牛尾まさみ議員は、本会議での採決に先立って、4議案の一つである「公園通り西地区第一種市街地再開発事業に係る渋谷区立神南小学校建て替え計画等に関する基本協定締結について」反対討論をおこないました。
議案第95号 公園通り西地区第一種市街地再開発事業に係る渋谷区立神南小学校建て替え計画等に関する基本協定締結について
私は日本共産党渋谷区議団を代表して、ただいま議題になりました、議案第95号 公園通り西地区第一種市街地再開発事業に係る渋谷区立神南小学校建て替え計画等に関する基本協定締結についてに反対の立場から討論します。
本議案は、教育委員会が令和3年2月に策定した、渋谷区学校施設長寿命化計画で、整備手法の検討として打ち出された「区や地域にある資産の有効活用のほか、民間活力を活用し、周辺環境との調和を図った施設整備や民間事業者の能力・ノウハウや資金を活用するPPP/PFI方式等の新しい事業手法の可能性を検討していきます」とされたことから進められてきた、民間再開発による神南小学校の建替えをするための基本協定を、公園通り西地区第一種市街地再開発準備組合及びその地位を継承する者との間で、結ぼうとするものです。
その具体的な内容は、神南小学校と区道を隔てて建つマンションの渋谷ホームズを第一種市街地再開発事業の手法を使って建て替えるために、マンションと神南小学校および渋谷公会堂の間にある区道を廃止して再開発棟の敷地に提供し、さらに神南小学校の容積率91%を移転して、高さ150メートルの超高層ビルの建設を可能にするものです。また、区は区道と容積率の提供の対価として、80億円を神南小学校の建設費の一部に充てようとするものです。
まず、反対理由として指摘しなければならないのは、区民環境委員会の継続審議の決定をくつがえして、今定例会で無理やり議決を迫るものだからです。
区民環境委員会が継続審議にしたのは、基本協定案の不明な点が数多くあり、引き続く審議が必要と判断したからです。
なによりも、議案として提出された基本協定案は、第6条で、神南小学校の引き渡し時期等について、区及び事業者による協議のうえ決定し、それに従って行うと定めています。区民には令和11年度の竣工を言いながら、それを基本協定にも書き込めない段階で事業者との協議に委ねることは、議会に白紙委任をせまるものといわざるを得ません。
また、廃止、付け替えされる区道とそのあとに整備される広場についても同様に、拡幅部分及び本件廃止部分の整備の内容について、区及び事業者による協議のうえ決定し、それに従って整備するとされるなど、神南小学校の整備のごく大まかなスキームが示されるだけで、事実上区と事業者に委ねる内容です。
さらに、区が提供する区道や神南小学校の容積率の鑑定評価についても、区道の廃道宅地化鑑定評価が約15・5億円、容積率配分価格調査が約51・5億円で合計約67億円と異常に低く、疑義のあるものであるのに、提出を求めても一年以上にわたって提出を拒んできました。
当初の基本協定の審議の当日、11月28日の午前中にようやく委員会に鑑定評価書が開示されましたが、審議に間に合わず、多くの委員から鑑定評価書を読み込む時間を求める意見が出されました。
審議を延期した12月3日の質疑でも、基本協定の内容のあいまいさから、引き続き審議を求める意見が多数となり、委員会は継続審議を決定しました。
ところが、本日の最終本会議で、与党会派から、渋谷区議会会議規則第43条に基づく、委員会の付託期限を本日17時までとする動議が提出され、委員会は時間内に結論を出すことを求められ、2時間の期限の延期が認められたものの、前回の協定書の説明以上のことは明らかにならず、委員会で継続にした状況は変わっていませんでした。
与党が多数で今定例会で議決を強行しようとしていますが、今日の質疑でも、なぜ今日中に結論を出さなければならないかは明らかになりませんでした。
区が行わなければならない公共施設管理者同意の時期も、来年春の建替え組合設立に合わせて行う、引き渡し時期も令和11年夏までを目指すというものの、協定には盛り込まれておらず担保されないこと、また、相手方の準備組合内の合意形成は289件の3分の2以上193件の同意書が必要なのに、12月6日時点で28件に過ぎず、来年2月までを期限に面談と同意を得る期間を延ばしていることが明らかになり、合意形成になお時間がかかることも予想される事態でした。また、基本協定は準備組合理事会で議決ができるとして、議会の議決後速やかに締結すると答えましたが、合意形成が進んでいない中で準備組合理事長との協定を結び、具体的な協議を進めることは、区が納得していない権利者にも同意を迫るものとなり、行政のやることではありません。
区民環境委員会が多数で決定した継続審議をくつがえし、わずかな審議時間に制限した区議会与党会派の横暴な議会運営について満身の怒りを込めて抗議するものです。
区道廃止の条例案も、渋谷区道路廃止基準の「地域の開発事業等公益上特に廃止を必要とするもので、道路管理上支障がないと認めた場合」に該当するとして提案したと答弁しました。しかし、平日の午前7時から19時までの間に5834人も利用している区道をなぜ廃止するのか、納得できる説明はありませんでした。自動車が通れなくなる区道なのに、交通量も答えられず、再開発のために廃止ありきの区の姿勢が浮き彫りになりました。
何よりも、区役所のメインエントランスに通じる区道であり、多くの利用者の声も聞かずに廃止することは認められません。
鑑定評価書の妥当性の審議は、区長がこの事業を進めるにあたって妥当と判断した根拠となっているだけに、特に慎重な審査が求められるはずです。ところが、区議会議員限りとし、第三者への提供、閲覧、複製、SNSへの拡散等は禁止しますとされ、専門家の意見を聞くこともできないまま、審議に臨まざるを得ませんでした。しかし、素人なりの読み込みでも、区道については現道のままの評価が提出され、不整形による評価の減少が6割、7割にも及び、高度地区を利用することによる350%の容積率引き上げをはじめ、開発利益は見込まないで導き出された結果、鑑定額は12・9億円と18億円でした。容積率についても同様に、開発利益を見込まず、増える評価額についても、神南小では使えない未利用容積率が50%、利用できる実現可能容積率も45%前後しか評価額に反映されず、鑑定二社の評価額は51億円、52億円となっています。
審議で鑑定評価書の内容に入れば、所管外という理由で答弁しませんでした。
また、わが会派が繰り返し求めてきた再開発事業の総事業費や、開発利益については、区の財産を利用した事業でありながら今日まで明らかにされず、区民にも一切知らされません。
民間手法の活用による公共施設整備が、このように区民にはもちろん、議会にさえ答弁しないのは、民間事業者の利益のための事業にならざるを得ないことを示すもので、自治体に求められる公平性や公正性、公開性を欠くもので、採用すべきではないことを示すものです。改めて、神南小学校は子どもたちの教育条件を第一に、十分な関係者の合意をもとに、区が責任を持って自らの資金で建て替えるべきです。
昨年12月15日の都市計画審議会でも、会長がこれまでにない開発手法であるとともに小学校建設を民間事業者に委ねる重要な案件であるため、継続した審査を提案したにもかかわらず、副区長が当日の審議会での決着を求め、多数で強行的な採決が強いられました。今議会でも同様に、様々な疑問があるにもかかわらず、審議の継続を認めず、採決を強行することは、議会制民主主義を投げ捨てるものと言わざるを得ません。
以上、議案第95号 公園通り西地区第一種市街地再開発事業に係る渋谷区立神南小学校建て替え計画等に関する基本協定締結について、に対する反対討論とします。