●第4回定例会 一般質問(田中)
2024.11.26
私は、日本共産党区議団として、区長に質問します。
1.中小業者支援と雇用について
⑴中小企業振興条例の制定について
中小業者は、雇用や文化、地域の経済を支え、大規模災害の復旧・復興に欠かせない役割を担っており、持続可能な地域社会を形成するうえで、極めて重要です。
しかし、渋谷区の10人未満の事業者はこの30年間で、卸・小売業が4400者・47%、建設業は282者・35%も減少しており、私の住む地域でも廃業や商店会の休廃止で、地域経済やくらし、文化・コミュニティ活動に大きな影響が出ています。そこに物価高騰が襲い掛かり、困難が広がっています。
区長は、こうした区内中小業者の窮状を、どう認識しているか、伺います。
国と財界は、国内外から多数の起業家や投資を呼び込み、ユニコーン企業を作り出すスタートアップ戦略を成長の原動力にするとして、スタートアップ企業に支援を集中しています。渋谷区も、スタートアップ企業の拠点の賃貸借料や実証・実装、広報など至れり尽くせりの支援をしていますが、区民のくらしや雇用、地域の持続可能性とは無縁です。その一方、区内の中小業者支援は、融資や創業支援だけです。
23区では17区が中小企業振興条例を制定しており、墨田区は、全区横断的な支援体制を構築し、大田区でも、新規創業支援の他、仕事の受発注、経営改善・販路拡大など細かな相談支援を実施しています。
本区でも区民とともに全庁的な支援体制を構築するために中小企業振興条例を制定し、実態調査を行うべきです。また中小業者・金融機関と区の3者で、中小業者の経営と地域の持続可能性の確保を目的とした中小企業振興会議を設置すべきです。
商店街にとって、街路灯の維持管理が重い負担になっています。区として電気代を全額補助するとともに、維持管理が困難な商店街に対して支援をすべきです。合わせて、区長の所見を伺います。
⑵雇用環境の改善について
多くの労働者は、賃上げが物価高騰に追い付かず生活はますます悪化しています。中小業者の場合、2023年度の東京都の調査では、従業員10人~299人の賃金は、平均40万7千円で、都内全産業平均より2万5千円低く、5人以下の零細業者はさらに劣悪です。
わが党は、大企業がアベノミクスで増やした内部留保100兆円に課税して得た10兆円を財源に、中小企業に直接支援して最低賃金1500円以上にする提案をしています。
直ちに中小企業支援と一体に最低賃金を1500円以上に引き上げるよう国に求めるべきです。
岩手県や徳島県は、独自で賃上げのための助成制度を実施しています。本区も、政府の賃上げ助成を受けられない零細企業が賃上げできるように、零細企業賃上げ助成制度を実施すべきです。
渋谷区の委託契約と指定管理のうち2023年度の公契約条例の対象は、委託37件、指定管理3件で全体の3.3%に過ぎません。公契約条例の対象を、委託契約は500万円以上に、指定管理者はすべての業種に拡大し、②労働報酬下限額を現在の時給1240円から1500円以上に引き上げるべきです。合わせて、区長の所見を伺います。
⑶建設業の支援・育成について
能登半島地震や豪雨被害では、復旧・復興を進めるうえで、地域に根差した建設産業の大切さを痛感しました。ところが、区内の建設業は、特に町場の工務店や職人が減少しています。都の300人未満の賃金調査で建設業は、全産業平均より月2万円も低く、後継者育成のための講習も自己負担で、そのための休暇も無給だと訴えられています。
国は、地域の守り手である建設産業の育成強化のために「担い手3法」を制定、世田谷区では、建設業を主要産業として位置づけ、人材育成支援事業を行っています。本区も、建設業を主要産業と位置付けて、資格取得や講習会に対して助成を実施すべきです。
また、①公契約条例の対象工事を5000万円まで引き下げ、②下請事業者まで材料費と労務費を別にした見積書の作成を義務付けること、③支払い賃金や施工体制を把握するために2次下請け以降の実態調査をすべきです。合わせて区長の所見を伺います。
2.子育て支援について
⑴子育て負担の軽減について
政府の国際調査で、日本は国民の過半数が「自分の国は子どもを産み、育てやすい国だと思わない」と答えた唯一の国です。その理由は、教育費が高く、雇用が不安定だからです。教育費が完全無償で、親の働き方が安定しているスウェーデンでは、97%が「産み育てやすい国」と回答しています。
区長は、政府に対して、年間8兆円もの軍事費を削って教育・子育て予算の抜本的増額を求めるべきです。所見を伺います。
区として、子育て・教育に対する保護者負担の軽減が必要です。出産にかかる費用は、都内でも70万円前後が多数です。現在の50万円の一時金に区が10万円負担しても、自己負担が生じます。港区なみに、上限を最大31万円まで引き上げるべきです。
都は、第1子まで保育料の無料化の拡大を検討しており、品川区では、学用品も無償にしようとしています。葛飾区では、来年度から、「すべての子育て世帯」を区独自支援で丸ごとサポートとして、保育・教育費の負担を総合的に軽減しようとしています。
本区も、保育料の所得制限をなくして、すべての世帯を無料化し、延長保育や一時保育、預かり保育、小中学校の修学旅行や移動教室、教材費についても無償にすべきです。
さらに、すべての小中学校給食の無償化を国に求めるべきです。東京都は、学校給食無償化の予算の8分の7を支援するとしています。これで浮いた予算も活用して、区内在住で、私立、国立やフリースクールに通う子ども、不登校児も含めて、区立の学校給食費相当額を支援すべきです。合わせて、所見を伺います。
⑵保育園について
