●2023年度一般会計決算 反対討論
私は、日本共産党渋谷区議団を代表して、ただいま議題となりました認定第1号 令和5年度渋谷区一般会計歳入歳出決算に反対の立場から討論を行います。
2023年度は、東京の消費者物価指数は4%値上げなど、物価高騰と賃金、年金の実質引き下げのもとで、区民のくらしや中小業者の営業は、深刻になりました。わが党区議団のアンケートでは、「生活苦」の訴えは77%にも及びました。
こうしたなかで、区民の暮らしと中小業者の営業を守り、地方自治体の役割である福祉・教育の増進を優先することが求められていました。また、元旦に発生した能登半島地震を教訓にした防災対策の抜本的強化が求められました。
ところが、区民の物価高騰対策やくらし、福祉、教育、防災の切実な願いに応えず、大企業のための渋谷駅周辺再開発等に多額の税金を投入した決算は認められません。
以下、4点にわたって反対理由を述べます。
第1、物価高騰から区民のくらし・中小業者の営業を守る対策が不十分な一方で、負担増をおこなったことは認められないからです。
物価高騰に苦しむ区民や中小業者から、「光熱費が2倍に跳ね上がった、食費を削るのも限界」、「仕入れ値の上昇を売値に転嫁できず、赤字は拡大するばかり」など悲痛な声が寄せられていましたが、区の独自対策は、地域通貨ハチペイや融資だけでした。ハチペイは、昨年3月6日現在で区民の2割以下にしか使われておらず、利用できる店舗も区商連加盟の半分程度で事業者のごく一部にすぎず、高齢者などスマホを使えない、また使わない高齢者や自営業者を切り捨てました。
そのうえ、国民健康保険料は19年連続の一人平均16303円もの大幅値上げで、苦しむ区民に追い打ちをかけたことは到底認められるものではありません。
日本共産党渋谷区議団は、学校給食の無償化や、国の臨時給付金の対象外となった均等割りのみ課税世帯への5万円の給付や国保料・介護利用料の負担軽減、小規模事業者への物価高騰緊急支援、若者への家賃補助制度の復活などを提案しました。これらは23年度に渋谷区が増やした財政調整基金と都市整備基金の合計148億円の10%程度で実現できるものでした。
物価高騰に苦しむ区民や中小業者への区独自支援に背を向けた決算は認められません。
第2、学校給食無償化や保育の質の向上、ケア労働者の処遇改善、高齢者福祉の充実、防災対策の強化など、区民の切実な願いに背を向けたことは認められないからです。
●物価高騰のなか子育て世帯の経済負担を軽減しようと4月に葛飾区で始まった小中学校給食の無償化は、9月には23区中22区が実施に踏み切り、渋谷区だけ取り残されました。区民からは2度にわたって請願が出されていたにもかかわらず、この声を無視し続けました。
●また、区民から、保育士の処遇改善や保育士配置基準、面積基準を改善し、保育の質の向上を求める請願が、昨年3月に提出されました。区の実施している処遇改善は、都の家賃助成事業への上乗せだけで、すべての保育士に直接届く助成にはなっていません。また、4,5歳児を中心に定数割れをしている保育園も出る中で、未充足加算や保育の質の向上の願いに背を向けたことは許されません。
介護職員やヘルパーも依然として、全産業平均から月7万円も賃金が低いなかで、介護職員不足は深刻です。このままでは、低賃金とヘルパー不足で、区内の介護事業所が激減し、必要な介護が受けられなくなる深刻な事態です。わが党区議団は、ヘルパーの賃上げを支援する予算修正を提案しましたが、区が背を向けたことは認められません。
●特別養護老人ホームの待機者は、昨年10月328人でそのうち要介護4・5の人が193人、59%と深刻です。しかし区は、神宮前の民間特養の増設とせせらぎの増床計画しかなく、待機者解消には遠く及びません。住み慣れた地域の特養ホームなどで安心して介護を受け、住み続けたいという切実な願いにこたえなかったことは許されません。
●元旦に発生した能登半島地震を踏まえて、渋谷区地域防災計画の抜本的な見直しが求められていましたが、建物の耐震補強工事助成制度や避難所運営の抜本的な改善を行わなかったことは問題です。
避難所・備蓄品等整備では、スフィア基準を目標にした避難所一人当たりの面積基準を3.5㎡に、トイレの数は20人に1か所で、女性用は男性の3倍整備し、現在405個の段ボールベッドや間仕切りも抜本的に増やするなど、人間としての尊厳が守られるよう改善すべきです。
第3、区民の声を無視した、トップダウンの行政運営は認められない。
