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日本共産党渋谷区議会議員団

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議会報告
REPORT

いがらし千代子議員は日本共産党渋谷区議団を代表して、10月16日の決算特別委員会で、2023年度渋谷区一般会計歳入歳出決算、同国民健康保険事業会計歳入歳出決算、同後期高齢者医療事業会計歳入歳出決算に反対する討論をおこないました。

2023年度 決算反対討論

24.10.16 五十嵐

 私は、日本共産党渋谷区議団を代表して、認定第一号 令和5年度渋谷区一般会計歳入歳出決算、認定第二号 令和5年度同国民健康保険事業会計歳入歳出決算及び認定第4号 令和5年度同後期高齢者医療事業会計歳入歳出決算に反対の立場から討論をします。

 2023年度は、コロナ禍に続く物価高騰が区民のくらしと中小事業者の営業に深刻な打撃を与え、わが党区議団の「くらしと区政のアンケート」でも「暮らしが苦しい」と答えた区民が前年より2割も増加しました。

 しかし、渋谷区は補助18号線用地取得を含む渋谷駅周辺再開発などに45億円もの多額の税金を投入する一方、区民の生活や営業を直接支援する区独自の施策はほとんど実施せず、国保料の大幅値上げで区民と自営業者に一層の負担増を押し付けました。とりわけ子育て世帯から求められた学校給食の無償化については、昨年9月までに23区中22区がなんらかのかたちで実施する中、渋谷区は最後まで実施しませんでした。この年度だけでも区税収入が予算見込みよりも75億円も増収になった上に、財政調整基金と都市整備基金に合わせて148億円も積み増しているにもかかわらず学校給食費の無償化を先送りしたことは認められません。

 以下2023年度決算の問題点を各部ごとに指摘します。

[経営企画部]

●渋谷未来デザイン

官民連携事業として一般社団法人渋谷未来デザインに、事務局職員3人分の共済費265万円と負担金1100万円など1376万円余が執行されました。

 未来デザインは、区が官民共同で設立したもので、区民の公共財産を出資企業に活用させて、新たな収益事業をおこし儲けをあげさせるための団体です。わが党は、民間企業の利益のために区民の税金や職員、財産を差し出すものとして反対してきました。

 ササハタハツまちラボは、未来デザインの事業報告書でも「企業向け視察ツアーの充実などの企画参画に向けた誘致活動を実施した」としているように、結局、民間企業の儲けを拡大するための団体であり、自治体本来の役割を逸脱した税金投入や区職員を派遣していることは断じて認められません。

●都市整備基金●財政調整基金  都市整備基金は、約77億円、財政調整基金には、約71億円を積み増ししこの年度の基金総額は1520億5000万円になりました。区政に求められるのは、物価高騰に苦しむ区民に対する区独自の支援策の実施であり、使途も明確にせずに基金に積み増すことは認められません。

[総務部]

●男女平等・多様性社会推進、 ダイバーシティセンター管理運営については、アイリスの「なんでも相談」は予約が必要です。杉並区では、月曜日から金曜日の9時から17時まで専門の相談員が電話相談を受けています。渋谷区も女性の貧困やジェンダー差別による被害などの相談を、常時受けられるよう常勤の女性相談員を配置し、相談機能を高めるべきです。

●同性カップルの住民票の記載について「夫(未届)」「妻(未届)」との記載を認める自治体が広がり、中野区や世田谷区では11月から実施します。渋谷区も直ちに実施すべきです。  また、区営住宅への入居の際や区の職員のパートナー証明などにも都のパートナーシップ宣誓制度を活用できるようにするとともに、ファミリーシップ証明も認めるべきです。

●職員人件費 ・この年度最長の残業時間は、月176時間で過労死ラインの2倍を超えています。職員定数を増やして残業時間ゼロを目指すべきです。 ・区職員の育児休暇取得率は、男性78.9%、女性100%で、男性の平均取得日数は17.3日です。男性も長期の育児休暇を取得できるよう職員定数を増やすべきです。また、女性管理職の割合は、全体で20.4%、事務・技術系で31.8%と令和7年度目標から10%程度遅れており、女性の管理職を増やすよう対策を講ずるべきです。

[危機管理対策部]

●元旦に発生した能登半島地震を踏まえて、渋谷区地域防災計画の抜本的な見直しが求められていました。しかし、命を守るための建物の耐震補強工事助成制度や避難所運営の抜本的な改善は行われませんでした。