区立保育園は、渋谷区の保育実施義務を遂行するために、なくてはならない存在です。勤続年数に応じた処遇があり、施設整備は区が責任を持ち、災害や感染症拡大時の対応、医療的ケア児や要支援児の受け入れもおこなう、まさに渋谷区の保育の質を規定する施設です。
区長は第3回定例会の答弁で、区立保育園の廃園も検討する考えを示しましたが、渋谷区の保育の実施義務の後退ではありませんか、区立保育園の役割についての認識を伺います。区立保育園18園はすべて存続し、老朽化した園舎は改修すべきです。
保育の質の充実のためには、保育士が子どもと接する時間をどれだけ増やせるかが重要です。そのためには、保育士一人当たりの保育士配置基準の引き上げが必要です。
保育園はいま、区立をはじめ多くの園で4.5歳児定数に「空き」があり、区独自に配置基準を引き上げる絶好のチャンスです。私立も配置基準の引き上げにともなう保育士加配への助成を行うなど、保育の質の向上に生かすべきです。
区長は、区独自で保育の質の向上を進める考えはないのですか。まず、定員に空きがある区立保育園の4.5歳児から、保育士配置基準を20対1に引き上げるとともに、区独自に保育士配置基準を引き上げ、民間の保育園にはそのための助成をすべきです。区長の所見を伺います。
⑶保育士の処遇改善について
民間の保育士の給与は、年額400万円と全産業平均より約100万円も低く、しかも11年目から頭打ちの基準になっており、長く働き続けられない構造になっています。
保育士の賃金を全産業平均にするために公定価格を直ちに月5万円引き上げるとともに、経験年数に応じて賃金が上昇し、長く働き続けられるよう国に改善を求めるべきです。
区として、保育士の賃金引き上げの助成を行い、保育士確保の財政支援を行うべきです。
区立園の保育士不足については、保育現場の努力が生かされるよう、賃金体系を専門職並みに引き上げ、会計年度任用職員も時給1500円以上に引き上げるなど、緊急に23区長会に提案すべきです。合わせて、区長の所見を伺います。
3.気候危機対策について
世界的な異常気象による経済的、人道的危機が拡大しています。世界気象機関は、今年9月までの世界の平均気温は産業革命前と比べて、すでに1.54度上がっており、このままでは人類の力では気温上昇が制御できなくなるとして、対策の緊急性を指摘しています。まさに、人類の存亡のかかった重大事態です。
ところが、日本政府の2030年目標は、国連が求めた45%削減を下回る42%。30年までに廃止が求められている石炭火力も、日本はG7で唯一撤退期日さえ示していません。しかも、原発を新増設しようとしています。
COP29で求められている35年削減目標を70%以上に引き上げるとともに、速やかに石炭火力と原発ゼロを決断するよう国に求めるべきです。区長に所見を伺います。
日本共産党は、2030年までに、省エネと再エネを抜本的に強化して、CO2を50~60%削減し、さらに35年の新たな削減目標は75~80%減らし、そのために再生可能エネルギー電力の比率80%を提案しています。
区として、2050年ゼロカーボン宣言を行い、気候危機打開のための条例を制定し、政府目標と同様に低い2027年目標を大幅に引き上げるべきです。杉並区では、無作為抽出の区民から応募のあった、区の人口構成を反映した70~80人からなる「気候区民会議」を設置して、政策に反映させる仕組みを設けています。渋谷区の「シブヤ若者気候変動会議」は、11~25歳の5人だけです。杉並区のように区民全体でとりくむための「渋谷区気候会議」に発展させるべきです。区長の所見を伺います。
区庁舎の自然再生エネルギー利用は30%まで引き上げられたことは評価しますが、さらに公共施設、公共事業、区の業務での2030年までのCO2削減目標を決め、100%再エネ化する計画を持つとともに、区内企業とのCO2削減協定の締結や省エネ投資への支援を行うべきです。また、住民や地元企業に対して太陽光発電設備設置助成を実施し、省エネ機器材設置購入助成を継続・拡充すべきです。合わせて、区長の所見を伺います。
東京民報は、渋谷区の樹冠被覆率が、2013年の16.3%から11.9ポイントも減っていると報道しました。樹冠被覆率は、ヒートアイランド現象の緩和、雨水の吸収、熱中症予防などの効果があり、世界ではニューヨークやバルセロナなどが35年までに35%へと引き上げる目標を持っています。
本区でも、区内の樹冠被覆率を区独自に調査・公表するとともに、35年目標を30%として、高木の維持・保全・拡大を推進すべきです。区長の所見を伺います。
4.本町・幡ヶ谷地域のまちづくりについて
幡ヶ谷、本町界隈は、落ち着いた住宅街です。7月に行われた「水道道路沿道まちづくり」意見交換会の資料に対して、住民から「なぜ、地域全体でなく、水道道路沿道エリアだけ議論するのか」、「防災やコミュニティは大切だが、なぜ賑わいを創出するのか」、「トップダウンで進めないでほしい」などの多くの疑問や意見が寄せられています。
まちづくりについては、アンケートなどを実施し地域住民全体の声をよく聞くべきです。「賑わいの創出」優先でなく、住宅の耐震化・不燃化などの防災対策の強化、道路の保全やバリアフリー化、公園の維持管理など住環境の向上など今の住民の要望を最優先にすべきです。区長の所見を伺います。
三井不動産は、幡ヶ谷2丁目オリンパス跡地に、高層の再開発ビルを建設するといわれており、住民からは静穏な環境が悪化し、日照権も影響が出ると不安の声が上がっています。
三井不動産から再開発ビルの建設や地区計画の変更について働きかけがあるのか、伺います。高層ビル建設のための都市計画の変更は認めるべきではありません。また、7号通り公園は、現状のまま存続すべきです。区長の所見を伺います。
以上