2022年度決算 本会議反対討論
2023.10.20 牛尾
私は日本共産党渋谷区議団を代表して、ただいま議題になりました、認定第1号 令和4年度渋谷区一般会計歳入歳出決算に反対の討論を行います。
2022年度は、新型コロナの感染者数も死者数も大きく増加し、円安やウクライナ危機による物価の高騰で、区民の生活と営業が脅かされる事態に直面しました。私たちが行ったくらしのアンケートでは、物価高騰で昨年よりもくらしが苦しくなったと答えた人が5割にのぼっています。
渋谷区には自治体として、区民のいのちと健康、生活と営業を守ることを最優先にした区政運営が求められていましたが、この年度には7回もの補正予算を組んだにもかかわらず、コロナや物価高騰対策は国や都まかせで、区の独自施策はほとんどありませんでした。
区民には、負担増と福祉・教育の切り捨てを押し付ける一方で、大企業のための再開発には税金投入や区の財産を提供する区政が進められました。
増えた税収や、国や都からの交付金も区民のために使おうとせず、財政調整基金と都市整備基金に163億円を積み増し、二つの基金合計は1373億円に達しました。
こうした区政運営は、住民福祉の向上という自治体の役割にも反するもので、認められません。
決算の認定に反対する第1の理由は、コロナ禍と物価高騰で区民生活が困難を極めているのに、区民の命とくらし、営業を守る対策が極めて不十分だからです。
コロナ対策では、無料のPCR検査センターや、高齢者・障がい者施設、学校などでの検査は、すべて都の施策に委ねられました。多忙を極めた保健所の体制も臨時の職員で賄われ、保健師の増員もわずか2名にとどめられた結果、地域保健課の年間の残業時間は6736時間に及びました。常勤の保健師や看護師を抜本的に増員し、感染症の拡大にも対応できるよう備えるべきです。
物価高騰対策では、国の施策で住民税非課税の低所得世帯と子育て世帯にそれぞれ5万円の給付金支給が行われましたが、区は独自の上乗せ給付を行ないませんでした。渋谷区が行ったのは、介護施設と障がい者施設への燃料費、食費などへの助成と、学校給食の米代の半額助成に限られました。
中小企業に対する支援も、高騰した燃料費などの助成は一切行われず、融資のみに留まりました。地域経済活性化事業として行われた地域通貨ハチペイも、50%のポイント還元を利用した区民は延べ約4万人にとどまり、利用できる店舗も2617店舗にとどまりました。スマートフォンを持たない区民はそもそも支援の対象の外に置かれました。プレミアム商品券の発行などを合わせて行い、すべての区民が利用できる施策に改めるべきでした。
コロナや物価高騰で、区民生活が脅かされていただけに、ため込んだ基金も活用して区民のくらしを守ることが求められていたのに、区の役割を発揮しなかったことは認められません。
第2に、子育て支援や介護・高齢者福祉の充実など区民の願いに背を向け、自治体本来の福祉増進の役割を果たそうとしていないからです。
年度当初に認可保育園に入れなかった子どもの数は359人に上っていたのに、今年4月に開設した認可保育園は36人定数の小規模園1ヶ所だけで、今年3月には区のホームぺージに新たな認可保育園の開設募集はしないと発表しました。入園を希望するすべての子どもたちに認可基準の保育を保障することは区の責任であり、杉並区のように、認証保育所から認可保育園への変更を希望する施設を支援することも含め、認可保育園を増設すべきです。
特別養護老人ホームの待機者は、昨年4月に351人でそのうち要介護4・5の人が189人、54%と重度になってもなかなか入所できない事態が続いています。後期高齢者が今後も増えていくだけに、増設計画を神宮前の国有地への民間特養とケアハウスせせらぎの転用にとどめず、引き続き代々木2・3丁目の国有地や、幡谷2丁目や本町1丁目の都有地の活用を進め増設すべきです。
区型介護サービスは、国が切り捨てた訪問や通所介護の事業を区が独自に上乗せ・横出しして実施している事業ですが、執行額は6567万円で、5年間で1割も減額したことは認められません。
渋谷図書館が年度当初に廃止されて以降も、現地での再開を求める住民の運動が続けられています。区が設置した白根記念郷土博物館・文学館のサービススポットの利用は、1日平均28人、年間7,671人にとどまっており、旧渋谷図書館の10分の1に激減しています。広尾中学校の建て替えで図書館との複合化を行えば、教室が各学年2クラスしか確保できないなど、学校運営にも支障が出かねません。住民の声を尊重し、早急に旧渋谷図書館のリニューアル工事を行って復活させるべきです。