 避難所・備蓄品等整備では、スフィア基準を目標にした避難所一人当たりの面積基準を3.5㎡に、トイレの数は20人に1か所で、女性用は男性の3倍整備し、現在405個の段ボールベッドや間仕切りも抜本的に増やするなど、人間としての尊厳が守られるよう改善すべきです。

●帰宅困難者対策として、シブヤ・アロープロジェクトに3447万円を執行していることは重大問題です。この予算は、実行委員会に丸げし、さらに実行委員会が民間企業に委託しており、事業の内容に区民の声が反映されない仕組みになっています。

 23年度も海外からアーティストを呼んで作品を制作するために、報酬333万円、渡航費330万円、宿泊費は7日間で110万円の合計779万円も支出しています。区民からは、「帰宅困難者が見ても、避難場所を示しているとはわからない」との声が寄せられています。3447万円あれば、避難所に段ボールベッドを3000個以上配備できます。実行委員会を隠れ蓑にして、多額の税金を投入し、帰宅困難者の誘導にも疑問があるこの事業は、税金のムダ遣いでやめるべきです。

[区民部]

●住民基本台帳費

 区は自衛隊に、この年度に18歳になる1140人と22歳になる1517人の合計2657人の住所、氏名、生年月日、性別の個人情報を名簿として、本人に無断で提供しました。区が法的根拠としている自衛隊法には、個人情報を無断で提供できると明確に規定していません。渋谷区では、これまで紙の名簿を提供してきましたが、この年度から、名簿をUSBに保存し、担当職員が防衛省に出向いて相手方のパソコンに情報を保存し、媒体を持ち帰るというやり方に改めました。自治体の中には、本人が除外申請した場合には提供しない措置をとっているところもあります。

 奈良市の18歳の高校生は、今年3月にプライバシー権の侵害だとして、市と国に対し国家賠償請求訴訟を起こしています。個人情報の保護に反する自衛隊への名簿提供はやめるべきです。

●区民保養施設管理費

 河津さくらの里しぶやには、運営費、施設維持管理費として前年度を上回る1億3422万円余が執行されました。昨年7月から二の平渋谷荘がリニューアル工事で休館となったため、利用率は昨年度を上回りましたが、それはシニアのバス旅行や小学校4校の移動教室、指定管理者の4泊目料金無料の湯治プランなどの利用者が1割近くになったことによるものです。この年度の一人一泊当たりの区の負担は1万2780円でした。

 区は、抽選になる日が年間で193日になることや移動教室で小規模な小学校しか利用できないことを理由に、2か所の隣接地を取得し、宿泊棟を増築して定員を2倍にする活用プランを作りました。閑散期対策として区内の大学や企業などの利用促進を図るとしていますが、本来の区民保養施設としての性格は歪められます。

 そもそも遠くて不便といわれ区民ニーズが乏しいのに、区は取得を強行し、毎年のように施設改修を進めて来ました。この年度は指定管理者が負担するとされている50万円を下回る工事3件も区が負担し、指定管理者に便宜を図っています。

 この施設にはすでに取得など開設前に2億4千万円余、開設後の10年間の運営と維持管理に18億円余を投入しており、さらに経費をつぎ込み事業を拡大することは認められません。この施設は廃止し、区民には旅行クーポン券を支給すべきです。

[産業観光文化部]

●グローバル拠点都市推進事業には、前年度を上回る2億8855万円余が投入されました。この事業の中心的役割を担う渋谷スタートアップデックの運営をはじめ、広報費、海外ビザのワンストップサービスなどの委託費に1億4800万円余、拠点オフィスの使用料などに3437万円余支出したほか、区が立ち上げたしぶやスタートアップスの出資金として1億円が支出されました。区は税金を投入する理由として、福祉に強いスタートアップを連れてくるといいましたが、起業者は区民だけを相手にしているわけではなく、区民の税金を投入する根拠にはなりません。この事業の中心的な狙いは、海外スタートアップの誘致にあることは明らかです。 区の課題解決に寄与するとしながら、その具体的な見通しも明らかにされていない事業に多額の税金を投入することは区民の理解を得られません。

〔都市整備部〕

●この年度、3回の区営住宅空き家募集が行われましたが、平均応募倍率は高齢者向けの単身が、29・4倍、世帯が8・4倍で、一般向けは28倍でした。低所得者層の住宅確保が切実に求められており早急に区営住宅の増設計画を示すべきです。また、借り上げ高齢者住宅の契約終了はやめ、更新して募集も再開すべきです。