●玉川上水旧水路緑道再整備事業には実施設計業務委託として、東京ランドスケープ研究所に4億5392万円余が執行されました。区は、当初から「農園をつくる」「賑わいの創出」などとして、公園全体の樹木を189本も伐採する計画を進めようとしていました。昨年第2回定例会でのわが党区議団の樹木伐採の告発以来、住民がこの計画の全容を知ることになり、樹木の伐採の見直しの声が大きく広がり、区も原則として高木は残す方向に転換しました。しかし、この年度までに緑道整備にかけた費用は累計で約11億2千万円にも上ります。
また、住民は、一般の舗装材の5倍以上で17万円/㎡もする高価なテラゾ材を使った歩道整備や1台400万円もするベンチ設置など総額約113億円もの高すぎる整備費や農園をつくることにも納得していません。区が進める緑道整備計画は一から見直し、住民の願いにこたえるべきです。
●渋谷区「新しい学校づくり」整備方針にもとづく23年度の予算は、広尾中学校・松濤中学校・代々木中学校・神南小学校の4校の建て替えに係る基本計画、設計と青山キャンパス・スポーツセンター仮設校舎の設計、工事を実施するなど、小学校費として2億6498万円余、中学校費として5億8327万円を執行しました。
本来学校は、地域の教育・子育てやコミュニティ、防災の拠点であり、教育環境の充実とともに住民の声を十分生かした計画にすることが求められています。ところが、この計画の進め方は、区長が計画を作って、トップダウンで押し付けていることが最大の問題です。広尾中学校・松濤中学校・代々木中学校の建て替えについては、基本計画ができるまでは住民には何も知らせず意見も聞かないで進められました。その結果、広尾中学校では特別教室が減る、松濤中学校や代々木中学校はプールが整備されない、スポーツセンターの仮設校舎には、専用のグラウンドがない、神南小学校の建て替えでは、学校からわずか10メートルしか離れていないところに150メートルの高層マンションが建つため、落下物の危険が生じる、など子どもたちの教育環境の悪化が明らかになっています。これだけ重大な問題があるのに計画を強行していることは許されません。さらに、住民の声も聞かないで、トップダウンで6校の小中学校を統廃合する小中一貫校についても認めることはできません。計画を白紙に戻すべきです。
第4、財界戦略に従い大企業の儲け最優先で区政を市場化していることや税金の無駄遣いは、認められないからです。
渋谷区は、区民のくらしを守り、福祉を増進する役割に背を向ける一方で、財界戦略に沿って、グローバル戦略や公共部門の市場化によって、財界大企業の目先の利益を最優先にする区政を続けています。
グローバル拠点都市推進事業には、区が立ち上げたしぶやスタートアップスへの1億円の出資金など前年度を上回る2億8855万円余が投入されました。海外スタートアップを呼び込むために、広報費、海外ビザのワンストップサービス、拠点オフィスの使用料など、至れり尽くせりの大盤振る舞いです。一方、物価高騰に苦しむ区内中小業者への支援は、ハチペイや融資だけであり、支援する対象が逆立ちしています。財界戦略に沿ったスタートアップ支援に、多額の税金を投入することは区民の理解を得られません。
また、渋谷駅桜丘口地区に28億8400万円、渋谷駅中心五街区整備事業には、渋谷駅街区北側自由通路整備事業として6億7700万円、渋谷駅南口北側自由通路整備事業に1億1900万円を投入しました。また、駅街区北側自由通路の税金投入額はこれまで40億円とされてきましたが、事業者からの事業計画の見直しで、2018年度分までの実績で公費負担が52億円に増えているにもかかわらず、今年6月まで議会に報告しませんでした。これらの事業費は、開発利益を得る鉄道事業者をはじめ再開発事業者が負担すべきものであり、区民の税金投入は認められません。
官民連携事業一般社団法人渋谷未来デザインには、事務局職員3人を派遣し、1376万円を投入しました。未来デザインの事業であるササハタハツまちラボについて、事業報告書では「企業向け視察ツアーの充実などの企画参画に向けた誘致活動を実施した」と評価しているように、民間企業の儲けを拡大するための団体であることは明らかです。公共財産を出資企業に利活用させて、新たな企業利益を生み出す未来デザインへの税金投入や区職員を派遣していることは認められません。
さらに、民間活力の導入、官から民への号令のもとで、宇田川町地区市街地再開発では、区道や神南小学校の空中権を提供して、高さ150mの高層再開マンションの建設を可能にし、「新しい学校づくり」整備方針では、学校施設整備にPFIの導入を検討、玉川上水旧水路緑道整備など公園や区民施設やスポーツ施設などの公共施設の指定管理者制度の導入・拡大するなど、次々と公共を投げ捨てて民間の利益に奉仕しようとしていることは、自治体本来の役割を放棄するもので認められません。