22年度の渋谷区の不登校の児童・生徒は294人、いじめ件数は、430件でした。不登校やいじめを訴えている一人一人の子どもたちに寄り添い、安心して通える学校にするために、教育委員会と学校が一体となって対応することが求められています。
何よりも教師の負担を減らして、子どもたちが1日のうち最も長く過ごす学校生活に、丸ごと寄り添えるようにすることが必要です。そのために教員を増員して、一人ひとりの子どもに目の届く少人数学級を実現すべきです。
区は、小中学校の給食無償化が各地で実施表明され、物価高騰で家計が苦しめられる中で、区内でも広がった無償化を求める声に答えようとせず、就学援助の対象拡大にも取り組みませんでした。子育てにかかる負担軽減の願いに背を向けたことは認められません。
第3に、まちづくりなどで大企業のもうけを最優先にし、財界戦略にそって国際競争力を高める事業に多額の税金を投入しているからです。
市街地再開発事業として、渋谷駅桜丘口地区に27億8600万円が投入されました。また、渋谷駅中心五街区整備事業には、渋谷駅街区北側自由通路整備事業として5億6千万円、渋谷駅南口北側自由通路整備事業に1億5200万円が予算通りに執行されました。これらの事業費は、鉄道事業者や再開発事業者が負担すべきものであり、区民の税金投入は認められません。
地権者や近隣住民から反対の声が上がっているのに、宮益坂地区に180mの業務ビルを建てるための市街地再開発事業には、区道の廃止や立体化などの便宜を図り、神南二丁目西地区市街地再開発事業には、150mのマンション建設のために区道の廃止と神南小学校の容積率移転を認める都市計画を進め、子どもたちの教育環境よりも開発事業者の利益を優先してきました。ステップアップ事業では、美竹公園や旧渋谷小学校跡地の一部を70年間も定期借地させて、大儲けさせる計画を進めました。
大企業の利益のための大規模開発に便宜を図ることはやめるべきです。
グローバル拠点都市推進事業には、前年度の3倍近い2億5171万円余が投入されました。この事業の中心的役割を担う渋谷スタートアップデックの運営資金は、この年度、民間の幹事会員10社の拠出金合計300万円のほかは、渋谷区が4963万円余とそのほとんどをつぎ込んでいるのが実態であり、渋谷区丸抱えの事業です。
また、事業内容を見ても、海外にむけたPR事業に2278万円余、スタートアップビザのワンストップサービス受付窓口に2538万円余、日本と海外のスタートアップコミュニティ活性化に1830万円余などに多くの予算を使っていることからも、中心的な狙いが海外スタートアップの誘致にあることは明らかです。区がやるべきは困難に苦しむ区内の中小事業者を支援することです。
新宮下公園は、商業施設屋上の4階に作られた公園となり、区民が利用する公園としての機能は大きく後退しました。三井不動産は、定期借地して建てた商業施設で利益を得るだけでなく、新宮下公園の指定管理者として、2442万円の利益を上げました。区は宮下公園用地を貸し出すことに加え、東京都下水道局の土地を減免して借り受け、指定管理者の自主事業のために便宜を図りました。
区は、この年度までに北谷公園と恵比寿南一公園をパークPFI手法で整備し指定管理させていますが、北谷公園では自主事業で、指定管理者は1000万円を超える収入を得ています。公園用地を民間に利活用させる公園整備の手法は、事業者の利益のために区政をゆがめるものでやめるべきです。
第4に、区民の声を聞かずに、官民連携の事業に惜しみなく税金を投入し、区政を民間大企業の利潤追求の場にしようとしているからです。
玉川上水旧水路緑道整備は、区長の描いたササハタハツのまちづくりの具体化として、多額の経費をかけて進められてきました。
この年度は、緑道全体の設計委託として、東京ランドスケープ研究所に2億3138万円余が執行されていますが、その中には、田根氏への再委託として1億5800万円、農園の委託料として1400万円、パークPFI検討のための公募支援業務委託540万円などが含まれています。
また、このほかに15本の樹木伐採に601万円余が執行され、この年度までに緑道整備にかけた費用は累計で約7億7千万円にも上り、さらに今後5年間で100億円もの税金を投入しようとしています。
住民の樹木の伐採をやめ緑を守ってほしいという請願が区民環境委員会で採択されました。区は、住民の意向を尊重し、現在の計画は白紙に戻し、再検討すべきです。