 住み替え家賃補助は、件数が増えているものの、給付は一人当たりの上限額を1万円に下げたため、予算執行額は減少しています。家賃補助は、低所得の区民が区内に住み続けるために、公営住宅の提供と並ぶ住宅対策の主要施策です。高齢者をはじめ、子育て世帯や若者への家賃補助制度を復活するとともに、住み替え家賃補助の助成上限を増やして充実を図るべきです。

[まちづくり推進部]

●市街地再開発事業として、渋谷駅桜丘口地区に28億8400万円が投入されました。また、渋谷駅中心五街区整備事業には、渋谷駅街区北側自由通路整備事業として6億7700万円、渋谷駅南口北側自由通路整備事業に1億1900万円が執行されました。駅街区北側自由通路の税金投入額はこれまで40億円とされてきましたが、事業者からの事業計画の見直しで、2018年度分までの実績で公費負担が52億円に増えているにもかかわらず、今年6月に報告するまで、明らかにしてきませんでした。今年度中にはさらに事業完了までの整備事業費を含む計画見直しが予定されており、区の負担はさらに増えることになります。これらの事業費は、鉄道事業者をはじめ再開発事業者が負担すべきものであり、区民の税金投入は認められません。

〔土木部〕

●玉川上水旧水路緑道再整備事業には実施設計業務委託として、東京ランドスケープ研究所に4億5392万円余が執行されていますが、その中には、トイレなどの建築物の設計費だけでなくササハタハツ会議の運営、広報支援業務、仮設ファームの運営などがまとめて委託され、さらに再委託先としてアトリエ田根剛に2億9千万円、仮設ファームを運営するプランティオに1400万円が執行されました。

また、この他に都市計画の見直し検討委託に471万円余、電線共同溝の設計に2855万円余などが執行されましたが、住民から様々な見直しを求める意見がだされ、再整備工事に着手することはできず、6億円以上が不用額となりました。しかし、この年度までに緑道整備にかけた費用は累計で約11億2千万円にも上ります。

 住民の緑を守ってほしいという願いが区政を動かし、区は樹木を保存することを約束しましたが、テラゾ材を使った歩道整備やベンチ設置など総額約113億円もの高すぎる整備費となることや、農園の是非についても様々な意見があることから、区が進める緑道整備計画は一から見直し、住民の願いにこたえるべきです。

〔環境政策部〕

 環境基本計画が策定され、温暖化対策の意識啓発として省エネ家電買替助成事業が実施されました。1件当たり最大10万円を助成する制度に申し込みが殺到し、予算で見込んだ100件を大幅に上回る580件の申し込みがあり、区は後年度分を前倒しして助成し、その後は事業終了として、今年度は実施していません。地球温暖化は引き続き、区政でも喫緊の課題です。2050年カーボンゼロシティを宣言するとともに、区施設の温室効果ガス排出ゼロを実現し、区民向けの省エネ家電買替助成制度の継続と23区でも多くが実施している住宅太陽光発電設置費助成を実施すべきです。

[学びとスポーツ部]

・スポーツ振興事業の渋谷ユナイテッドに対し、職員人件費を含む運営助成として5,863万円と中学校部活動支援事業として1億3,170万円の合計1億9,033万円が支出されています。この年度から小学生も参加できるようになりましたが、参加者は前期の半年で211人、後期237人にとどまっています。10種目のうちサッカーの参加費用は無料、ボッチャと将棋は保険料の1000円の負担ですが、他の種目は1000円の保険料のほかに料理・スイーツマスターが材料費込みで22,000円、ボウリング2万円、フェンシング1万9000円、ダンス1万8000円などと高額な負担となっており、一部の人しか参加できません。高額な自己負担を求めるやり方は、中学校部活動とは言えません。見直すべきです。

・図書館事業では、2年前に住民の強い反対を押し切って閉館した渋谷図書館に代わる白根図書サービススポットは中央図書館の職員が交代で対応しているため決算額も示されていませんが、一日平均の利用者は29人で開館中の約10分の1に減少しています。渋谷図書館を利用していた人たちは、この先4年間も、図書館で読みたい本を手に取りゆっくり読書することも、静かな図書館で勉強することもできません。渋谷図書館を廃止したことは認められません。

[子ども家庭部]