さらに、区民の税金の無駄遣いを拡大していることも重大です。
河津さくらの里しぶやには、運営費、施設維持管理費として前年度を上回る1億3422万円余が執行されました。区はシニアのバス旅行や小学校4校の移動教室、指定管理者の4泊目料金無料の湯治プランなど利用率の向上に躍起になっており、この年度の一人一泊当たりの区の負担は1万2780円にも達しています。
そもそも遠くて不便といわれ区民ニーズが乏しいのに、区は取得を強行し、毎年のように施設改修を進めて来ました。この施設にはすでに取得など開設前に2億4千万円余、開設後の10年間の運営と維持管理に18億円余を投入しており、さらに経費をつぎ込み事業を拡大することは認められません。この施設は廃止し、区民には旅行クーポン券を支給すべきです。
帰宅困難者対策として、シブヤ・アロープロジェクトに3447万円を執行していることは重大問題です。この予算は、実行委員会に丸げし、さらに実行委員会が民間企業に委託しており、事業の内容に区民の声が反映されない仕組みになっています。海外のアーティストに作品を作らせるために、渡航費330万円、宿泊費は7日間で110万円もの法外な支出が行われました。区民からは、「帰宅困難者が見ても、避難場所を示しているとはわからない」との声が寄せられています。この事業は、税金のムダ遣いでやめるべきです。
以上、一般会計決算に反対する討論とします。
●国保会計・介護保険事業会計、後期高齢者医療会計決算 反対討論
私は、日本共産党区議団を代表して、認定第 2 号 令和5年度渋谷区国民健康保険事業会計歳入歳出決算、認定第 3 号 同介護保険事業会計歳入歳出決算、認定第 4 号 同後期高齢者医療事業会計歳入歳出決算に、反対する討論を行います。
国民健康保険事業会計決算です。
2023年度の国民健康保険料は19年連続で引き上げたことは、物価高騰にあえぐ区民をさらに苦しめました。その結果、一人当たりの保険料は、18万5110円で、1万6303円の大幅値上げとなりました。年収400万円の40代夫婦と学齢期の子ども2人の世帯では54万2614円となり、収入の13・6%を占め、協会けんぽ加入世帯との格差は2・3倍に広がりました。
他の医療保険制度に比べて著しく高い国保料となっているのは、国の制度設計に問題があるからで、国をはじめ国保への公費負担を抜本的に増やすよう求めるべきです。
収入のない子どもにまで保険料を賦課するのは国保だけであり、あまりに過酷です。18歳まで、保険料は無料にすべきです。
マイナ保険証の取得人数は、今年7月になっても2万97人で取得率は42%、4月のマイナ保険証利用率は6・8%に過ぎません。こうしたもとでの保険証の廃止は混乱を招き、病気になっても医療を受けられない人を生み出しかねず、国にやめるよう求めるべきです。 高い保険料を押し付けた決算は認められません。
●介護保険事業会計
次に、介護保険事業会計決算です。
この年度、政府は介護保険の補足給付の削減などを強行しました。
介護保険料が高いため、普通徴収者のうち保険料滞納者数は、2023年度末で1523人で普通徴収者の約18%に上りました。しかし、区の保険料軽減を受けられたのは、わずか52人金額にして42万4000円しかありません。また、利用料の負担軽減についても2017年度の784件472万円余から23年度は651件481万円余と年々減っています。保険料軽減、利用者負担額助成の対象となる収入基準を引き上げ、預貯金額の制限をなくすべきです。
高い介護保険料と給付の削減を押し付けた決算は、認められません。
●後期高齢者医療事業会計
次に、後期高齢者医療事業会計決算です。
2023年度は、一人当たりの平均保険料は15万8273円で、1489円増えました。また、窓口負担は、1割が1万2658人、2割が4665人、3割が6799人でした。2割給付の人には医療費の増加を3000円以内にする経過措置が設けられていますが、来年の9月で打ち切られます。実質年金が低下している中で、窓口負担はいっそう重くなります。
医療費が多くかかる75歳以上の高齢者だけを、ほかの医療保険から切り離して強制的に囲い込む制度は、社会保障の理念に反します。高齢者が安心してかかれる医療保険制度を構築すべきです。高齢者に高い保険料と窓口負担を押し付けた決算は認められません。
以上、3事業会計決算に対する反対討論とします。