国の不十分な目標を横引きするだけで、CO2を大量に排出する再開発中心のまちづくりを進めるなど、環境対策に逆行しています。
区長は国に対し、温暖化ガスの削減目標を抜本的に引き上げ、石炭火力からの撤退を求めるべきです。また、区の姿勢を改め、23区で唯一行っていない2050年ゼロカーボン宣言を行い、区施設の100%再エネ化をはじめ、率先して温暖化対策に取り組むとともに、大規模事業者にいっそうの排出量抑制を求め、大型開発についても厳しく規制すべきです。区長の見解を伺います。
東京都は、区市町村が行う住民向けの施策に様々な支援を行っています。都の自治体補助メニューも活用して、多くの区が実施している住宅太陽光発電装置設置費助成をはじめとした支援を行うべきです。区長の見解を伺います。
今年も異常な猛暑で熱中症になる人が続出しました。自宅からの救急搬送が約4割となっており、住宅を安全な場所にすることが急務です。区に求められているのは、高齢者、障がい者、低所得者などの弱者を守ることです。練馬区では、住民税非課税世帯へのエアコン購入費助成(上限10万円)の補正予算7550万円を計上しました。
区民の命を守るためにも、当区でも低所得者向けのエアコン設置費助成制度を創設すべきと考えますが、区長の見解を伺います。
3、保育について
・認可保育園の増設で待機児をゼロに
渋谷区は2021年以来3年連続で保育園の待機児ゼロを達成したとされていますが、第2回定例会で区長は、4月に認可園に入れなかった子どもは、0歳児91人、1歳児184人、2歳児41人など、合計334人もいたと答えています。にもかかわらず、3月17日には保育施設の設置・運営事業者の募集を当面の間、停止すると発表しました。
保育の必要なすべての子どもに認可保育園への入園を保障するのは区の責務です。区長はなぜ、新規の増設をやめたのか、伺います。また区の責任を果たすために認可園を増設すべきです。あわせて見解を伺います。
・保育の質の向上について―保育基準の引上げと民間保育士の処遇改善を
保育士の低賃金、長時間、過密労働が蔓延する保育所では、2021年度に重大事故が1191件も発生し、不適切な保育も相次いでいます。
日本共産党区議団は、国際的に見てもあまりに低い日本の保育士配置基準、面積基準を引き上げるよう求めてきましたが、区長はかたくなに拒否しています。認可保育園では、国の基準を上回る人員配置をしなければ、保育の質を維持できないのが実態です。区長は現在の国の基準で保育の質が確保できると考えているのか伺います。また、保育条件を改善するために、国と都に保育士配置と面積基準の引上げを求め、区としても実施すべきと考えますが、区長の見解を伺います。
保育の質を確保するためには、各園での保育経験の蓄積と継承が必要で、安心して働き続けられる処遇を保障することが不可欠です。
2021年度の保育士の平均年収は382万円で、全産業平均より月9万円も低く、さらなる改善が求められています。保育単価の引き上げと処遇改善の予算措置を国と都に求めるべきと考えますが、区長の見解を伺います。
また、大田区では、区内の民間保育施設で働く保育士に対し、月1万円の直接支援を行ない、喜ばれています。職員が安心して働き続けることができるよう、区独自に実施すべきです。あわせて区長に伺います。
・規制緩和で参入した株式会社の運営する保育園に適切な指導監督を
国は、2000年に株式会社の保育への参入を認めました。渋谷区でも、株式会社が設置運営する保育園は25園に増えました。
この間、豊島区や目黒区、江東区などで、株式会社が運営する保育園が、補助金を不正受給する事件が相次ぎました。また、保育のために使うべき委託料や補助金を他の目的に流用する「弾力化」のしくみも多用されています。
東京自治労連が今年2月に発行した調査研究資料によれば、株式会社が運営する渋谷区内の保育園のなかで、2020年度決算で前期末資金を「弾力運用」し、グローバルキッズが3園で5365万円余、さくらさくみらいが2園で3472万円余を本部経費にしました。また、こどもの森は、渋谷もりのこ保育園神南の積立資産2億5350万円を、杉並区高井戸の保育園開設に運用しました。渋谷区として、こうした施設の保育の実態をしっかり把握することを求めます。
児童福祉法施行令では保育施設の実地検査を年に1回以上行わなければならないとなっています。渋谷区の実地検査数は、令和3年度に何件実施し、文書による指摘は何施設に対し何件行ったのか、その内容はどのようなものだったのかについて、社会福祉法人、株式会社ごとにそれぞれ伺います。各地で起きている補助金の不正や不適切な保育をなくすために、文京区や江東区で行っているように、保育施設に対する年1回の検査を行う体制を都と協力して作るべきです。また、より良い保育を求めて保育士や保護者が安心して改善を訴えられる相談窓口を子ども家庭部として設置し周知すべきです。あわせて区長の見解を伺います。
国や自治体からの保育委託料は、何よりも保育士を安定して雇用し、専門職にふさわしく働けるようにするために使うべきです。ところが、渋谷区内では2021年度の人件費比率が5割以下の園が12園もありました。
世田谷区では、人件費比率が5割を下回る保育園には区の補助金を出さない仕組みを作り、保育の質の確保を図っています。このルールを導入することによって、同じ法人が運営する保育園でも、他区に比べて人件費にあてる割合が高くなり、処遇改善の条件を広げています。
当区でも区の補助金の多くが人件費に使われるよう、世田谷区のような施策を実施すべきです、区長の見解を伺います。
・質のよい保育を保障するため、区立認可園の増設を
国の株式会社の保育参入を認めた規制緩和が保育士の処遇改善を困難にし、保育の質の低下を招く要因の一つになっています。区立保育園は、区が直接運営して児童福祉法24条1項の保育実施義務を果たす施設で、区の保育水準を決める重要な役割を持っています。
区の保育全体の水準を引き上げるためにも、区立認可園の増設をはかるべきと考えますが、区長の見解を伺います。
4、住宅政策について
9月7日の区民環境委員会に、本町と笹塚にある借り上げ高齢者住宅の借り上げ契約を終了すると報告がありました。
借上げ高齢者住宅は、1980年代後半の地価の大幅な上昇によって、高齢者が区内に住むことが困難になる中で、区独自の住宅政策として、民間のオーナーを支援して建設した住宅を区がまとめて借り上げ、低所得の高齢者に貸与するものです。
区内の高齢者の多くの方々が年金だけでは暮らせず、パートやアルバイトで生活費を補っており、高い家賃が高齢者のくらしをいっそう深刻にしています。直近の高齢者向け区営住宅の申し込み倍率は30倍、都営住宅は62倍もあるなかでの廃止は認められません。
区長は、使用料の安い公営住宅を求める高齢者の願いをどう考えているのか伺います。二か所の高齢者借り上げ住宅は契約を継続して空家募集を行うべきです。また、高齢者や低所得者が住宅を確保できる住宅政策に転換し、区営住宅の増設と家賃補助の拡充を行うべきと考えますが、あわせて見解を伺います。