総務分科会の審査で区立保育園の保育士は、途中退職10人などで定数に対して28人が未充足であることがあきらかになりました。未充足の代替として派遣の保育士や退職保育士などが従事しています。専門職である保育士が長く勤務できる働きやすい職場環境に改善することが求められています。全国的に求められている保育士配置基準の見直しを行うとともに賃金を大幅に引き上げる処遇改善を国に求めるとともに、区独自にも家賃補助だけでなく処遇改善を拡充すべきです。

 また、区立保育園の用務を、18人から14人に減らし民間委託を拡大したことは重大です。保育園の用務は、保育の補助的役割を担っており、同じ渋谷区の職員として、連携して子どもの成長を育む責任があります。用務職の民間委託をやめ直営に戻すべきです。

 [教育委員会]

 ・学校給食の無償化について23区では9月までに渋谷区以外の22区が実施に踏み切りました。コロナ禍と物価高騰で多くの子育て世帯の経済負担を軽減しようと22区では判断した結果でした。しかし渋谷区は、2度にわたって区民から請願が出されたにもかかわらず6年度に先送りしたことは認められません。

 ・渋谷区「新しい学校づくり」整備方針で打ち出した20年間で22の小中学校を建て替える計画に基づき5年度は、広尾中学校・松濤中学校・代々木中学校・神南小学校の4校の建て替えに係る基本計画、設計と青山キャンパス・スポーツセンター仮設校舎の設計、工事を実施し、小学校費として2億6498万円余、中学校費として5億8327万円余を執行しています。

 しかしこの学校建て替えについて区民の合意は得られていません。神南二丁目宇田川町地区まちづくりとして進められている、神南小学校の建て替えについては、学校からわずか10メートルしか離れていないところに150メートルの高層マンションが建つため、落下物の危険など子どもたちの教育環境を悪化させるもので認められません。また、スポーツセンターの仮設校舎には専用の体育館だけでグラウンドはありません。

 さらに、広尾中学校・松濤中学校・代々木中学校の建て替えについては、基本計画ができるまでは住民には何も知らせず意見も聞きません。長期間利用される学校で今後利用する子どもたちや保護者の意見を聞くとともに、地域の避難所としての役割も担う施設であることなどから、広範な区民に説明し意見を聞くべきです。トップダウンで3校の小学校を廃校にする小中一貫校についても認めることはできません。計画を白紙に戻すべきです。

【国民健康保険事業会計】

 2023年度の国民健康保険料は19年連続で引き上げられました。一人当たりの保険料は、18万5110円で、1万6303円の大幅値上げとなりました。年収400万円の40代夫婦と学齢期の子ども2人の世帯では54万2614円となり、収入の13・6%を占め、協会けんぽ加入世帯との格差は2・3倍に広がりました。滞納世帯率は20・32%で、差し押さえ件数は92件と前年度の1・5倍に増えました。

 他の医療保険制度に比べて著しく高い国保料となっているのは、国の制度設計に問題があるからで、国をはじめ国保への公費負担を抜本的に増やすよう求めるべきです。

 この年度の未就学児の子どもの均等割保険料の半額軽減の対象は1471人となりましたが、軽減額は2668万円余にすぎません。収入のない子どもにまで保険料を賦課するのは国保だけであり、あまりに過酷です。18歳まで、保険料は無料にすべきです。

 マイナ保険証の取得人数は、今年7月になっても2万97人で取得率は42%、4月のマイナ保険証利用率は6・8%に過ぎません。こうしたもとでの保険証の廃止は混乱を招き、病気になっても医療を受けられない人を生み出しかねず、国にやめるよう求めるべきです。 高い保険料を押し付けた決算は認められません。

【後期高齢者医療事業会計】

 2023年度は一人当たりの平均保険料は15万8273円で、1489円増えました。また、窓口負担は、1割が1万2658人、2割が4665人、3割が6799人でした。2割給付の人には医療費の増加を3000円以内にする経過措置が設けられていますが、来年の9月で打ち切られます。実質年金が低下している中で、窓口負担はいっそう重くなります。

 医療費が多くかかる75歳以上の高齢者だけを、ほかの医療保険から切り離して強制的に囲い込む制度は、社会保障の理念に反するもので、一刻も早くこの制度を廃止して元の老人医療制度に戻し、国や都の負担を増やして、高齢者が安心してかかれる医療保険制度を構築すべきです。高齢者に高い保険料と窓口負担を押し付けた決算は認められません。

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