一般社団法人渋谷未来デザインは、官民連携事業として区が7000万円を拠出し官民共同で設立したもので、区民の公共財産を活用して出資企業に新たな収益事業を提供する団体で、この年度は、区が事務局職員3人分の共済費298万円を含む1357万円を支出しています。区の事業として、ソーシャルイノベーションウイークに1100万円の委託料を支出し8つの事業を行いましたが、意思決定に区民や議会の関与もなく、各事業の予決算なども「民間の事業だからと」明らかにされません。この事業は自治体本来の役割を逸脱しており認められず、撤退すべきです。
第5に、これまで指摘されてきた無駄遣いの施策を温存させているからです。
河津さくらの里しぶやには補正予算が組まれ、当初予算を上回る1億2294万円余が執行されました。コロナの影響があったとはいえ、施設利用は、4泊目の料金が無料になる湯治プラン216人が年間利用者数の1割以上を占め、小学校の移動教室をあわせても、1日平均24人にすぎません。区は、大型バスが入れるようにと隣接地の鑑定評価のための予算を計上しましたが、さらなる検討が必要だとして執行しませんでした。こうした施設にさらに経費をつぎ込み事業を拡大することは認められません。区民ニーズが乏しいこの施設に区は、取得など開設前に2億4千万円余、開設後の9年間の運営と維持管理に16億7千万円余を投入してきました。毎年のように多額の費用をかけて運営、改修を続けることは、税金の無駄遣いです。
帰宅困難者対策として、シブヤ・アロープロジェクトに935万円を支出しましたが、2023年度中に、区議会に報告もなくエンワントウキョウ株式会社にプロポーザルで委託することにしました。区民からは、「帰宅困難者が、避難場所を示しているとはわからない」との声が寄せられています。いのちを守ることが最優先にされるべき災害時の備えなのに、わかりにくい矢印を製作するために巨額の税金を投入することは認められません。
以上、令和4年度渋谷区一般会計歳入歳出決算認定に反対の討論とします。
私は日本共産党渋谷区議団を代表してただいま議題になりました、認定第2号令和4年度渋谷区国民健康保険事業会計歳入歳出決算に反対の討論を行います。
2022年度の国民健康保険料は18年連続で引き上げられました。医療分の均等割が3300円引き上げられたことが影響し、一人当たりの年間保険料は、18万5110円で、7086円の大幅値上げとなりました。年収400万円の40代夫婦と学齢期の子ども2人の世帯では7041円の値上げで52万6311円となり、収入の13%を占め、協会けんぽとの格差は2・3倍に広がりました。滞納世帯率は19・72%で短期証は236世帯340人、また資格証発行は9世帯9人に対し給付制限が行われ、差し押さえ件数は61件となりました。一方で、一般会計からのその他繰入は保険料収納率が上がったことなどから、予算で見込んだ10億6971万9千円に対し、5億3234万9千円に半減しました。医療保険制度間の保険料格差は、国の制度設計によるものであり、国の国保への負担を抜本的に増やして保険料を下げられるよう求めるべきです。また、区として保険料の軽減のために予算化した納付金分の一般会計からの繰り入れについては、予算の全額を活用すべきです。
この年度から、未就学児の子どもの均等割保険料が半額に軽減されました。渋谷区では1573人の子どもが対象となりましたが、軽減額は2041万円余にすぎません。他の医療保険制度にはない人頭割の保険料であるだけに、対象年齢を18歳までに引き上げ、均等割保険料は無料にすべきです。
高い保険料を押し付け、払えなければ延滞金や給付制限を課して厳しく取り立てた決算は認められません。
私は日本共産党渋谷区議団を代表してただいま議題になりました、認定第4号、令和4年度渋谷区後期高齢者医療事業会計歳入歳出決算に反対の討論を行います。
2022年度の保険料率は、均等割が2300円、所得割が0・77%、賦課限度額が2万円、それぞれ引き上げられた結果、一人当たりの平均保険料は15万6784円となり、前年度より8650円の大幅な値上げになりました。
また、年度途中の10月から窓口負担が1割だった1万6820人のうち、27%に当たる4631人が2割負担にされ、医療にかかりにくくなりました。
高齢者に高い保険料負担を押し付ける一方で、給付を縮小して窓口負担を重くした決算は認められません。
今後団塊世代が75歳になって急速に給付が増えていくことが予想され、ますます保険料の値上げが苛酷になっていきます。医療費が多くかかる75歳以上の高齢者だけを、ほかの医療保険から切り離して強制的に囲い込む制度は、社会保障の理念に反するもので、一刻も早く廃止して元の老人医療制度に戻し、国や都の負担を増やして、高齢者が安心してかかれる医療保険制度を構築すべきです。
以上、決算認定に反対の討論とします。